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『ソウルフル・ワールド』で描かれるジャズとニューヨーク。

 pixarの新作アニメーション作品は超良質の音楽映画でした。年末年始の時間を使ってSTAR WARSの全編を観ようと、disney plusに加入しました。告白するとSTAR WARSをちゃんと観た記憶が無く、飛行機の中とか、テレビでとかの記憶で、流石にまずいなと思っていました。その流れでpixarの新作として『ソウルフル・ワールド』を知りましたが、素晴らしい映画でした。
 世界観も深くて、もちろんエンタメ感満載で、表現も良く出来ていて、流石という感じです。多くの人が死生観や、人生観といった本作のテーマとフィロソフィーを語られることでしょうから、僕は全く個人的な感覚で「音楽映画」という観点で少し記しておこうと思います。「ジャズとニューヨーク」という好きなものの使われ方が素敵という観点です。

 主人公は売れないジャズピアニスト、音楽教師をしながらチャンスを求めて音楽活動をしているニューヨーク生まれのアフリカン・アメリカン。大きなチャンスを掴んだところで事故に遭うという設定なのですが、ネタバレは避けておきます。
 僕は世界で一番好きな街はニューヨークです。20代半ばで初めて行って、パワーに魅了されました。東京生まれで東京育ち、しかも音樂を仕事にすると「東京しか無い」という感覚がありました。特に当時は日本の経済が強くで、欧米以外にエンタメのビジネスは成立していなかった頃です。そんな若干の独りよがりな閉塞感がNYCに来たことで吹っ飛びました。「本当に嫌ならここに来て、1からやればいいじゃん」と思えたことが僕にとって大きなパワーになりました。そんな誰でも受け入れるという自由さと空気感を感じることができたのです。もう会社も始めていて英語も不得意な僕はもちろん不法移民にならなかったのですが、あの自由な感覚を味わえたこと、そして「だから東京で頑張ろう」って思えたことはエネルギーになって、変な言い方ですが、ニューヨークという街に「恩義」を感じています。その後、頻繁に出張や休暇で訪れ、9.11テロの時にマンハッタンに滞在するという体験もするのですがそれはともかく、とっても思い入れのある街です。
 『ソウルフル・ワールド』は、アニメーションなのに、ニューヨークの空気が感じられる気がしました。ジャズクラブでのギグの様子もリアルです。ジャズは全体のストーリーでは、小道具的な存在なのですが、「神は細部に宿る」というのはアニメーション映画ではまさに当てはまりますね。選曲、演奏と映像のハマり方などバッチリです。ジャズに対して愛情がある監督が創っているのがよくわかります。ジャズを用いると陥りがちな、懐古的で教養主義的な捉え方ではななく、今日的な音楽になっています。PIXARの3Dスタイルのアニメーションで大人が楽しめる音楽映画が作られているのも成熟を感じました。
 映画のタイトルの「ソウル」は人の生命の魂という意味なのでしょうが、ジャズはソウルミュージックだと言う意味にも、NYはソウルフルシティだという風にもトリプルミーニングに感じられました。

 今日的なジャズになることに貢献しているのは音楽を監修したジョン・バティステでしょう。ちゃんとした認識がなかったので、改めて調べました。この柳樂光隆さんの記事がわかりやすいです。

 BLACK LIVES MATTRERでも象徴的な活動をしていました。BLMについては以前、書いています。僕にとっての音楽と切り離せない、すなわち僕の人生にとってとても重要なISSUEです。一つの映画から色んな観点が持てるのは名画の条件の一つですね。

 と、いろいろ書いてしまいましたが、ともかく音楽映画としてオススメできる作品です。「ディズニープラス」は1ヶ月無料お試しができるようなので、是非ご覧ください!

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モチベーションあがります(^_-)