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職業作曲家の心得[4:処世術編]

謙虚で毅然とした音楽好きが一番好かれて、得をする

 “処世術”という言葉は不似合いかもしれません。むしろ、「処世術など要らないよ」というメッセージとして受け止めてください。
 音楽関係者に一番好かれるのは、音楽好きです。謙虚でありながら、 自分の音楽にはプライドを持っているという態度の人は、どんな作品を 作っているのだろう? と興味を持たれます。それ以外の小賢しい“技”は不要です。お世辞が上手でも、得することは少ないでしょう。人との付き合いが不器用でも、音楽に対する愛情 が伝われば、大切にされるのが、日本の音楽業界の良いところだと私は思っています。

人脈が最大の財産、飲み会も活用しよう

 信頼できる人間関係が、この世界でやっていくために一番重要です。 人と人とのつながりを意識しましょう。誰かに紹介してもらったら、紹介してくれた人への気遣いも大切です。紹介されて終わりではなく、その後の経過も折に触れて報告しましょう。そういう関係を続けていれ ば、何かあったときに相談することもできます。びくびくしながら付き合う必要はありませんが、知人からの評判があなたを押し上げたり、足を引っ張ったりするのです。 そういう意味で、打上げなどの飲み会の場も大切です。お酒が苦手な
人は、ソフトドリンクでOKです。カジュアルな場で得る情報やそこで作られた人間関係は、役に立つことが多いです。本書でも“飲み会”の 重要性は、いろんな人が強調していましたよね?


尊敬できる音楽家仲間を増やそう

 プロデューサーやディレクター、アーティストマネージャーなどのスタッフの人脈も重要ですが、音楽家仲間も大切にするべきです。決定権のあるスタッフは、音楽家を決めるときに、信頼する他の音楽家の意見 を求めます。そこで、ポジティブに言ってもらえるのは、とても効果的 です。紹介されることもあるかもしれません。
 プロ音楽家仲間と学生時代の友人は違います。甘えた関係ではいけません。時にはライバルにもなります。ほどよい距離感で付き合っていましょう。
 お互いの才能と人柄を尊敬し合える音楽家仲間は、大きな財産です。 切磋琢磨しながら、頑張っていける音楽家仲間や、信頼できる先輩音楽家とは大切にしてください。


仕事し続けていくことが、 最高で唯一の“営業”活動である


 禅問答みたいに聞こえるかもしれませんが、長年仕事をしてきて実感として思います。音楽の仕事を続けていくことしか、営業の方法は無いのです。うまくいくときは、1つの仕事が次の仕事を呼び、人脈が増えて、ねずみ算的に広がっていきます。
 ですから、どんなに小さな仕事でも手を抜かず、毎回毎回、真剣に取 り組むことが大切です。誰が見ているか、誰が聴くか分かりません。また、仕事という“場”を与えてくれた人への感謝の気持ちが大切と いうのも、これまで述べてきた通りです。

『プロ直伝!職業作曲家への道』(2013年7月刊)Chapter7から

 この章についても読み返して、全くその通りだなと思います。そして成功して長く活躍している音楽家は、みなさんこうしているなと確認します。
 日本の音楽業界には時代遅れになっていることや、良くない部分もありますが、僕が胸を張って言えることは、この世界で仕事をしている人に「音楽好き」比率が非常高いことです。ですから、作曲家も「バカみたいに音楽が好き」な人が好まれます。愛想を振りまくようなことは必要ありません。
 音楽事務所社長としての僕には、逆差別的な不思議な感覚がありました。カメラマンやデザイナーなどのクリエイターが、無愛想な方が期待してしまうという感覚です。如才なく機嫌を取るようなことが上手なクリエイターは、なんとなく胡散臭く感じてしまうのです(笑)。それはそれで逆差別で正しいことではないので、自分の判断の要素にしないように気をつけていましたが、作品に全エネルギーを注いでいる人は、それ以外のことに関心が無いものです。お愛想など言わずに自信を持って持論を述べる人が僕は好印象を持ちますね。
 コロナ禍でなかなか飲み会をおおっぴらにやりにくい環境ですが、オンラインも活用しながら、人間関係を築く大切さは意識していきましょう。コーラティングが注目を集めるのは、PCで自宅で音楽が作れることで孤独さが増した作曲家同志がネットワークを作る手法にもなるからなのでしょう。

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