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「真夜中のドア」Spotifyバイラルチャート世界一位の「快挙」で、次に打つべき手は?

 年末のニュースだったせいで、少し薄まってしまった感がありますが、1977年にリリースされた日本の楽曲が、ユーザーのオーガニック(自然発生的)なパワーで世界的なヒット曲になったというのは、まさに奇跡的な快挙です。特に、Spotifyのバイラルチャートは、シェアやお気に入りなどの、ユーザーの行動を基準にしたチャートですから、アーティストの知名度に左右されずに、純粋に楽曲に対する興味関心を表しています。世界一が2週間以上続くって、、、、もう言葉を失うすごいことですね。

「シティポップの世界的人気」の初の定量的情報
 日本の「シティポップ」が世界で人気というのは、3年くらい前から噂にはなっていました。ところが、meme的なクリエイターのリミックスの盛りあがりなど、興味深い定性的な情報はあっても、これという決め手の情報に欠けていました。僕は経済産業省のデジタルコンテンツ白書の編集委員を務めていて、白書は研究者や官僚はチェックするので、ボディブロー的に影響力があります。そういう現象があるなら是非書きたいとリサーチしたのですが、公式な記録である白書には定量的な情報がな必要です。これで今年は白書に書けると思うと嬉しいです。

 それにしても松原みき「真夜中のドア stay with me」ですか?僕は中学生ですが覚えています。好きな曲でした。懐かしい気持ですが、懐かしがっているだけではなく、ビジネスとしてどう使えるかを考えたいと思います。

人気の理由はわからなくていい
 さて、何故、この曲が人気だったのでしょうか?僕の意見は「理由はわからなくてよい」ということです。音楽家は、コード進行やメロディライン、サウンドの質感、歌詞の言葉の音としての響きなど、Spotifyで人気だった理由を考えてみるのは意味があるでしょう。データを見れば再生数の多い街もわかりますから、その傾向などについて思索することでクリエイティブな刺激を得られるかも知れません。
 ただ、ビジネスパーソンには無駄な時間です。世界的には全く無名の40年前の曲からユーザーに支持されたという事実だけで十分です。「日本に宝の山があるかもしれない」のです。データドリブンマーケティングの時代と言われます。今は、ユーザー行動が可視化されますし、個々のユーザー自身が情報発信してメディア化することもできる時代ですから、評価をユーザーに委ねることが大切です。

ともかく全部配信する、そして再生データを追いかける
 リリースしなけば何も始まらないのですから、権利を持っている楽曲でSpotifyに配信してない楽曲を「全て」配信する。その再生データを追いかけるだけでよいのです。コストもほとんど掛かりません。
 このnoteを読んだレコード会社や音楽出版社のスタッフの方、自社のカタログを調べましょう。権利を持っている楽曲は全部配信するのです。日本の場合意思決定が複雑な場合もありますが、権利者の一部でも構いません。イニシアティブを取って配信リリースの計画を立てましょう。レコード会社の経営陣はコロナ禍の影響で、決算対策に苦しんでいる時期です。新しいリリース企画にはポジティブなはずです。あなたの部署や立場は関係なく、社内で提案しましょう、出しましょう。古い契約であっても「二次使用」の料率設定くらいは条項あるでしょう。「業界内調整」に時間を掛けないことがポイントです。
 検索などで不利になりますから、メタデータの整備だけはきちんとやりましょう。海外配信サービスのリコメンド能力は高いです。楽曲ごとのデータをタグ的に活用している場合が多いです。(リマスタリングはお財布との相談次第で、マストでは無いと思います)
 あとは、再生データを毎日追いかけましょう(少なくとも3日一度)ストリーミングサービスの反応は速い時は速いです。何か動きがあったら、原因を調べて、拍車をかけられる施策が無いか考えましょう。どこかの国で盛り上がったら、地元でその歌に合いそうな人気アーティストにカバーを持ちかけましょう。もちろんリミックスなどの施策にも積極的に行いましょう。少なくとも打診には全OKで。
 念の為に書き添えますが、「世界で人気!」という話題を使って、日本で稼ぐためにやるのではありません。ストリーミングサービスは再生回数の分だけ売上があがります。国によって再生単価は違いますが、いわゆるメディア宣伝費的なコストは0です。聴かれた分だけ速やかに(月締なので)入金があるのです。

K-POPへの対抗策は多様性と蓄積
 世界は広いです。演歌も含めて、どんな曲が人気がでるのかわかりません。配信リリースするだけなら、失うものは無いので、最短でやりましょう。もし社内の50代、60代でネガティブは人がいたら、理由を正確に聞きましょう。その理由が納得できないものだったとしたら、ただのデジタル無知(か、社内向け保身)です。社内を説得させる論理をつくるのは(内緒で)お手伝いしますから、連絡下さい。四の五の言われるなら、国内の配信は見送って(それもナンセンスな話ですが)海外配信だけでも良いと思います。
 BoAや東方神起など、MADE IN JAPANで始まったK-POPですが、僕らがうかうかしている間に、背中も見えないくらい先に行ってしまいました。今からK-POPと同じ方法論をやっても正直勝ち目は無いでしょう。
 日本に勝機があるとすれば、クリエイテイブの多様性と音楽的な蓄積です。シティポップブームが起きているのなら、J-Popやアニソンとタグ付的に紐付けて現役の日本人アーティストの武器にして上げる必要があります。デジタルマーケティングの時代は、関連付けはやりやすかったりします。まずは、第2第3の「真夜中のドア」を出すことです。幸いなことに候補楽曲は山ほどあります。眠っている資産をストリーミングで、しかも海外で収益化するのです。過去カタログをメタデータ整備して全世界に配信リリースするだけでチャレンジできるのです。やらない手はありません。

 実は僕は3年くらい前から、日本の70年代80年代の過去作品を海外ターゲットで配信リリースして、全データを追いかけてチャンスの芽を探すという事業をやりたいと考えていました。何度かお話したのですが、上手く座組を作ることが出来ずにいました。その時は、ゲートウエイになる会社を作る構想でしたが、今なら各社がそれぞれやるで良いと思います。音楽業界で働く皆さん、今年上半期の仕事ができました。即やりましょう!
 なにか悩みがあれば、ご協力しますので、遠慮なくご連絡ください。一人の勇気が世界を変えるかもしれません!このままK-POPに良いようにやられっぱなしは無いでしょう?

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モチベーションあがります(^_-)