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メディアの皆さん!「楽曲所有権」という言葉はありません!著作権や原盤権が債権化しやすい時代に、音楽ビジネスを経済視点で正しく理解して報道してください!

 またまた出ました「楽曲所有権」。前回、Taylorの記事の時に、説明したのですが、届いて無いんですね(T_T) 意味不明で音楽ビジネスでは使われることがない言葉「楽曲所有権」がメディア上に出回っています。楽曲そのもの、著作権に纏わる権利は、楽曲の著作権もしくは、「音楽出版権」という言葉があります。レコーディングした音源については、「原盤権」という言葉を使います。原盤権については、国によって、法律の細かい立て付けや、ビジネス慣習が違いますが、録音した音をどのように活用してお金にするかという基本は変わりません。

 原盤権のことかなと思って英語でぐぐってみたら、ユニバーサル音楽出版が、ボブ・ディランの「Song Catalog」を買ったと書いてあるので、これは著作権(音楽出版権)でしょうね。それにしても、何故「Song Catalog」を「楽曲所有権」と日本語にするのは本当に理由がわかりません。ざっくりいうと「誤訳」です。音楽ビジネスに携わる者が記者に対してしっかり伝えていくべきだなと思います。

音楽出版権と原盤権の違い

 音楽出版権と原盤権のビジネス的な一番の違いは、原盤権はレコーディングしたその音源だけの権利なのに対して、音楽出版権は、楽曲そのものの権利なので、他の人がカバーしても収益があることです。また、法的な根拠も世界的にあって「強い権利」なので、放送など含めて、幅広い使用から徴収料(印税)が入ることも魅力です。また、各国で法律が改正されていて著作者の死後70年まで行使できるので(個人的にはちょっと期間長すぎると思っていますが、それは置いておいて)、裾野も広く、期間も長く、またハプニングも含めた収益可能性があるのが魅力です。
 ストリーミングサービスが音楽市場の中心になったことで、この音楽出版権の財産的な価値が向上しています。パッケージは、ユーザーが買った時にしか売上が立ちませんし、商品に製造原価や物流費用が掛かりますが、配信サービスはそういったコストは発生しません。ユーザーが再生する毎に使用料が発生しますので、人気のある楽曲は長期的な収益が見込まれます。月額課金型ストリーミングサービスが普及したことでユーザーデータの解析、活用の技術も進んで、収益見込みも立てやすくなっているのでしょう。リリースしてみないと収益の計算が難しい「新作」に比べて、発表済みの「旧譜」について、前回Taylerの時に書いたように「債権化」がしやすくなっているという変化があります。

配信サービスは音楽家側への還元率が高い

 意外に語られる機会が少ないのですが、レコード、CDといったパッケージビジネスと比較して、配信サービスのほうが、ユーザーが支払った金額に対する音楽家サイドへの還元率は高いです。製造したり、流通させたりする必要がないので、ちょっと考えれば当たり前のことなのですが、既存の音楽ビジネスへの郷愁が強い音楽家や、自分たちに都合が悪いことは言いたくないレコード会社が、1再生あたりの単価の低さなど引き合いに出すプロバガンダがひと頃盛んでした。
 実際は、マクロ的に見ると、パッケージ売上から音楽家に分配されるのは売上の20〜30%程度なのに対して、配信では50%前後になります。細かなケースで言い出すといろいろあるのですが、ざっくり2倍位の還元率になる訳です。著作権印税に関してはわかりやすく、CDだと6%なのが、ストリーミング配信だと12%が国際的に相場になりつつあります。(Kobalt musicなどの強面著作権エージェントは、もっと料率を上げようと画策しているようですが)音楽出版権への投資価値が上がる一つの大きな理由でしょう。

 経済記事として、ボブ・ディランやテイラー・スウィフトの出版権への投資を伝えるのであれば、こういった背景を踏まえて、正しい用語を使って、書いていただきたいです。音楽業界側も説明不足だと思うので、機会がある毎に発信していきたいと思います。

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