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アーティスト・マネージメントは最強のスキルだ

 アーティストマネージメントの定義とマネージャーの資質については、『ミュージシャンが知っておくべきマネジメントの実務 答えはマネジメント現場にある!』に明確にまとめられているので、ここでは、個人的な思いを綴りたい。
 僕は自分が日本の音楽業界でマネージメントを出自に仕事をしていることに誇りを持っている。理由は大きく2つ。


 アーティストも様々なタイプがあるので決めつけてはいけないけれど、才能のある音楽家に限って世の中への適応が苦手なことが多い。「自意識が自分でも持て余すくらい強く、その自意識が表現にフォーカスされて素晴らしい才能やパフォーマンスにつながっている人」というのが、僕がイメージする典型的な一流アーティスト像だ。マネージメントが世の中とアジャストする役割を果たさないと、才能は枯渇して消えてしまう。おそらく才能というのは、泉のようなもので、絶えることなく湧き出るように見えて、何かのキッカケて枯れてしまうナイーブなものなのだ。僕はマゾヒスティックな性格ではないけれど、アーティストに困らされることで、アドレナリンが出た経験は何度も何度もある。マネージメントは、アーティストが音楽を続けるために不可欠な存在なのだ。スタッフ同士で酒場の会話で、「俺は危険物取扱1級持ってるから、大丈夫」という冗談は100%通じる。「僕はまだ2級なんですよねぇ」と言って笑う。


 もう一つは、音楽のチカラを信じて天下を取った先輩、仲間がたくさんいること。Jポップの歴史はアマチュアバンドと素人マネージャーが自分たちの音楽を信じて、サクセスする人が出てき続けていることだ。残念ながら僕自身は、自慢できる大ヒット曲は生み出せていないけれど、音楽のチカラを信じて挑戦する姿勢を続けているから今の人脈と評価が出てきたのだと思っている。
 以前、手塩にかけて育てたアーティストに酷い裏切りにあって、人間不信で落ち込んでいる時に、同世代の事務所社長から「わかる。でも、生まれ変わったらマネージメントやらないでしょ?俺はやらないよ」って言われて救われた経験がある。その時に思ったのは、「ヤバイ!俺、生まれ変わってもやっちゃうかも」
 マネージメントは、自分の業だと思って気持が吹っ切れた。数年後に、彼に感謝を伝えたら「俺もまたやると思うんだ。でもあの時は、あんな風に言われた方が救われるでしょ?」僕の気持を見透かしていた。優秀なマネージャーに救われた経験。改めて、マネージメントって凄いスキルだなと、感謝と共に痛感した。

『ミュージシャンが知っておくべきマネジメントの実務 答えはマネジメント現場にある!』(2017年9月刊)Chapter.1「音楽ビジネスの仕組み」から


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