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move1 取材メモ

できあがった展覧会を見回すと、3人がそれぞれの角度と度合いで”移動”を扱っていることに気づく。
「そこに山があるという嘘」という展覧会名に、鈴木さんは「情報と質量」という副題をつけている。自らの体を移動させて対象に近づくことで、情報は質量をもちだす。「自分の体で感じることが一番」とも言えそうだけれど、それは正しくもあり疑わしくもあるよね、というのが、まず3人のスタート地点にあったのかなと思う。
私自身は、自分が移動することで他の移動を意識するようになり、そのように定まらないものどうしが混在し編まれる世界の柔らかさに、驚くことが多かった。

バス停、結ばれたビニールひも。茶色のバッグ、コートの8個のボタン、規則正しい。膨らんだマスク、足拭きマットが台車で運ばれていく。2つの黒いカバン、ふくらみが似ている。足裏を消毒する、大人600円、木陰、警備員(2人)、棒と棒、パーブルとピンクのマダム。警備員が帰っていく。運ばれていく葉むらさき。それはまぜこぜという意味。

鳩、とびあがる、市民サービス、サル、カラスだけの看板、足元に犬、白とベージュのまだら、白いストッキングとヒール靴、鼻をつままれるマスク、車線変更するタクシー、左にかたむくトラック、荷台にみどりのシート。ずりさがるリュック、右下がり、左のポケットに深く差し込まれた手。黒いビーズの髪留め、息子が右足をあげて見せる。バイク便、0000 921200 5283 富 ビニール傘、赤いカップの持ち帰るコーヒー、エナメルのヒール靴(ヒール太め)、ワインレッドのカーディガン、振り回されるグレーの毛並みのぬいぐるみ、トレンチコート2つ、足場材を積んだトラック、大きいエンジン音。あたたまった岩を冷やす。揺れがはげしくアナウンスがかきけされる。洪水の世紀 科学的ではないという理由。

旋回する、乗る人ゼロ、グレーのズボンにベスト、両手をポケットにいれて、リュックについたピンクの何かのキーホルダー。パーマ、うすい栗毛の髪、風でもりあがる、一番前の席に座る、腫れぼったい目で、こちらを見る。紙袋3つ、警視庁パトカーの赤いサイレン、黒のキャスケットのつばがビル3階方向に向いている。規則正しい振り子時計のような腕の振り方、黒縁のメガネ。

青い腕のクレーン車。左手、中指になにかある。赤いスニーカー、白い髪、根元の黒、黄色のひもぐつ、桜柄の傘。艶のあるお椀。久しぶりに出会う2人、船のとうちゃくを待つ人、空のスチロール箱をもって歩く人、何ものっていない台車。だんだん右に寄っていく女性、ライトのついた自転車、青いバッグと白い紙ふくろつまさきが上を向いている。

揺れるロープを見る女性2人、さびた檻、チューリップを見てりんごを叫ぶ子。終電のバスがくる。だれも乗らない。赤い旗が少し見える、青い旗はつねに見える。りんご5個くらい入っていそうな白いバッグ。細い目と青いシャツ、あごまで下げられたマスク。振り子のような揺れ方のビニールバッグ、白いスカート、ふちに刺繍、黒いタイツにまとわりついている静電気。

上下白をバイクが追い越す、上げられるジッパー、指さされた地面、メモ帳に書き込まれた文字、大きくふくらむ2枚の白い旗、右足をひきずる人、振り子のようにふられる腕、2台のスマホを見ながら歩く人、袖口にしまわれた手、シルバーのほろ、13本のすじ。きりんの台座について話し合う2人の女性、左から右のふくらみの話。道をわたって向かいのきりんにも行く。きりんの写真をとる男性、右手に軍手をはめる。クラクション、弟をなぐる兄、かたむいたリュック、しかる父。次の乗船は15時、空の船に2人の男、水紋、泡、進路変更、閉じられた門、ハトのふん。タクシー3台、パトカー、黄緑のワンボックスカー、点滅するオレンジのライト、うごきだす2本の杖。

映像作品《Long Road, Wrong Move》、move1のナレーションの元原稿より

大和

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