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「胃が痛い」と「お腹が痛い」を英語で言うと?

英語の勉強をしていて気がつきました。英語ではなんでもかんでも stomachache と言うんですね。

日本語では「胃が痛い」と「お腹が痛い」は全くの別物です。胃が痛いのは(ストレス性のものも含めて)胃炎だったり、胃酸過多だったり、胃潰瘍だったりします。それに対してお腹が痛いと言った場合は腸のほうで、大抵はお腹を壊しているということです。

めちゃくちゃ大雑把に言うと、お腹が痛い場合はトイレに行ったら治まる可能性がありますが、胃が痛い場合はその可能性がないということです。

お腹が痛くても stomachache

ところが、英語ではどうやらどちらも

I have a stomachache.

とか

My stomach hurts.

などと表現してしまうようなのです。日本人からしたら非常に奇異なことで、しかし、何人かのネイティブに確認してみたのですが、やはり「胃ではなくてお腹が痛い」ということを限定的に表す習慣がないらしいのです。

そう、必ずしも単語が存在しないわけではなく、胃ではなくて腸の部分が痛いと最初から明確に表現する習慣がないみたいなのです。

腸を表す単語:intestines

腸を表すものとしては intestines(通例複数形)という単語がありますが、これは医学用語と言っても良い、めったに使われない難しい単語です。まあ、日本語でも「腸が痛い」とは言わずに「お腹が痛い」と言いますしね。

腸を表す単語:gut

他には gut という単語がありますが、これは辞書的には「胃腸」「内臓」であり、腸だけを表す言葉ではありません。

日本語で言う「お腹」のことを lower gut とも言うらしい(従って「胃」は upper gut)ですが、これは僕が質問したアメリカ人が「敢えて区別して言うとしたら」という注釈付きで教えてくれた表現です。

ついでに書いておくと、gut には「内臓」以外にもたくさん意味があります。日本では「根性」や「胆力」を意味する複数形の「ガッツ」を想起する人が多いのでしょうが、英語だと「直感」の意味で使われることも少なくありません。

腸を表す単語:bowels

教科書などで目にする単語としては bowels (通例複数形)というのもあって、これも「腸」という意味ですが、こちらもまた医学用語として使われることが多く、bowel ache みたいな用例は見当たりません。

ちなみに bowels を英英辞典で引くと、

a long tube through which food travels while it is being digested after leaving the stomach

(Cambridge Dictionary)

とあり、この単語自体は明らかに胃を含んでいないことが分かります。

ちなみに和英辞典で「はらわた」を引くとこの bowel(s) が大抵最初に出てきます。そう言えば「はらわた」は「腹綿」とも書きますが「腸」とも書きますね。

腸を表す単語:belly

さて、それ以外にも belly という単語があります。これはお腹周り全体を指すようで、日本語の「お腹」に近い気もしますが、こちらもまた必ずしも「胃」を除外する表現でもなさそうです。

bellyache という単語はあるみたいですね。これは「腹痛」と言うよりも「おなかいた」(って、ひょっとして関西の子供しか言わない関西弁だったらゴメンナサイ)という感じかなとも思うのですが、辞書には「<話>腹痛、胃の痛み」とあり、どうも胃まで含んでしまっているようです。

腸を表す単語:tummy

幼児語(関西弁?)の「おなかいた」にもっと近いのは tummy ache で、これは辞書にも<幼児語>との註釈がついています。

ついでに書いておくと、おへそのことは(1単語で navel とも言うようですが)belly button とか tummy button と言うらしいです。

へそをボタンと捉える感覚がよく分かりませんよね?

再び stomach

閑話休題。

ま、要するに表現はいろいろあるし、stomachache と言ってから説明を追加すればそれが胃痛ではなく腹痛であることは伝わるのですが、しかし、彼らは雑駁に stomachache と言ってしまうみたいなんです。

stomach は限定的に「胃」を表す単語ではなく「お腹」まで含んでしまっているわけで、つまり、多くの日本人が単純に「stomach = 胃」と理解しているのは間違いだということですよね。

何しろ「妊婦さんのお腹が大きい」と言う場合に(通常は belly を使うようですが) stomach という単語を使うこともあるみたいですしね。英米人の stomach はなんとデカいんでしょう(笑)

しかし、考えてみれば日本人は安易に「胃が痛い」と言いますが、それは単に自分で多分胃はこの辺りにあると思い込んでいる辺りが痛いだけのことで、実際に胃が痛んでいるのかどうかは分かったものではありません。

話は変わりますが、stomach には動詞で「耐える」とか「我慢する」とか「許す」とかいう意味もあって、

I can’t stomach politicians who are like chameleons.

みたいな使い方をします。can't stomach って、日本語で言うなら「腹に据えかねる」みたいな感じの表現ですね。

ちなみに、日本語の「はら」には「肚」という漢字もあって、「はらに据えかねる」とか「はらが立つ」とか「はらを決める」など、腹部ではなく心の内を表す場合は、こちらの字のほうが相応ふさわしい気がします。

英語では stomach が「胃」だけでなく幅広い部分を指すのに対し、日本語では「胃」ではなく「はら」がいろんなことを表していて、この辺の違いも面白いです。

appendix

余談をもうひとつ。僕も最近知ったのですが、盲腸のことは appendix と言うのだそうです。これはちょっとびっくりでした。なるほど、英米人にとっては盲腸は大腸の「巻末付録」でしたか!

いやいや、この文章で最後に盲腸を取り上げたこと自体が巻末付録みたいなもんですね(笑)

ではまた。

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