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2020年のコンサート市場は8割減。復活までに音楽業界がやっておくべきこと。

 コロナ禍で一番ダメージを受けたのはコンサート業界であることは間違いありません。前年比8割減というのは15%減と言われている飲食業界など他業種と比べても、壊滅的な出来事です。
 しっかりとした事業者が主催、制作している一定規模以上のコンサートや演劇で感染クラスターが発生した事実は無いのですが、わかりやすくスケープゴートにされた側面も否めません。収束へのメドが立ちつつある、でも「通常営業」状態には、もう少し時間がかかりそうな今、押さえておきたいポイントを確認しましょう。

エンタメは人間生活に不可欠な存在

 エンターテイメントは、不要不急ではなく、生活に不可欠で、社会になくてはならないものであるとしっかり主張しないといけませんね。ロックダウン時のドイツのメルケル首相のスピーチは感動的でした。
 コンサートや演劇、ダンスといった公演が行われない社会が、どんなに味わいのないものか?
 Covid-19による「自粛生活」は、これまで当たり前に受け入れていた事象を見つめ直す機会になっていますよね?自分の働き方や住居について、方針を変えた人もいるようです。非合理的な同調圧力の強さから属するコミュニティとの関係性を考え直した人もいるでしょう。友人と一緒に食事をすることの大切さも痛感しました。会わなくても良い人は友達ではないのかもと人間関係を整理した人もいるかもしれません。

 エンターテイメント側の僕たちは、改めて社会に対して、時には政府や自治体に対して、感動する機会を提供する仕事の価値をしっかり伝えていかなければなりません。そのためには一定の社会的責任を受け止めることも必要でしょう。

コンサートビジネスのDXを進めよう

 音楽を奏でる、聴くというのは、数千年以上の歴史がある人間の根源的な欲望のはずです。僕は旅行も無くならないし、コンサートが下火になることも無いと信じているので、長期的に何も心配していません。必ず戻ってきます。
 ただ、社会的責任という意味も含めて、コンサートビジネスのユーザーの立場にたったDX(デジタルトランスフォーメーション)は大至急やるべき課題です。コンビニに行って、意味がわからない手数料を払わせて発行する紙のチケットが、負の象徴です。プレイガイド事業者は売り切れ必至の巨大公演の電話予約を裁くための投資は行っても、快適な体験のための努力は怠ってきています。コンサートの主催者もユーザーの不便さには目を向けずに、任せてきました。コンサートに行きたいと思った後のユーザーの熱量は高いので多少の不便は乗り越えてくれます。その熱量に甘えてきたことはこの機会に反省しましょう。
 toB側のDXも大切です。座席管理の仕組み、会場予約の仕組み、FAXと電話と鉛筆という昭和の仕事から脱却することで効率化されます。今やバックヤードの仕組みとユーザー体験はデジタルで繋がりますので、事業の効率化はユーザー体験の向上に直結する時代です。

デジタルエンタメ市場育てよう

 コロナ禍でオンラインコンサートという新たなサービスが広がりました。ただ、リアルに観客が入れられないから「仕方なく」やるという側面も強く、体験としてはまだまだ弱いのが現状です。「無観客」という言葉はやめようと呼びかけてきました。
 リアルのコンサートが素晴らしいのは当然のことです。オンラインコンサートにはリアルとは、別の、違った体験としての価値があるはずです。
 慌てて始まったこともあって、この分野はまだ経験値が足りません。リアルのコンサートは何十年という期間をかけて、客席と一体感がもてる進行のさせ方、盛り上がる演出方法、効果的な特効の使い方などのノウハウが積み上げられ、舞台監督やスタッフたちに受け継がれています。
 デジタル表現に興味のあるアーティストとクリエイターが表現重視で選出すると採算性が下がります。ただ漫然と映像を流してもファンは満足できません。
 それ以上に大きいのは、ITプラットフォーム側にコンサート制作の現場の経験がなく、コンサートを創っている人たちにデジタル通信のリテラシーが弱いことです。安定した音質、画質が必ずしも担保できなかったのは、この両者の溝がちゃんと埋められなかったことが原因の場合が多いようです。

 昨年末に僕たちStudio ENTREが設立したコンサート配信会社FAVERのCEO小島健太郎は、コンサートプローター出身です。ライジングサンなどのフェスにも関わり、アーティストやマネージャー、音楽ファンが何を望むのかを肌感覚でわかっています。少しずつ配信が始まっていますが、しっかりとフィードバックして、必要な機能を追加開発していく体制ができてきました。これから素晴らしいサービスになっていくはずですので、ご期待、ご注目をお願いします。
 昨年、たくさんのコンサート配信サービスが生まれています。みんなでユーザー体験とアーティストの収益性の両方を高めていくというポイントで競い合って新しい市場を1000億円規模に育てましょう。
 これまで会場に足を運べなかったユーザーが自宅で楽しむ、海外の音楽ファンに届けるといった活動で新しいファンの獲得にも繋がっていくことでしょう。
 コロナによる大危機を好機に変えていきたいですね。頑張りましょう!

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モチベーションあがります(^_-)