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釣具屋が怖い。けれど、本当に怖いものは?

ずっと、釣りに憧れていた。
けれど、出来ないでいた。
釣りを始めるには、竿やエサ、針など”道具”がいる。
けれど、それらを手に入れる事が難しい。
なぜなら、私は釣具屋が怖いのだ。

それで、ずっと心のすみっこで憧れつつも、
まぁ、別の事でも楽しいことで忙しいからと、触れてこなかった。

そんな折、厚木にある釣り具のブンブンは、
家電ショップのノジマの上にあり気楽な感じがした。
だから、それとなく立ち寄ることが出来た。

しかし、何から買ったらいいのかも、何を聞けばいいのかも分からない。
「サビキ」とか「ショアジギング」とかの謎キーワードと共に店内を埋め尽くす細々とした道具たち。
”同じ”にしか見えない竿が、大量に立ちはだかり、
値札の数字の高額さの意味も分からない。
釣り人と店員さんが、仲良く話をしている。

これらが全て
「釣り、分かってるでしょ?俺らみな常連!」前提な感じがして、
全然わかってない私は、疎外感を感じてしまう。

直ぐに逃げ出したい。
けど、釣りがしたい。

うう・・・釣り人眩しい・・・!
店内に入る事さえままならい私を助けてくれたのは
「SALE」の表記と共に入り口にたくさん並ぶ
”釣り具の初心者セット”
竿とリールがもうセットしてあって、
釣り糸と、小さなハサミや小さなタオルなど、これがあれば始められるよ!しかも、お値段3000円!みたいなセット!!!優しい!!!

早速おもちゃみたいなそれらを2セット購入し、海沿いを経由する九州への帰省を含めた車旅に出かけた。

瀬戸内や淡路島の美しい海!!港々で釣りをするんだ!!
釣れた魚を食べながら、実家へと帰省する、そんなイメージ。

あ❤

めっちゃ豊か!!!
釣り具に併せて、簡単な調理器具も車に詰め込んだ。

しかし、一度も釣りをすることなく、実家に到着してしまった・・・

真夏の眩しい太陽の下、海沿いの小さな釣具屋は、
一段と恐ろしいのだ…!

空の青!海のキラメキ!が鮮やかで眩しいのに反して
釣具屋の店内はとても暗く感じる。
そしてやっぱりよく分からない細々した道具の陳列が
「俺らの使い道、知ってんだろ?」と、圧をかけてくる・・・ 

妄想は逸る。

もし、この釣具屋の闇の中へ、道具たちの圧にめげずに飛び込んだとして、
結構メンタルは瀕死の状態だ。
そんな中、地元の釣りおじちゃんと店員さんが話し込んでいたりすれば、
割り込まないといけない。そうじゃないと、ただ飛び込んだだけになる。
「初めてなので何が分からないかも分からないのですが、
何が分からないのか、から教えてください・・・」

と、気力を振り絞って声をかけたとしよう。
想定できる返答は大きく分けては2つ。

<ひとつめ>「そうなのか!よし、丁寧に釣りをおしえたろ!」

こうなれば、あらゆる釣りの謎を解きほぐしていただき、
人の優しさに感涙「釣りは人と人を繋ぐ!」と、出会いに祝杯を挙げ
釣り人たちと肩を組み「海賊の歌」的な歌を高らかに響かせながら、
そのまま海まで一緒に行って爆釣!!最高の釣りライフのスタート!
一生糸を垂らしていく人生の幕開けだろう。最高だ!

きっと8割はこうだとおもう。けれど、残りの2割で

<ふたつめ>無視される。雑に扱われる。専門用語ばっかりで教えられる。

・・・この可能性があるのだ。
こわぁーーーー!!!!
一気に人間と釣り不信になってしまう・・・
おもちゃみたいな釣り竿をディスられ、高額な竿を売りつけられるかもしれない…「そんなんじゃ釣れねーよ!」と声が聴こえる…
「そんな悪い人にあたることはない」と自分に言い聞かせるのだけれど、
そんな妄想が走り出してしまう
ので、
眩しい海沿いの、闇深き数多の釣具屋を見送る、そんな海沿いの旅だった。

こういうネガティブな妄想は、ビビットだ。
人間は、傷つかないよう常に自分を守るため、
こうやってイヤな想像でわざと不安にさせて
行動を制御するようにできている。
釣具屋で”生まれたての好奇心”が潰されないように、
私の事を守ってくれているのだ。
なんだかちょっとありがたいような気持ちになるけど、
やっぱりちょっとありがた迷惑かもしれない。
と、同時に、この世界を信頼しきれていない自分の小ささに気づき、
”しょうもな~”
と笑えて来るのだ。
この世界で、「依存したりくっつくところ」と、
「切り離すところ」がもっと上手にできれば傷つかずに済むのかなぁ~

などと、長い運転の間に感じていた。
こういう、しょうもない自分を知ると、
勇気が湧いてくるのはなんでだろう?
挑戦未満の所で、くすぶっている感じが愛おしい。

あ、私はいい具合にプライドがあるし、プライドが低いのかもしれない。
もしかしたら、もっとプライドが高かったら、
「釣具屋に怖気づく自分や、行動できない自分、他人を疑う自分」
ダメ出ししたり、情けなく感じたりするのかもしれない。

釣具屋が怖いって言うより、自分のプライドが怖いのだ。

挑戦をしようとする事は、自分のプライドに気がつく。
けれどそれを脱がないと、前に進めない事が多い。
(もしくは感情のスイッチを切るか)
挑戦って、プライドの皮を脱いでいく事なのかもしれない。

そして、それを重ねると本当の自分に出会えるから
否定も肯定もなく、ただその自分の状態を愛おしく感じられるのだ。
挑戦って、宝さがしみたいだ。

釣具屋に抵抗なく入れるようになった時、
分からない事を”恥ずかしい”や”迷惑”と感じなくなった時
わたしはまた、プライドの皮を脱げちゃうのかもしれない!

結局、帰省後に
「釣具屋が怖すぎて入れない。父、一緒に行って」とお願いし、
初めての釣りを体験!

子アジの入れ食いで、アドレナリンがビシャーーー!!!!
サイコーーーー!!!!

溶鉱炉イケメン!!
小アジ1時間で36匹!

それから、数か月、釣りにハマっています。
釣りはスゴイ。
釣りは瞑想。
釣りは地球と繋ぐ糸。
釣りはアイデアのアンテナ。

つづく

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