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変わる言葉と広告表現

広告には規制があります。中にはあくどいことを考えている企業もあるので、そういうあくどい商法に消費者/ユーザが騙されないためです。

だから、逆に言うと、規制を守っている広告は、「ウチはあくどい商売はしてませんよ」という証明でもあります。

考えてみれば、私が会社に入った頃の CM考査は大変厳しくて、いろんなCM原稿/素材を差し戻して改稿を要求したものです。

それが次第に緩和されてきたのは、テレビ局も収入が減ってきたので少々ヤバいところでも受け入れるようになったからだという見方があります。まあ、確かにそういう面も全くないとは言い切れません。

でも、そういうこととは関係なく、単に世の中が変わってきて、言葉の使い方も変わってきたために CM考査も変わらざるを得なかったという面もかなり強いです。

例えばウチの会社では、昔は「絶賛発売中」とか「好評発売中」という表現は全て謝絶していました。理由は単純で「売ってる奴が自分で絶賛するな!」ということ。絶賛するかどうかは買った人に確かめないと分かりません。好評という表現も同様です。

ところが最近はどうでしょうか? 一般人がおどけてよくこの表現を用います。「恋人絶賛募集中です」とか「企画書絶賛作成中です」などと。

この表現が使われ始めた当初は、多分自分で絶賛しているところが何気におかしく、よって自分を茶化すという目的があったと思われますが、今はまるで枕詞みたいに何の意味もなく使われています。

そんな世の中になってくると、「絶賛発売中」という表現を NG にしてしまうと広告主が納得してくれません。いつの間にかこの表現はなし崩し的に OK になったみたいです。

だから今は映画会社が映画公開前に「大ヒット上映中」という CM を安心して作れるのです。でも、大コケしている映画が「大ヒット上映中」という CM を流しているのを見ると、さすがに笑けてくるのですが。

ただ、最上級表現にはいまだに規制があって、「売上ナンバー1」とか「顧客満足度○年連続第1位」みたいな表現は、どこのどのデータに基づくのか、小さな字でも良いので CM内にその根拠を示すよう求められているはずです。

もっとも 15秒で終わる CM 内に小さな字で示されても多分読みきれないでしょうから、行く行くは局に対してその根拠を示すだけで良く、必ずしも映像内に明記する必要なないという風に変わってくるのではないでしょうか(ひょっとしたらすでにそうなっているのかもしれません)。

いずれにしても、CM考査は各局が独自の基準で行っています。従って広告主からすれば、同じ CM素材であっても、A局では受け入れてくれたのに B局には改稿要求されたなんてことはザラにあって、よく揉めます。

それが局の自主性であり独立性なのかもしれませんが、私自身は仕事の効率化と基準の明確化を考えれば、もうそろそろ全局で1つの考査組織を持つ体制に変えて行ったほうが良いのではないかと思っています。

言葉も仕事のやり方も、変わって行って然るべきだと思います。

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この文章の前段、と言うか、姉妹編みたいなのがこの記事です:


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