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読書整理:都市を変える水辺アクション 実践ガイド / 泉 英明
memo
これは読んだ本に関する私的なメモです
有料設定ですが全文読むことが可能です
巻頭言
本書は、世界各地の水際で始められたまちづくりの動きを紹介、水辺から広がる都市再生のダイナミズムを俯瞰するものだ。(中略)各地の同志にとって、拠りどころとなればと願う次第である。
という感じで本書は、世界の動きと水都大阪の動きを取りまとめ、これから実践しようとする者に対して手助けになることを願い執筆された旨が、カチカチと書いてある。が、個人的には同時にあとがきを読むことを推奨する。
※私はあとがき先に読んでしまう癖があり…
この本は、我々と同じく、これから水辺を自分たちの暮らしの中に取り戻したい、そして水辺から都市をワクワクするものに変えていきたいという実践者の方々に届けたい。(中略)水辺から都市へ、楽しみながら動いていこう!
先に注意するが巻頭言とあとがきの執筆者は異なる。この時点でおそらく、歴史的記述と実践論の入り混じった本になると推察。執筆陣が伝えたいのは単なる水辺活用の重要性だけでなく、実際どう変えていくことができるか、ということまでがこの本のスコープだということ。
Chapter 1 水辺へのアプローチ
本書の説明。事例を、見つける/伝える/設える/育てる/広げるの5つに分類していること、また、水都大阪についてはこの5つの視点でどこに比重をおいたか時系列で可視化していることが述べられる。同時に、この本で書かれていることが水辺だけの話ではなく、その他の取り組みにも通じる部分があることに触れている。
Chapter 2 水辺を変えるアクション
case01 水上に出かける
水辺を外から見るのではなく、水辺から見ることを提唱。その手法としてSUPの相性が良いことに触れている。個人的には水辺を「入らないエリア」とする固定概念を、日常に溶け込むアクティビティにより自然に崩そうとしている試みに感じられた。
case02 アートで掘り起こす
アートという切り口が「地域資源を見つめ直す手法」として効果的であることを述べている。都市を復興させる一手段として、地域資源を掘り起こし、それをアートによって次の時代の価値を創造し、新しいまちの使いこなしかた(物語)を生むという考えである。
※個人的にはそれができるアートはかなり限られるのではと少々懐疑的
case03 川からまちを巡る
case01のアクティビティをより拡大し、水辺を交通網として捉えた場合の活用事例が掲載される。おそらく実行できる都市は限られるが、case02の地域資源の掘り起こしを商業的な目線で捉えている事例と解釈もできる。
case04 ムーブメントをおこす
水辺を中心に語られるが、基本的には水辺以外のプロジェクトでも参考となる人の巻き込み方の話。オープンかつ多様な参加機会があること、共感を産む仕組みがあること、そしてそこからコミュニケーションを生み出すことが重要と考えられる。
case05 物語を届ける
水辺には歴史があることが多いようだ。その歴史(時間の蓄積)には秘められた力があるという切り口で、case02の地域資源の掘り起こしを歴史という視点から行ったアプローチとも言える。
※個人的には歴史を理由に無理に保存しなくてもと少々懐疑的
case06 シンボルをつくる
世界の限られた最高事例の話なのでちょっと実感が…とはおもいつつも、以下の言葉がとても印象的であった。
現代都市が抱える課題はより複雑多様化し、スピード感ある対処が求められるようになった。(中略)市民の側に立ってみると、自らの生活がどう変化するのか、良くなるのか、悪くなるのかを見極めることができなければ、その賛意を問うことも難しい。
水辺の風景の変化は、このことを端的かつ劇的に表現してくれる。(中略)水辺を変えること、変わることは、次代の都市を表現する重要なメーセージなのだ。
つまり、かなり政治的な都合にも解釈しうるが、都市の変化を、そして都市の未来のポテンシャルを市民が感じろるチャネルとして、水辺ほど最適なものはないということである。正直それは確かにちょっとありそう(根拠はない)。
case07 居場所にする
国内の美しい場所の事例で、ある意味とても王道な手法の紹介。綺麗だろうなぁ(富山の事例は地元民として疑問も残るが)という感想だが、ここでもこの事例全体にかかる気になる一文がある。
どんなに美しく機能的に整備された空間(スペース)であっても、必ず人々が利用し、憩いや潤いを感じられる、身を置きたくなる場所(プレイス)になるとは限らない。
かなり建築やランドスケープ的な思想からの視点だと推測するが、つまりは「人はどのような形でその空間に関わるか」というデザインを欠かしてはいけないということと解釈する。そしてここまでのcaseを振り返るとよくわかるが、case01~07は全て水辺において人がどう関わっているかという話だった。これは水辺に限らず、いわゆるまちづくりという中では欠かせない視点になるのだろう。
case08 光で演出する
いきなりとても俗っぽいが、水と光と街は相性が良いという話。
case09 水際をデザインする
これはcase07をさらに拡大してランドスケープとして捉えた場合の話。よい公共性を意識した「居心地の良い場所」のデザインが必要であると語られる。
case10 プロセスを踏まえる
水辺には市民も民間も行政も関わっており、制度、管理、事業性が複雑に絡み合うため、社会実験などが必要であること、そして非常に長期の取り組みになることが示されている。
case11 ルールを共有する
case10に関わることで、実際にどのように水辺が運用さえれているかを掲載している。
case12 スキームを活用する
実際に北浜テラスを進める時のスキームや、広島かき船での規制緩和事例が掲載され、行政と民間、そしてその間に立つプレイヤーが必要だと語られる。
case13 境界をまたぐ
魅力的な都市の水辺は、人々の生活の中心として多様な使われ方を受容し、人々を結びつける場所なのではないだろうか。
水辺がどうしてポテンシャルを秘めた場所であると言えるのかについて、一つの解答といえるのではないだろうか。事例とともに水辺が都市におけるマルチファンクショナルな場所になりうると提唱している。
case14 マネジメントの仕組みをつくる
case12をより大きく捉えたスキームの事例が掲載されている。水辺のマネジメントではなく、水辺周辺のエリアマネジメントまで考えなければいけないと提唱する。
case15 水辺から計画する
水辺を含む都市計画について触れ、都市計画が水辺に期待をする理由を以下の2つにあるのではないかと考察している。
①都市に近接した未利用地
都市は水辺の近くにでき、過去水運などが発達したが現代は使われていないという経緯から、都心部に非常に近接しながらも活用のない未利用地となっており、潜在的なポテンシャルが高い。
②都市独自の景観を保有
都心部に近接しながらも見晴らしが良く市街地景観とは異なり、特異空間と化している。都心でも憩いや安らぎ得られる場として、次代に求められる用件に相性がよい。
Chapter 3 水都大阪の水辺ブランディング
詳細は本書に譲る。水都大阪にどのような歴史があるか、どのようなアクションを起こし、どのようなスキームで運用され、どのような体制になっているかということが細かく解説されている。年表とともに時系列を追うことも可能。
Chapter 4 水辺が変わればまちが変わる
世界中の水都の共通点、近代の課題、そして現在再度注目を浴びていることの解説からはじまり、本書の総括へ入っていく。
つまり、水都に暮らす人々の生活と水辺との関係性を、もう一度つなぎ合わせなければならない。散歩、憩い、ビジネス、観光、歴史文化、祭り、レクリエーション、交通、人の流れ、景観などあらゆる観点から、水辺と都市との関係を再構築するべきなのだ。
やはりここでも水辺だけで考えるのではなく、水辺と都市(人々の日常や非日常を問わず生活そのもの)の関係性がどうあるべきか考えることの必要性を説いている。また、ただ必要性を説くだけでなく、図(185p)を用いてどのように水辺と都市が断絶し、どのような方向性で関係性を回復しうるかを、やや抽象的ではあるが視覚的に示して本書の立ち位置も再度示している。
そして課題を解決していくためには、まずは多様なアクションにより水辺に対する人々の意識を変えていくこと、さらにその先にエリアマネジメントやシビックプライドの醸成、ビジネスモデルが欠かせず、多次元的に取り組みを粘り強く繰り返していくことによってのみ、小さなアクションから大きなうねりを生み出すことができると唱えて本書は終わる。
所感
水辺と言われて単純に川の近くと捉えていたが、「都市における水辺」の話であることを理解した。なかなかピンとこないのは、やはり自分の暮らすエリアにとっての水辺というのが、かなり規模の大きい河川になってくるからかもしれない。(もちろん本書に取り上げられている富岩運河もあるが)
一方で書いてあることは水辺の話だが、エリアがどうあるべきかという考えと受け取れば、かなり根本的に必要不可欠な考え方が記載されていたと思う。また、スキームや組織体制の話も、水辺に限らず応用しうるものであり、3章の大阪の歴史は今後見直す必要もあると感じた。
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