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なぜ台湾は新型コロナウイルスを防げたのか?新帝国主義時代にミンシュシュギな僕たちにくれる勇気


 中国武漢市から始まって、世界を大混乱にさせている新型コロナウィルス(Covid-19)について、まだわからないことが多くて、確定的な判断が難しい状況ですが、最も上手に対応したのが台湾であったという評価については、定着しつつあります。中国に隣接し、政治的な関係は複雑で、経済的な結びつきは非常に強いという、対応が難しかったはずの台湾が、何故、そんな難しい舵取りができたのか、克明に追ったタイムリーかつ貴重な本です。

 前作「台湾とは何か?」が素晴らしかったので、出版されて、すぐ購入して読みました。
 細かな原因、経緯はともかく、Covid-19が武漢で発生し、そのことを政府が隠蔽して、春節(中国正月)の休暇で中国人がウィルスを撒き散らしたことは事実でしょう。ヨーロッパでは最近中国とのつながりが強いイタリアがダメージを受け、日本も雪まつりに来た中国人が北海道にウィルスが広まりました。共産党独裁と徹底した官僚主義が特徴の中国は、1000万都市を封鎖するという力技で収束の方向を見せ(情報統制があるので、実態は完全にはわかりませんけれど)「共産党の優位性」を誇示しています。それだけに、台湾が民主主義的な手法で、収束させた(こちらはほぼ間違いないでしょう)ことは、他国にとって嬉しいニュースだと思います。
 具体的な経緯は是非、この本を読んでいただきたいのですが、初動が良かったことも「勝因」です。中国政府の発表や統計データを全く信用していない台湾政府は、中国語が理解できる利点を活かして、SNSをチェックして、2019年末の時点で兆候を掴んでいたそうです。迅速に中国との交流を制限していきます。2002年SARSでの苦い経験があったこと、蔡英文政権が中国との距離を取る政策を取っていたことなど、いくつかの幸運を活かしながら、徹底して情報公開を行うというやり方で民衆の信頼と支持を獲得していきました。
 
 今回のコロナ禍は今まで見えなかったことで知ったことはいくつもありますが、そのうちの一つが、WHOのテドロス事務局長が中国共産党への忖度MAXの最悪の人だったということですね。綺麗事で済まない様々な難しさはあるしても、国際機関は一定の見識で運営されていると思っていました。出身国エチオピアの事情なのか、個人的な不正なのかはまだわかりませんが(そのうち明らかにはなるでしょうが)中国の覇権主義的思考とお金で国際機関が牛耳られるようになっている現状はマジでマズイなと思いました。アメリカが、トランプの自国第一主義に向かっている間にこんなことが起きていたんですね。資金拠出という意味で貢献が小さくない日本は、やるべきことがあるはずですね。「1つの中国原則」というような政治的概念で押す中国を上手にかいくぐりながら、台湾を国際社会の中に戻していく、混ぜていくことは、日本の国益にもなるし、世界のためにもなるなというのが、今回のコロナ対策でわかったことだと思います。この本を読むと、世界の混乱要因になっている中国への対策をもっと上手にやれるノウハウを持っているのが台湾であることがわかります。しかもそれが、民主主義的な手続き手法なので、民主主義を大切にしたい日本人として勇気が持てます。

 余談ですが、今回名を挙げた若いIT大臣オードリータン(唐鳳)の説明で「彼女が〜」と書いてあったので、「え?」と思って調べたら、カミングアウトしているトランスジェンダーだったんですね。そういうところにも台湾の開放性を感じました。ということで、日本のコロナ対応に苦々しい思いがある方は、まずこの本を読みましょう。
 
著者前作の読書記録はこちら



モチベーションあがります(^_-)