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『ルームロンダリング』 #映画感想文

映画『ルームロンダリング』を観た。

そもそもは、崔洋一、廣木隆一、豊田利晃、中村義洋監督らの下で助監督を務めてきた片桐健滋が企画を考え、それを旧知の脚本家・梅本竜矢に相談したところ、梅本がそれを TSUTAYA CREATOR'S PROGRAM FILM 2015(TCP)に応募したのだそうだ。

その企画書が準グランプリに選ばれ、晴れて片桐自らの初演出、梅本との共同脚本で映画化したのがこの作品である。ちなみに、その時のグランプリが『嘘を愛する女』だ。

事故物件の不動産に住んでマネー・ロンダリングならぬルーム・ロンダリングをする若い女性がいたら──という、ほぼジャスト・ワン・アイデアから成立している企画である。

御子(池田エライザ)は“コミュ障”気味の霊感女子である。その御子を使ってルームロンダリングしている不動産屋が、どうやら御子の親戚らしい(終盤で正確な関係が明かされる)悟郎(オダギリジョー)である。

それぞれの事故物件に、自殺したパンクロッカー(渋川清彦)や殺されたコスプレOL(光宗薫)らが化けて出てくる。

一方で隣室には幽霊なんか全く見えないコンビニ勤務の亜樹人(伊藤健太郎)が住んでいたり、如何にも悪そうなブローカー(田口トモロヲ)がいて悟郎に何かと悪事を持ちかけるなど、それなりに面白い配置にしてある。

霊が見えるからこそ霊が怖くない、霊が見えるから霊がなついてくる、という、その辺りまでの設定は非常に巧いと言える。

ただ、もちろんディーテイルまでは読めないが、ああ、この人にも実は幽霊が見えているんだろうなとか、この人はひょっとしたら既に死んでいるんだろうなとか、この幽霊の未練はここで解決せずに最後に取っておくのかとか、その後の映画の組み立てが予想できてしまうのが惜しい。

つまり、頑張ってもうちょっと観客を欺いてくれたら、驚きも感慨も大きく深くなったのではないだろうか(ちょっと贅沢な期待かなw)。

でも、オダギリジョーと渋川清彦という本当に手練手管の俳優2人によって、とても良い芝居が組み上がっていて、却々に見応えがあった。池田エライザも、今までいろんなテレビ番組や映画で観てきたが、これはまさに新機軸である。

橋の上での長いワンシーン・ワンカットが2度か3度出てくるのだが、この橋の向こう側にもう一本鉄橋が掛かっていて、エライザと健太郎の台詞のやり取りなどお構いなしな感じで、電車が轟音を上げて通り過ぎるという場面構成がとても面白かった。

そもそも片桐監督がこの企画の着想を得たのは、中村義洋監督の『残穢 -住んではいけない部屋-』の現場だったと言うし、オダギリジョーと渋川清彦とは助監督として知り合ったと言う。

人と人とのつながりって本当に大事なんだなと思った。この映画も言わば人と人(霊?)とのつながりを描いた作品である(笑)

(この映画評は 2018年7月に自分のブログに掲載したものを、今回のお題募集に応じて少しだけ筆を入れたものです)


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