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薪割り初体験で思い出した伯母からの贈り物

「おりゃ~!」
「パカーーン」

5月から、森林ボランティアの活動で薪づくりを始めた。

間伐作業ででた樫の木を玉切りして長さを揃える。そして玉切りした切り株を斧で割っていくのだ。
硬い樫の木でも、伐りたてほやほやであれば意外と簡単に割ることができる。

……。たぶん、簡単に割れる。

ベテランの皆さんは簡単に割っているので、たぶん私にもできる。
……。
……。
いや、割れない。
薪割り初体験の私は、簡単には割ることができなかった。

初めは空振り。
お次は斧ではなく、斧の柄で切り株を思いっきりたたいてしまった。
周りは苦笑い……。

「えいっ!!」
気合いを入れて斧を振り下ろす。
今度は丸太の端に当たったものの、表皮が少しめくれただけ~。

正直疲れてきて逃げ出したいと思った。
でも、諦めなかった。
何度も斧を振りあげ、そして振り下ろし……。

しばらく試行錯誤を続け、腕と肩の筋肉がパンパンになったころ、突然その時がやってきた。

「パカーーン」と気持ちのよい音とともに、カシの丸太が真っ二つに割れてくれたのだ。

『やったー!!』

心のなかで飛び上がって喜ぶ私。

そんな私の気持ちを知ってか知らずか、容赦なく次の丸太を薪割り台に乗せてくれる優しいベテランの方。

……ありがとうございます。
おかげで、薪割りをマスターできます。

そして、翌日からしばらく、両腕は筋肉痛で使い物にならないのだった。


それから二週間後。
次の薪割りではすぐにコツを思い出し「パカ~ン! パカ~~ン!!」と、軽やかな馬の足音のような気持ちの良い音を立てて薪割りが出来るようになっていた。

森林整備を初めてから、私は今回の薪割りと同じ様な体験を何度となく味わった。

子供の頃、初めて自転車の補助輪を外してひとりでこぎ出したような体験を……。

鋸の使い方もそうだ。
鋸で木をきることなんて簡単だと思っていた。しかし実際にやってみると、ベテランの方々と同じ速さで伐ることは到底不可能だった。
ただ力一杯に木を押さえつければいいというものではなかった。むしろ逆だ。力を抜くように軽く鋸を引くことで切れ味を発揮するのだ。
このことに気付くまで、ひと月はかかった。

『能力は努力することによってのみ、つくられる』

私が中学生になったときに、伯母がくれた一枚のピンク色のしおりには、毛筆でこの言葉が記されていた。
私は当時、何故だかとても大切な言葉だと感じ、日々しおりを見つめながら心に刻んだ。この言葉を、50歳目前の今でも大事にしている。

そう。努力無くして何事もできないのだ。産まれてはじめてまたがった自転車をスイスイ乗りこなせる人などまずいないのだ。
体格に恵まれた大谷翔平くんだってそうだ。これまでにどれだけ野球のために時間を費やしてきたことか。
目指す姿をイメージし、何をしたらよいか考えて目標に向かって諦めずに努力をし続けること。
これこそが、スキルアップの王道なのだ。

思い返せば冒頭の薪割りだって、もし、途中で諦めていたら、きっと一生『夢の中でしか薪割りが出来ない人』だったことだろう。

行き詰まったときは「諦める」のではなく「作戦を練りなおす」ことにしよう。
自分で創意工夫するもヨシ。ベテランに助言を求めるもヨシ。
「諦める」は“悪し”である。

『能力は努力することによってのみ、つくられる』

伯母が亡くなって4年が経ったが、この言葉は今も変わらず私の中で生き続けている。

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