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ダスクモーン:戦慄の館 リミテッド反省会(環境理解篇)

はじめに

こんにちは!
いつもポジティブ、山辺カフカです!

ダスクモーン:戦慄の館(以下、DSK)実装から3日ほど経過し、17Lands.comの統計データもだいぶ集まってきております。
そして、筆者はリリース前にnoteで環境予想をしておりました(↓)

そこで、筆者のDSK環境予想がどれだけ当たっていたか/外れていたか、17Landsのデータに加えて、DSK環境のリミテッド(プレミアドラフト・シールド)を体感した経験も基に、恒例で行っている反省会を今回もやっていきたいと思います。

なお、本記事における17Landsデータの引用については、17Lands.com公式サイトにおけるUsage GuidelineのCitationに関する規定に則っております。
また、Usage GuidelineのEmbargo Periodに関する規定についても、当記事は"any third-party site or tool that is providing an alternative visualization of a data set that is directly accessible on our site"には該当しないものと判断しております。その上で、当記事での17Landsデータの言及・引用は"Note that this embargo period does not apply to citations of individual numbers in articles, podcasts, etc. Feel free to talk about the unbelievable win rate of card X from day one."との記載によりEmbargo Periodの適用外であるものと解釈し、執筆しております。

一部記載は17Lands.com公式サイトより引用





予想の検証

予想記事において、筆者はDSK環境を、やや高速(平均決着ターン≒8.7)かつ先手勝率≒52.5%と予想しました。

環境加速要因としては、①強力なフィニッシャーの早期着地戦略を取りやすい上に、②それに抗う形で低マナ域のアグロ戦略も有効である点を挙げました。一方で、環境減速要因としては、③生存アーキタイプの存在により膠着盤面が発生しやすい点を挙げました。

また、部屋アーキタイプのカードパワーが低めのため支配率が高くなりにくい点や、マナベースは優秀だがダブルシンボルのファッティが多くタッチには慎重になるべき、とも触れておりました。

さて、実態はどうだったのでしょうか。



環境のスピード:

今回も17LandsのFormat Speedというデータを参照します。(これ以降はいずれも2024/9/27までの17Lands集計データを引用しております)
このデータでは先攻・後攻の勝率差と、その環境でのゲームの平均決着ターン数が分かります。

以下にプレミアドラフト・シールドでのデータを、現行スタンダードのエキスパンションと比較して載せています。
縦軸が平均決着ターン数、横軸が先攻の勝率です。
銀シンボルがプレミアドラフト、赤シンボルがシールドのデータでして、筆者予想の環境を赤色の★で示しております。
実際のDSKプレミアドラフト環境を赤色の◯で囲っております。

筆者予想はドンピシャで当たっており、実際のDSKプレミアドラフトの環境速度は、平均決着ターン≒8.7ターン、先手勝率≒52.5%の、やや高速な環境ということが分かります。


個別要素の予想に問題があったかどうかについては、後述する各項にて述べます。



アーキタイプ別の強さ:

こちらも17LandsのDeck Color Dataからデータを参照します。

まず、以下にプレミアドラフトのタッチカラー(3色目3枚まで)も含んだ2色・3色デッキの色別勝率データを示します。

赤白・青白・赤緑といったアグロ戦略を得意とするカラーは、ある程度高い占有率を有している(≒混んでいる)にも関わらず勝率上位に位置しております。
環境初期ということでピック・構築のシンプルなアグロ戦略が有効ということもありますが、占有率も考慮すれば環境後期までこれらアグロが環境を定義し続けることになると予想します。

続いて、タッチカラー(3色目3枚まで)有り/無し別の2色デッキの色別勝率を示します。
上段、"Two-color"がタッチカラー無し、下段"Two-color+Splash"がタッチカラー有りのデータです。

タッチカラー無しと有りでの勝率が他環境と比べても乖離している(有りの勝率の方が2.9%低い)のは、アグロ戦略が上位に位置していることで説明しやすいでしょう。
筆者の予想していたようにマナベース(特に土地)は優秀でも強力なカードにダブルシンボルが多いためタッチしにくい点も影響していると考えます。
その点、アーキタイプ別ではベースの勝率も悪くない上にタッチ有りでの勝率下落幅の少ない青緑は特筆に値します。
今後環境理解が深まることでタッチすべきカードの研究も進むでしょうから、伸びしろの期待できるアーキタイプと感じます。

普段はこれらのデータから読み取った色別の序列を示しておりますが、今回は敢えて言及を避けておきます。
勝ち組カラーと言えそうな白や赤も白黒・緑白や青黒・青赤といった負けアーキタイプに絡んでおり、単色で強さを評価するのが比較的難しい環境と考えるためです。
敢えて言うならば勝ちアーキタイプに絡まない黒が負け組と言えそうですが、平均勝率付近の黒緑は健闘している点は見逃せません。

筆者予想の色別Tier評価と比較すると、白黒を上位に置いてしまった点や青白を中位に置いた点は誤算ですが、その他はイメージに近いTierになっていると思います。
青赤・青黒が苦戦することは綺麗に予想できたと思います。
(予想記事の有料部分でしたのでこれ以上の言及は避けます)



総合評価:

ここまでの予想内容を総合的に検証すると、環境の大局観(速度感)は当たっていたものの、個別のアーキタイプでの強弱は読み切れなかったと言えます。

その上で、筆者がDSKのプレミアドラフトイベントを複数回プレイして感じた予想との乖離について、次項より考察していきます。
事前予想記事の項目ごとに反省点を挙げていきますので、予想記事と併せてお読みいただけますと幸いです。



環境の特徴

①フィニッシャー性能が高い:△ (-0.3T→-0.1T)

本項ではDSK環境のアンコモン以下のフィニッシャー性能の高さとそれをリアニメイトする戦略の有効性に触れましたが、後者については白黒の不振と相まって想定ほど上手く働いていません。
特に、DSKの蜂蜜マンモス枠になりうると期待した《繭からの出現》も指標は奮っておらず、単体で機能しないことの辛さが表れていそうです。

ちなみに《繭からの出現》と《眠りからの襲撃》はイラストとマナコストが似てるので要注意。

そんな中で一人気を吐いているのが《三度呼ばれ、アルタナク》でしょうか。
序盤に引いたとしても戦慄予示で墓地に落とした土地を釣りあげる動きが決して悪くなく、《広漠なる変幻地》や《水中トンネル》から2T目ランプに繋げるブン回りにすら貢献します。
そして何より相棒である《その名を言え》の単体性能がかなり高いことが示されたことも大きいでしょう。
昂揚の早期達成にも貢献する性能から緑を含む全アーキタイプで高い指標を示しており(GIH WR 59.0%、コモン第3位)、アルタナクコンボすらロマンではないことを証明しました。

「そのデッキの名前を言え。私が起源です。」

着地してしまったフィニッシャーに対する解決手段が豊富なことも、青白が環境初期に躍進している理由の一つでしょう。
ディッチャに弱いタイプの除去が多い点は気になるものの、《画面の中への幽閉》《幽霊による庇護》はともにトップコモン(GIH WR 59.4%、コモン第1位)・トップアンコモン(GIH WR 63.6%、アンコモン第1位)であり、単純性能の高さが伺えます。

これはマシンガン打線

今まであまり指標を残しにくかった「能力を失わせる」タイプの《声も出せない》がコモンGIH WR上位に位置しているのも特筆すべき点です。(GIH WR 58.7%、コモン第5位)
フィニッシャーだけでなくアンコモン以上を中心に無視できないシステムクリーチャーが多く、それらに1マナで対処できる嬉しさが過去の環境よりも大きく、ブロッカーを残すデメリットを上回ったものと思われます。

見たら焼け四天王。「物漁りがやられたようだな…」

・他環境で7ターン目までにフィニッシャーが着地できる確率: 20%
・DSK環境でリアニメイト戦略も駆使して7ターン目までにフィニッシャーが着地できる確率: 60%
・上記により早期に事実上のゲーム決着が生じる確率:20%
・それにより短縮される決着ターン: -1ターン

⇒ (60%-20%) × 20% × -1 ≒ -0.1ターンの環境加速影響に下方修正します。



②2マナ以下のアグロクリーチャーが優秀:△ (-0.1T→-0.3T)

本項では特にコモンの2マナのクリーチャーがアグロ向きであり、いずれも優秀である点に触れていました。
蓋を開けてみると、決して優秀でない訳ではないものの、環境を定義しているというには少々物足りない指標が出ています。
コモンの2マナ域最上位は実質クリーチャーの《戦慄予示》であり、GIH WRが58%を超えているのはこれだけです。(GIH WR 58.5%、コモン第8位)
予想記事で挙げていた2マナ域のGIH WRがすべて56%にも満たないのはシンプルに驚きでした。

チアリーダーがこんなにダメなんて…

では何がDSKのアグロ戦略を押し上げているかと言えば、システムクリーチャーを軸とする「ブン回り」の確度が高い点でしょう。
代表的なブン回りの一例として《呑気な物漁り》+《大玄関》/《優雅なる円形広間》を挙げますが、1T目~3T目にこの2枚の組み合わせで動くだけで返すのがかなり難しい盤面になってしまいます。

リミテでも実質2キルしていいぞ!

赤緑昂揚にも3T目昂揚達成のブン回りルートは存在し、これらのアンフェアとも言える動きと比較すると、上記のようなフェアな2マナ域の展開は相対的に弱い動きと看做されるようです。(恐ろしいことですが)
3マナで戦慄予示+αを行えるカードがある中で、戦慄予示と相討ちしたりレースで勝てないカードの価値が下がっているとは言えそうです。

戦慄予示の2/2が環境定義している観点で、《光霊灯》の役割にもここで触れます。
ブン回りを経由せずにフェアにタフネス3ラインを形成する上で、装備(1)で取り回しの効くこのカードが小気味良い活躍を見せています。(GIH WR 57.8%、コモン第12位)
光霊トークンが戦慄予示と相討ちできるようになり、こちらの戦慄予示を含む2/2が相手の戦慄予示に一方殺サイズになる影響が非常に大きいことの表れでしょう。
アグロだけでなく受ける側としても嬉しいカードであり、現状ピック順位は決して高くないものの、指標も出ており今後再評価されるであろうカードです。

テレレレッテレ~♪

筆者は予想記事にて「アグロデッキがTier1にならない」と予想していたため、この点はがっつり外しております。
然るに本項の環境速度への影響は見直しが必要と考えます。

・全体に占めるアグロデッキの使用割合: 50%
・アグロデッキがブン回りを形成する確率: 60%
・上記ゲームの平均決着ターンに対する短縮ターン: -1.0ターン

⇒50% × 60% x -1.0 ≒ -0.3ターンの環境加速影響に上方修正します。



③生存ケアによる膠着: ○ (+0.1T)

筆者は本項にて1,2マナの生存持ちは強いが3マナ以上の生存持ちは弱い、と予想しました。
現在どのような傾向を見せているかと言えば、先述の《軽業のチアリーダー》に代表されるように1,2マナの生存持ちもそこまで活躍できていません。
その代わりに、(極端に高い指標ではないものの)以下の3マナアンコモンの生存持ち2種は及第点の指標を示しております。
これら2種は3マナでありながら生存によりボード・カードアドバンテージを取れるため、他のカードで介護してでも生存させる価値があるという評価がなされている模様です。
生存アグロで実現できるブン回りの軸になっているとも言えるでしょう。

最後に生き残るのはどっちだ

アーキタイプとしての緑白生存はどうかというと、マルチアンコモン2種が悲惨なほど低い指標を示していることからも、予想通り成立が難しくなっているものと思われます。
筆者が予想記事で語っていた通り、再現性よく生存アーキタイプを組むのは難しく、一部のプレイアブルな生存持ちを中心に攻撃による生存を試みる形で運用されているのでしょう。
実際のところ生存持ちによるブン回り発生は多くなく、膠着盤面形成にも加担してしまっていると思います。

磯野~野球辞めようぜ~

どの生存持ちが活躍できるかという細部では外したとはいえ、大局的には当たっていたと言えそうであり、環境速度への影響も予想のままと致します。




Tips) 部屋:◎ (±0T)

アーキタイプとしての部屋コントロールが奮わない点はドンピシャで予想を当てることができました。
マルチアンコモンのうち《煙たい談話室》/《霧がかった応接間》しか及第点の指標を示していないことから、これらのカードパワーが低迷の一端を担っているという予想も当たっていそうです。

見るからに弱いもんなあ…

本項では青の各種スペルが優秀である点にも触れましたが、これらを活用してミッドレンジ~コントロール戦略で躍進しているのが青緑です。
普段青緑が弱点としている除去面でも今回はかなり恵まれており、コントロールを組むにしても青緑ベースで良いか、となってしまうのが青赤・青黒にとっても向かい風です。

除去のある青緑は強い

おまけの項でも触れますが、青ベースのデッキに赤や黒をタッチで組み込む形で、コントロール戦略を研究する余地はあると思います。
とはいえ現時点では環境速度へのインパクトは少なく、本項についても予想の内容を維持します。



Tips) マナベース:○ (±0.0T)

本項では、DSKのマナベースが豊富な一方でタッチしやすいカードは少なく、意外とタッチに寛容な環境ではないと予想しました。
アーキタイプ別の強さの項で既に触れましたが、タッチカラー勝率はさほど奮っておらず、当たっていたと言ってよい範囲かと思います。

タッチについては環境の研究が進むほど効果が表れやすい点だと思いますので、詳細はおまけのページにて触れます。



おわりに

以上、相変わらず雑多ですが筆者なりにこの環境の全景を早期に言語化してみました。
この環境に関する疑問点や情報など、是非筆者にも気兼ねなく共有いただきたいです!
追って個別カード評価の見直し記事も執筆したいと思います。

ただの宣伝ですが筆者が記事を寄稿した一般TCG理論に関する冊子も販売されておりますので、よろしければこちらもお手に取っていただけますと幸いです…!

以下に投げ銭用のおまけページを用意しております。
一応私なりの環境中期以降に向けた期待値をつらつらと述べております。

ここまでご一読いただきありがとうございました。
それでは!また次回記事か配信でお会いしましょう!
バイバイ、さよなら、再見



おまけ(環境中期以降に向けた期待)

赤緑昂揚の構築最適化

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