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Spotifyが英国で料金値上げのテスト中。日本の料金が安過ぎ問題はこれからなんとかしないとね。

 Spotifyがイギリスで月額料金を1割程度程度上げようとしているという英文のニュースです。(SPOTと略するのを初めて知りました。最初わからなかった)3つのプランがある月額料金を下記のようにする予定のようです。

個人 £9.99(約1518円)→£10.99(約1670円)
DUO  £12.99(約1975円)→£14.99(約2279円)
ファミリー £14.99 (約2431円)→ £19.99 (約3039円)
※ポンド円為替は、200円以上の時もあったのが、EU離脱で130円を切るまで下がりましたが、これは約152円という直近のレートによる円換算です。

Spotifyの日本の料金は以下の通りです。国ごとの価格の比較は単純にはできませんが、随分安いのがわかります。

一般プラン 月額980円 年額9,800円(2ヶ月分無料)
学割プラン 月額480円
Duo:月額1,280円(2人まで)
ファミリー: 月額1,480円

 何故だと思いますか?
 僕は、ビジネスとして関わった訳ではないのですが、縁があって、Spotifyと日本法人ができる前から情報交換をする関係性がありました。最初の日本人スタッフである野本晶さんはもちろんのこと、日本法人初代代表のハネスとも定期的に意見交換をする機会がありました。日本でのサービス開始に向けてのレコード会社との交渉状況は折にふれて伺い、アドバイスしたり、激励したりしていて、事情をある程度知っています。

 日本が980円という国際基準で安い金額になったのは、日本の大手レコード会社側の意向です。僕はこの交渉のプロセスを知り、音楽市場発展のチャンスをレコード会社の経営陣がどうやって遅れらせたかを思い知らされました。デジタル化をできるだけ遅らせるようにとブレーキを踏んだことで業界全体が沈滞していったのです。noteもpodcastでも、パブリックな場では、できるだけフェアかつポライトに語ろうと心がけていますが、時々、毒が出てしまうのは、この時の記憶があるからです。固有名詞や具体については言えないことも多いのですが、交渉を長引かせて、サービス開始を遅らせた上に、料金設定について本当に愚かな決断をしていました。

 Spotifyは、ユーザーが満足できる品揃えにしてローンチするというのが基本方針です。Appleと比べても、権利者との交渉は丁寧です。
(日本に関しては、その方針が裏目に出て、Apple Musicに比べてローンチが1年遅れたことで、150万人位の初期ユーザーを失い、いまだに苦労しているのが、そのマイナスが大きかったと僕は思っています。が、それは置いておいて、)
 Spotifyは、世界で最大の権利者であるユニバーサルミュージックと向き合って、ジェネラルルールを決めていきました。老獪で戦略的なユニバーサルは、Spotifyを育てつつ、意向をのませるというスタンスで相対してきたと思います。「豚は太らせてから食え」というユダヤの諺を地で行く感じがしました。そのユニバーサルとSpotifyが決めた最初のルールが「サブスクの月額料金は、iTunes Storeのeアルバム一枚分にする」というものでした。
 この基準を当てはめれば、日本は月額1500円から1800円が妥当ということになります。実際、Spotify 側はそのつもりで準備し、交渉をしていました。これを下げるように主張したのが、なんとレコード会社側だったというのが、本当に残念な話です。
 「日本ではその金額では定着しない、やるんだったら、妥当なのは500円位だ」との主張さえあったと聞いています。自分たちのコンテンツの価値をみずから下げるというのはいまだに理解不能です。トップに立つ人にグランドデザイン的なビジョンが無いとみんなが迷惑するとということですね。
 日本の不幸は、デジタルサービスの成功事例が、NTTDocomoのi-mode公式サイトだったことです。デジタルに関する知見が弱く、海外事情のリサーチも丁寧に行わない日本のレコード会社経営者は、i-modeと着うたの「成功体験」から逃れることができなかったわけです。僕は当時話を聞いて、憤りながら、「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」という諺が本当だったんだと知りました。以前も書きましたが、その感覚はいまだに時折見かけます。

 ここにも書きましたが、レコード業界は、i-mode公式とCDバブル、2つの成功体験の呪縛から解き放たれないと明日はありません。

 存在感を確立したNetflixが月額料金を上げ始めていますが、音楽サブスクリプションサービスも音楽ファンにある程度、定着した後に、月額単価を上げるというプロセスが必要だというのが僕の認識です。これからストリーミングサービスが音楽ビジネス(録音原盤ビジネス)の中心になる時に、死活的な問題になるでしょう。もうおやめになった過去の社長の愚かさを指摘しても意味はないので、英国の事例をケーススタディしながら、今後を考えていきましょう。

 そして音楽家側、権利者サイドで考えるべきことは、ユーザー単価が上がった分の収益の分配比率の話です。配信事業者側が自らの収益のために使用料をあげることにユーザーの支持は得られるのでしょうか?増加分の大半はアーティストサイドに渡すという姿勢を見せないと納得はされないでしょう。難しいのは、使用料は国ごとに違っても、許諾と分配はグローバルに行われているという事実です。分配率を国別に変えるのは難しいでしょうね。
 いずれにしても、ユーザーが支払う金額を増やしたら、権利者側への分配率も上げさせなければいけませんね。そんなことを考えさせられる英国からのニュースでした。

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