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【スタートアップが持っておきたい戦略的思考】音楽体験の拡張には新たな音楽サービスの可能性がある

 ストリーミングによる派生サービスのように見えますが、僕は貴重なヒントが有ると思い取り上げます。

 拙著『新時代ミュージックビジネス最終講義』でも書き、先日、ゴールドマンサックスの勉強会でお話して機関投資家から評価を頂いた音楽サービスに関する見解があります。サブスクリプション型音楽ストリーミングサービスは、品揃え(聞ける楽曲)の差がほとんどなく、機能としても差別化が難しいので、スケールメリットと資金力による寡占が進みやすい構造を持っています。ですから、世界で2.5社(2+ちょっと)に集約されるベクトルにあるというのが僕の見解です。独自コンテンツをNetflixとアマゾンが競う映像サービスのと対称的ですね。実ビジネスでは国ごとの規制や他のサービスとの連携(Amazonを音楽サービス単体では捉えないですよね?)などの要素があるのでそう単純にはならないでしょうが、構造的にはそういう力学が働くことは間違いありません。0.5というのは、ジャンル特化や地域特化などの「専門店」的な生き残り策はあるだろうという意味で、おおまかには2社に収斂されていく流れです。2席をSpotify、Apple Music、Google/YouTube、Amazon、台湾発のKKBOX(中国の規制に守られたQQmusicもあります)などが争っているという図式な訳です。
 そんな中で、AWAの音楽サブスクリプションサービスとしての「勝ち目」は、ほとんどないと見るのがデジタルサービスとしては普通の捉え方でしょう。僕は音楽サービスはもっと広がってほしいし、まして日本発のサービスは頑張って欲しいので、ネガティブに取られる発言は極力しないようにしてきていますが、まあ厳しいだろうなとは当初から思っていました。若手社員への権限移譲がしっかりされるサイバーエージェントのプロダクトは質が高く、AWAについてもアプリとしてよくできているなと感心しましたが、構造的な課題をプロダクトの質だけで跳ね返すのは簡単ではありません。

 そんな前提を踏まえて、今回のサービスに注目するのは、勝負所の位相をずらそうとしているように感じられるからです。
 「月額定額料金で何でも音楽が聞けますよ」というレイヤーではなく、多くの音楽家の楽曲の権利を持っていてストリーミング型で提供できるという機能を使って「音楽の新しい楽しみ方、楽しむ場を提供します」という事業をしようとしているのだとしたら、有望かもしれません。音楽サービスを充実ささせるには権利許諾というクリアーするべき壁があります。権利者との向き合いのファーストフェーズが済んでいるという優位性をAWAは持っているわけです。今からSpotifyに戦いを挑めるわけもないですが、サービスの核となる価値の位相をずらすというのは真っ当な戦略です。起業家の皆さんには参考にしてもらいたい思考法です。
 店舗BGMといえば、日本ではUSENの独擅場ですが、ソーシャルな音楽の楽しみ方には新たな可能性があるでしょう。近年盛り上がりを見せている音声SNSも、音楽を聞く聞かせることともっとスムーズに連動させたいという話者は多いと聞きます。AWAの新サービスに似たようなサービスは、StudioENTREのインキュベーションプログラム参加者にも企画している人がいました。
  先週には、Spotifyもチャットアプリをリリースするというニュースもありましたね。


 スマートフォンの普及、ネット環境の改善でユーザー体験は広がり、様々な可能性がでてきています。音楽の楽しみ方にもこれまでにない場の設定があるはずです。AWAが、体力勝負がグローバルで始まっている音楽サブスクサービスから力点をずらして、事業の可能性を探っているのだとしたら、正しい戦略ですし、音楽市場が拡張する期待も持てます。まだ小さな動きですが、注目してみていきたいと思います。

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