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夜明けのすべて

2月24日(土)

『夜明けのすべて』を彼女と観た。

月に一度、PMS(月経前症候群)でイライラが抑えられなくなる藤沢さん。
ある日、同僚の山添くんの、とある行動がきっかけで怒りをぶつけてしまう。
いつもやる気が無さそうに見える山添くん。
彼はパニック障害になり、生きがいや気力を失っていた。
「男女間であろうとも、苦手な相手であろうとも、助けられることはある」
いつしか2人は、自分の病気は治せなくても、相手を助けることはできるのではないかと思うようになる。

『夜明けのすべて』あらすじ

温かみのある映像。
優しい音楽。
魅力的な登場人物。
夜に思い出したくなるセリフ。

原作小説を読んでいる時に感じた、優しさやぬくもり。それが、映像に落とし込まれていた。

自分だけの悩みや苦しみ。
誰かに打ち明けたところで、解決するものではないかもしれない。

それでも、自分が抱えている悩みや苦しみを、知ってくれている人がいる。

それだけで、どれほど気持ちが楽になるだろう。
この作品からは、そんなことを感じる。

***

映画を観た後、やよい軒に行った。

僕は『しょうが焼き定食』を、彼女は『ハンバーグ定食』を注文した。

料理が運ばれてくるまでの間、やよい軒で働いていた時の話をした。

「やよい軒でバイトしてた時、キッチン担当でさ、野菜炒め作ることあったのね」
「うん」

「野菜炒めのタレを入れなきゃいけないのに、忙さのあまり焦って生姜焼きのタレ入れちゃってさ、盛大にやらかしたよね」
「そんなことあるの!?」
そう言いながら彼女は笑ってくれた。

「隣の部署の課長はね、松屋でバイトしてたらしいんだけど、米炊き忘れたことあるらしい」
これにも彼女は笑ってくれた。

「『あの時の絶望知ってる? 炊飯器開けたら空っぽだったんだよ』とか言ってて、面白かったんだよね」
「やっぱ飲食系のバイトは、1回はミスするんだね」
「飲食系はミスがつきものだよ〜」

***

ご飯を食べ終え、少し休むことに。
それからふいに、最近の悩みを打ち明けたくなった。

「最近さ、夜中の2時くらいに起きちゃうんだよね。しかも耳鳴りがひどくてさ」
「なんだろう、仕事のストレスなのか、気圧なのか」

「職場で嫌いな人もいないし、仕事が嫌なわけでもないんだよね」
「うん」

「ただ、働くことそのものに対して、少しの憂鬱と緊張があるというか」
「うん」

「多分、仕事とプライベートの切り替えが下手なんだよね」
「ずっと緊張してる感じなのかな〜」
「そんな感じかも。いま落ち込んでるとかそういうのじゃないんだけど」
「うん」

「ただ知っててほしいな〜と思って」

自分では大丈夫だと思っていても、心身の不調は突然やってくると思う。

そもそも、自分では大丈夫だと思っている時点で、黄色信号なのかもしれない。

大丈夫だと思い込むことで、安心したいんだと思う。

自分の心と体なのに、本当に大丈夫かどうかは分からない。
だから、知っていてほしい。
大丈夫じゃなさそうだったら、教えてほしい。
そう思った。

「今後、もしヤバそうだったら教えてほしいんだよね」
「うん。その時は任せてよ」
彼女は優しくほほ笑みながら、そう言ってくれた。

ただ聞いてくれる。
ただ知ってくれる。
それだけで、とても救われるような気持ちになる。

***

彼女に悩みを打ち明けてから、耳鳴りがおさまった。

自分の悩みを知ってくれている人がいる。その安心感から、症状が改善されたのかもしれない。

悩みを打ち明けるのは難しい。勇気がいる。

悩みを打ち明けるか迷った時に、思い出す言葉がある。

一人ではどーにもならん事でもさ 誰かと一緒にがんばればクリアできる問題ってけっこうあるんだ そうやって力をかりたら次は相手が困ってる時お前が力をかしてやればいい 世界ってそうやってまわってるんだ

あのな 大事な事だぞ? いいか?

一人じゃどうにもならなくなったら誰かに頼れ でないと実は 誰もお前にも頼れないんだ

出典:羽海野チカ『3月のライオン』/第3巻Chapter32「夜を駆ける」より

もし、彼女が悩みを抱えていたら頼られたい。

彼女の悩みが解決するのなら、自分じゃなくてもいい。
頼る相手が家族や友達でも、ネットの誰かでもいい。
抱えている悩みによって、頼りたいと思う相手は変わるからだ。

ただ、家族や友達、誰にも話せない悩みがある時。
そんな時に、頼りたいと思える存在でありたい。

そのためにまずは、自分から頼ることを、これからも心がけていこうと思う。

***


読んでいただきありがとうございました。