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小説とかドラマとか映画とか

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他のマガジンに含めていた映画評や書評などを抜き出してここに独立させました。
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2021年10月の記事一覧

東京国際映画祭の吉田恵輔監督作品 その3『空白』

10/30 に始まった #東京国際映画祭 にちなんだお題企画 #映画感想文 に乗っかる形で、昔、ファーストランの時に見て自分のブログに書いた記事に少し手を入れてここに転載します。 取り上げたのはいずれも東京国際映画祭で上映される吉田恵輔監督の3作品です。第3弾は『空白』。 空白【2021年9月29日 記】 この脚本はすごい。ちょっと書けないと思う。 (最後までは書いていませんが、今回はちょっとストーリーに触れすぎているかもしれないので #ネタバレ にご注意ください。これ

東京国際映画祭の吉田恵輔監督作品 その2『BLUE ブルー』

10/30 に始まった #東京国際映画祭 にちなんだお題企画 #映画感想文 に乗っかる形で、昔、ファーストランの時に見て自分のブログに書いた記事に少し手を入れてここに転載します。 取り上げたのはいずれも東京国際映画祭で上映される吉田恵輔監督の3作品です。第2弾は『BLUE ブルー』。 BLUE ブルー【2021年4月13日 記】 吉田恵輔の監督作品はここまで全部観てきたが、いくつかの彼の作品では、ラブコメだと思って観ているとある時点から突然スプラッタ・ホラーに一変したりす

東京国際映画祭の吉田恵輔監督作品 その1『ヒメアノ~ル』

10/30 に始まった #東京国際映画祭 にちなんだお題企画 #映画感想文 に乗っかる形で、昔、ファーストランの時に見て自分のブログに書いた記事に少し手を入れてここに転載します。 取り上げたのはいずれも東京国際映画祭で上映される吉田恵輔監督の3作品です。第1弾は『ヒメアノ~ル』: ヒメアノ~ル【2016年6月10日 記】 この映画が前半と後半で印象がガラリと変わることは予告編を見て知っていた。 前半は無邪気にコメディと言っても良い内容である。その中心は安藤さん(ムロツヨ

映画の見方──カメラの動きを意識してみる

私は自分が観た映画の評を自分のブログにこつこつと書き溜めています。 私の書いた文章は、なんか、時として偉そうに見えるらしいのですが、決して教えてやるとか自分の見方が正しいとか、そんなつもりで書いてはいないので、もしそんな風に見えたらゴメンナサイ。 そう、映画やドラマの見方に良いも悪いも正解も不正解もなくて、みんながそれぞれ好きな見方、感じ方で見れば良いと思っています。 ただ、ひとつだけ言うと、映画は映像芸術なのだから、スジを追うだけではもったいないなあと思っています。

圧倒的な小説──デリーロとパワーズ(後編)

(前編のドン・デリーロはこちら) リチャード・パワーズパワーズは今のところ7冊読んだ。最初に読んだ『舞踏会に向かう三人の農夫』(1985)は彼のデビュー作で、もう訳分かんないお化けみたいな小説だった。大著だし話は交錯しまくるし、読むのが非常に苦しかった。 いまいち消化不良のまま終わった『舞踏会に向かう三人の農夫』に比べて、次に読んだ『ガラテイア2.2』(1995)は明快なストーリーがあって解りやすかった。 とは言え、読んでいる途中で、と言うか、1ページ目の最初の行からし

圧倒的な小説──デリーロとパワーズ(前編)

僕は基本的に面白いから本を読んでいる。読んでみて面白かったからさらに別の本を読むのだ。何かのためになるからという読み方はあまり好きではない。 いろんな本が読みたくなる。主に小説だが、評論や、時には数学書なども読んだりもする。面白い本、知的好奇心を満たしてくれる本、胸に突き刺さる本…。 そんな中で、重い本が読みたくなることがある。そんなときは大江健三郎だ(もう長らく読んでいないが)。そして、「重い」と言うのとはちょっとニュアンスが違って、「圧倒的な」本を読みたくなることもあ

減らず口のミステリ──本格ミステリ・ファンでないあなたに

#海外文学のススメ 用に、もうひとつ、昔書いた文章をアレンジしてみた: クレイグ・ライスミステリ──昔で言う推理小説・探偵小説の類をよく読んでいるかと聞かれると、僕の答えはノーということになるだろう。特定の作家の特定のシリーズしか読んでいないからだ。 考えてみれば、自分で言うのも変だが、多分僕はミステリそのものが好きだと言う訳ではないのだろう。 実際、読んでいても誰が犯人だろうかなんてあまり考えてもいない。トリックやアリバイ工作や名探偵による謎解きにもあまり興味がない。

野球小説の白眉――W.P.キンセラ

以前 note に『セックス小説の本流(いや、奔流?)』という文章を上げた。かつて自分の個人HP に書き、それを書き直して他のサイトにも投稿した文章だ: それで、それ以外にも、以前同じような読書に関するまとめエッセイを書いていたのを思い出した。それも最初は自分の HP に書いた4編の文章をひとつにまとめたものだった。 それは野球小説について書いたもので、主に W.P.キンセラを取り上げた記事だった。 今回 note に #海外文学のススメ というタグがあるのを発見して、