見出し画像

職業作曲家の心得[7:今すぐできること]

 7年半に及ぶプロ作曲家育成プログラム「山口ゼミ」で、毎回、最終回の講義で伝えている「職業作曲家の心得」。講義の際に、「今月中に決めて下さい」と伝えていることがあるので、それをまとめます。

1:短期中期長期の目標を言葉にして書き留める

 ノートでもEVERNOTEやGoogleDocumentでも良いと思います。「心得:日常編」の3にある「短期中期長期」の目標を言語化して書き留めておきましょう。時々見返して、自分がそこに向かえているのか、自分の情熱が衰えていないか確認しましょう。これは「自分に対する約束」なので、気持ちが変わったら、書き直しましょう。その際も、短期中期長期が一直線上にあるおかどうか確認することを忘れすに。

2:最初に買ったCDは?という質問への解答を決める

 こちらは、「心得:処世術篇」の内容へのアクションです。音楽関係者が大好物の質問への解答を決めておきましょう。必ずしも事実である必要はありません。この質問の意図は、世代も含めてあなたの音楽的なバックボーンを知りたいという意味なのです。
 「はじめて買ったかどうか覚えてないのですが、中学生との時に聴いた**にはまって、高校ではコピーバンドやってました」みたいなのが模範解答。この内容に嘘はいけません。これから作曲家としてやっていく時に、背負ったり、武器にしたり、にじみたりするだろう音楽的なルーツをわかりやすく言語化しておく作業です。とっさに迷わないように用意しておくのです。自分自身の音楽的なバックボーンを振り返る機会にもなりますね。答えてしまったら、もう「そういう人」になるのですよ。

3:最近面白い音楽あった?への解答を考える癖を付ける

 この質問は、作曲家としての感度が試されています。最近、注目されている時代感のあるカッコいい音楽を答えなければいけません。もちろん嫌いな音楽では駄目です。実際に聴いて、好きになって、参考にしようとしているようなアーティストを答える訳です。
 既に定番になっているアーティストは避けられるとベターです。2020年秋の今、チェーン・スモーカーズとかビリー・アイリッシュとか言っているクリエイターには「ふーん」で終わりです。(余程、面白い解釈があれば別ですが)特にレコード会社のディレクターは自分がチェックできていない時代の流行をクリエイターから教わりたいと思っています。その役割が果たせると、仕事のチャンスが広がるわけです。
 この答えは3ヶ月以内につねに変わって、Updateされる必要があります。できないとすると音楽の聴く量が足りません。毎日音楽を聴いていて、気になった音楽の中で「あ、これは今の答えだな」と思いついたらメモっておく、数ヶ月ごとに複数アーティスト・楽曲あるような状態が、そもそも音楽家として健全な状態だと僕は思います。

4:ペンネームを決める

 僕は名前を決めるのは苦手なのでやらないことにしていますが、命名の方針の案を出すのは得意です。今の時代に、確実に意識すべきは、SEO(サーチエンジン最適化)です。本名でいくのも全然ありだと思いますが、同姓同名で既にプロの作曲家がいる場合は、ペンネームを薦めます。「絶対この人より有名になってみせます!」みたいな気合の入れ方は、個人的には嫌いではありませんが、作曲家の自分に対する「ノイズ情報」が存在することが明らかな訳ですから、避けたほうが無難です。
 僕が強く推すポイントは「もう決めておくこと」と「一生一つの名前でやり抜くこと」の2つです。
 コンペで採用されてから、名前を考えていては間に合いません。ディレクターは時間に追われていますので、採用を決めると同時に、クレジット用の表記の確認を求めます。そこで慌てて名前を決めるようなことのないように、「今月中に」決めておくことをススメています。
 もう一つはペンネームを使い分けないことです。「作風があるので、ロック系の場合とアニソンと分けて」などと言う人がたまに居ますが、典型的なクリエイターの独りよがりの発想です。一つの名前で少しでもブランドを上げていく、知られていくことを目指すのが得策です。長く業界で仕事をしていくと名前を分けざるを得ない「大人の事情」に遭遇することはあります。JASRACは4つまで名前の登録を認めるそうですが、迷わず、一つの名前で作曲業をやりきりましょう。

 この4つが、今すぐできる、そしてプロ作曲家志望者がやっておくと良いことです。参考にしてみて下さい。

podcastはRADIO TALK、Spotify、Apple Musicで配信しています。ブックマークをお願いします。メルマガも毎週発行です。読者登録お願いします!


この記事が参加している募集

はじめて買ったCD

モチベーションあがります(^_-)