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コロナ禍はコンサート体験を変え、音楽ビジネスにイノベーションを呼び込むのか?



 オンラインで行われたパネルディスカッションの中で、ワーナー・ミュージック・グループのチーフ・イノベーション・オフィサーでスコット・コーエンが、COVID-19の世界的大流行が、ライブ音楽業界にとって「ナップスター的瞬間」になる可能性があると発言したという記事です。なるほどと目から鱗が落ちる話でした。
 Napsterは、世界初の本格的な音楽ファイル共有サービスでした。音楽が簡単に個人から個人に渡ってしまう事態に音楽業界は恐れおののきサービス停止の訴訟を起こしました。結果的に破産に追い込まれます。ブランドとしては今も残って、合法な音楽配信サービスを行っていますが、それ以上に注目なのは、創業メンバーだったショーン・パーカーがFacebookにもSpotifyにも初期から関わって、ユーザー同時がシェアする習慣を広めたことでしょう。「ナップスター的瞬間」という表現には、非常に大きい負の衝撃というニュアンスが込められています。そして同時に、未来を予見していたサービスでもありました。

 今回の新型コロナウィルスによる世界的な「大自粛」が、順風満帆に進んできたコンサートビジネスに大きな打撃を与えています。ダメージがどこまで広がるかまだ予測できない状況です。
 「ナップスター的」と捉えるとしたら、これは歴史的必然で、テクノロジーの進化によって起きた災害であると同時に、テクノロジーの使い方を洗練させることで、乗り越える、新しい体験を提供するサービスが出てくるということになります。音楽を聴くという体験が、Spotifyに代表されるオンデマンド(聴きたい曲が選べる)型、サブスクリプション(月額課金)ストリーミングサービスによって、置き換えられました。音楽体験が進化したと言って良いと思います。コーエンの発言は、これと同じことが10年以内にコンサートに置いて起きるという「予言」になっています。

 具体的には、どんな変化が起きるのでしょうか?
 簡単に出せる答えではないですが、まず僕は3つのポイントを提示したいと思います。

1)ソーシャルディスタンスを担保するコンサート運営の形
 非常事態宣言が終わっても、「三密」を避けるべきという社会的な合意はしばらく続くでしょう。世界的なパンデミックになっている以上、収束するのにどんなに早くても半年、おそらく1年半くらいの期間を想定する必要があり、その間のコンサートのやり方を考える必要があります。そして、人類と感染症との戦いは何千年も続いていて、これからも永遠に続くことと、世界市場で人と物の動きが超活発になって、SNSで情報が民主化された今、今回のコロナ禍のような事態がいつ起きてもおかしくないということ。つまり、音楽事業者のリスクヘッジとして感染症にも対応できるコンサートの形をつくっておく必要がありますね。
 落合陽一さんはソーシャルディスランスイベントを提唱しているようなので、その辺を切り口に、研究してみようかなと僕自身思っています。

2)リアルとバーチャルの垣根がますます低くなる
 垣根が低くなると言うより、グラデーション的に繋がっているというのが僕の認識です。どこからがリアルで、どこからがバーチャルなのか明確な線を引くことはもう難しい。既にリアルとバーチャルは対立概念ではなく、濃さの話。そして、バーチャルだけでなく、リアルもテクノロジーによって変化をしています。
 例として僕が出すのは、大きなスタジアムの端の客席と、同時配信を映画館のODSで観ることの比較です。東京ドームの端っこの席だと、たいていは大きなモニターを観ていますよね。PAもエンジニアの腕によりますが、正直、完璧ではない場合もある。そのケースと、例えば音響設備が整った、高画質対応の映画館で、数百人が集まって、同時配信のステージを観ていると仮定して、どちらが「ライブ感」が高いのでしょうか?自宅でヘッドマウントディスプレイをつけるのだけが、VR体験ではありません。

3)コンサート制作のクリエイティブな側面のノウハウにもアップデート必要
 先日、ニューミドルマンコミュのZOOM飲み会で、相方の脇田敬が鋭い指摘をしていました。それは「リアルのコンサートの演出、プロデュースは長年掛けて、ノウハウが蓄積されていて、プロフェッショナルなスタッフがたくさんいるけど、ライブ配信はノウハウが全然薄い」ということで、その通りだと思います。SHOWROOMERのプロデュースに具体的に関わっているだけに説得力あります。音響、照明、舞台美術、特殊効果などなど、観客を感動させる仕掛けが沢山施され、豊かな音楽体験を提供しています。ライブ配信でもユーザーを喜ばさせることができるように、これからノウハウを積み上げていく段階なのでしょう。

 そして、これらのことが、結果として、コンサート体験のイノベーションを進化をもたらしていくのでしょう。今回のコロナ禍がコンサートにおけるナップスターになるという意味なのかもしれません。

  こんな話をいつもしているのがニューミドルマンコミュニティです。「巣篭もり」期間にZOOMイベント増やしましたので、是非、ご参加下さい。


モチベーションあがります(^_-)