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テレビがYouTubeやNetflixを観るための機械になった時代のTV局の役割とは?

 この記事は、テレビがコネクテッド(ネットに繋がった状態)があたりまえになるとYouTubeのビジネスが有利に働くといった視点の分析ですが、僕は従来のテレビ局側の危機感は如何に?というのが気になりました。
 テレビがYouTubeやNetflixを観るデバイスになり始めています。実は僕は10年近く自宅にテレビが無い生活をしていて(仕事で必要な番組は、過去作品を送ってもらたり、アシスタントにオフィスで録画してもらうという怠惰な態度の音楽プロデューサーww)コロナ禍で在宅ワークが増えたことで、ますますテレビとは遠のいているのですが、不自由を感じることはありません。先日、大阪出張で、新しくできたビジネスホテルに泊まりました。30インチくらいの大きな液晶テレビがベッドの正面に取り付けてあるのですが、リモコンにはYouTubeやAbemaTVが当たり前のように付いていました。自分のアカウントでログインすることもできて便利でした。「テレビ」というもののフェーズが一つ進んだなと実感する機会となりました。

 2015年刊の拙著『10人に小さな発見を与えれば1000万人が動き出す』で、エンタメ各分野は未来志向でビジネスパーソンに解説しましたが、テレビの章は「テレビって何か再定義しないと」という話に終止しました。昨年noteに引用してマガジンにしているので興味のある方はご覧ください。

 そこでも書きましたが、日本では世界でも国営放送と民間放送の両方のテレビ局が経営的に成功している世界でも稀な国なのだそうです。高度成長期に上手に作って、それが良くも悪くも既得権益化して、よく出来ていたがゆえに、改革が遅れ、国際社会の中で遅れをとって衰退、というのは日本の様々な分野で見られる現象ですが、テレビ業界はその象徴的な存在ですね。昨年9月に上記の補足で書いたことを再掲します。

政府の許認可事業なので、新規参入が無いこと、日本語放送という言葉の壁があること、報道(ジャーナリズム)とエンターテインメント(とスポーツ)が同居していることなど、守りやすい側面はあり、圧倒的なブランド力と不動産などの資産力で企業としての体力はまだまだ残っているのでしょう。ただ先細りになことがあきらかで、NHK+民放5波が、ローカル局の存在も含めて、5年後にこのまま生き残っていると思える人は誰も居ないのでしょう。世界的に見て、国営放送と民間放送が両立している日本は、稀有な成功例だそうです。過去の成功を理由に改革が遅れに遅れて、最後に仕方なく変わる、日本の他の分野でもたくさん見られた景色がここでもまた繰り広げられているようです。電機業界のように壊滅的なことが起きる前に手を打つべきだなと改めて思いました。

 硬直化した仕組みを変えるには海外からの「黒船」が有効というのは、残念ながら日本の歴史です。
 Netflixなどに代表されるコンテンツを電波を使わずにユーザーに直接提供するサービス業態を表すOTT(Over The Top)という言葉を聞いた時に語感として直感したのは「OTTって既得権を乗り越えるってニュアンスあるかも」ということでした。日本のテレビ局は、孫さんも三木谷さんもホリエモンもマードックも政治力ではねのけるほど、「競争」から守られ続けています。
 ディズニーを成功に導いた、ロバート・アイガーの伝記を読んで思ったのは、アメリカのメディアは本当に厳しい競争にさらされているなということです。その経験が「Disney+」という配信を(今のところという注釈付きですが)成功に導いたのでしょう。

 アメリカと比べるまでもなく、日本のテレビ局の経営はぬるま湯に浸かり続けています。政治力を使って既得権化して、独禁法からも上手に逃れていることは結果的に公器であるテレビ局という企業の価値を下げているのだなと思います。音楽業界で一例を上げれば、テレビ番組の主題歌に選ばれると自動的に子会社の音楽出版社が出版権を持つという、典型的な独禁法違反の業界慣習も改められること無く続いています。

 公共物である「電波」という枠をテレビ局という法人は、政府による許認可事業です。(最近は、首相の息子がいる会社による総務省接待という些末な事象で政局になっていますが、この機会に放送局のあるべき姿についての関心が高まるのなら良いことですね。)
 コンテンツの制作と電波による流通の両方をテレビ局が「支配」するやり方には、問題があるとの指摘はもう20年以上前からありましたが、改革はされないままになっています。政治家や総務省の力ではできなかった「コンテンツ制作と流通の分離」が、ネットの力(OTT)と「黒船型サービス」で実現しそうですね。
 許認可権の上にあぐらをかいている「昨日までのことが明日も続くと思っている」放送局の経営者に危機感を持たせることが、まずは第一歩だと僕は思います。

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