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2020年ドラフト事情② 大学生編

どうも、やまけん(Twitter:@yam_ak_en)です。「2020年ドラフト事情」第2回となる今回は、大学生編です。
高校生編はこちら

2019年のドラフトでは1位指名を受けた大学生は森下暢仁(投手・明治大学→広島東洋)1人のみでしたが、来年のドラフトの中心は大学生になりそうです。

“目玉”こそいないものの…

来年の大学生ドラフト候補市場では、特定の選手1人が所謂“目玉”になる雰囲気はありませんが、全体的に候補は揃っているという印象です。上位指名候補の選択肢も豊富で、各球団の状況に最適な選手を獲得しやすいドラフトになることが予想されます。中央球界・地方球界ともに好選手が揃っていることも特徴のひとつにあげられるかもしれません。

投手

この世代といえば、2016年夏の甲子園優勝投手である今井達也(作新学院→埼玉西武)や既に日本トップクラスの支配力を誇る山本由伸(都城→オリックス)、更に今年ブレークした種市篤暉(八戸工大一→千葉ロッテ)など高校からプロの世界に飛び込み活躍している投手が多いのが特徴として挙げられます。甲子園出場組である今井、未出場組である山本や種市がそれぞれ活躍していますが、今年の大学生投手市場も甲子園出場組・未出場組ともに好投手が揃っています。

甲子園出場組のトップとして挙げたいのが早稲田大学・早川隆久です。2年春、3年春、3年夏と甲子園に3回出場し、3年夏には2試合連続完封をやってのけその後のU-18日本代表にも選ばれました。高校のときにも既に上位指名の噂がありましたが、名門・早稲田大学野球部の門を叩く決断をしました。

早川隆久(早稲田大学)

高校時代は130キロ台後半から140キロ前半のストレートを丁寧にコーナーに集めるピッチングで打者を打ち取っていた早川ですが、大学ではスケールアップして現在は最速150キロ、常時144キロ前後を計測します。それに伴い変化球の威力も増していて、高校の時の変化の大きいスライダーに加え130キロ台で曲げる高速スライダーもリーグ戦で時折投げています。縦変化の多いチェンジアップで空振りを奪うシーンも多く、来年のナンバーワン左腕と言っていいでしょう。この夏には日米野球を戦う大学日本代表に選出され、森下とともに先発投手として活躍、2試合9イニングを投げて自責点0の好投で最優秀投手賞を受賞しています。

順調そうな大学キャリアを積んでいるように見える早川ですが、リーグ戦の成績を見てみると実はそうでもないと言わざるを得ません。打線の援護に恵まれないこともありますが、通算7勝12敗は彼本来の実力を考慮するとやや寂しい数字です。試合を見ていると、好調時は淡々と相手を抑えるものの突如ランナーを貯めて大量失点することがあり、その点が現状の課題ではないかと思います。最終学年は主将として迎えることが決まっている早川。勝ちに拘り、ドラフト1位で競合されるレベルの投手になっていただきたいです。

他に甲子園出場組のドラフト候補としては、東洋大学・村上頌樹が挙げられるかと思います。智弁学園時代に2016年のセンバツで優勝を経験した右腕は、強豪ひしめく東都一部リーグで常に安定した投球を続けており、上位指名も十分望めます。

甲子園出場組のトップが早川であるなら、未出場組のトップは東海大学・山﨑伊織ではないかと思います。スリークォーターの角度から投じられる最速153キロの速球と2種類のスライダーの質が高い右腕です。

山﨑伊織(東海大学)

正確には彼も高校時代には明石商業で2016年の春に甲子園に出場しているのですが、当時の主戦は吉高壮(現・日本体育大学)が務めており、控え投手だった山﨑は登板のないまま甲子園を去っています。しかし素質の高さは高校時代からプロのスカウトに評価されており、その後進学した東海大学で素質が開花し現在では来年を代表する投手の1人に成長しました。好投手揃いの首都大学リーグにおいても存在感を発揮し、早川と同じく日米野球の日本代表に選出されています。

横に曲がるスライダーは一級品ですが、それに加えて縦の変化球の精度を高められるかが鍵になりそうです。現状スプリットなどを投げているものの見極められることがあり、この精度次第で1年目から即戦力として活躍できるかどうか、プロ側からの評価も変わるかもしれません。この秋に肘を痛めてしまいましたが、来年は春からフレッシュな状態で投げて今年以上の存在感を発揮していただきたく思います。

六大学、東都、首都と中央球界に好投手が揃っていることは伝わったかと思いますが、来年は地方にも魅力的な投手がたくさん揃っています。鉄球のようなストレートを投げ込む苫小牧駒澤大学・伊藤大海やモンスター級のエンジンを搭載している仙台大学・宇田川優希、九州では大瀬良大地(広島東洋)以来の逸材と呼ばれる北九州市立大学・益田武尚など、上位指名の可能性がある投手が各地に散らばっているため、各球団の部長級のスカウトは全国を飛び回ることになりそうです。

野手

一方の野手はというと、やはりこちらも例年に比べて豊作と呼べるのではないかと感じます。特に来年の野手はセンターラインの候補が多く、また長打力があり大成したら打線の中軸を打てるポテンシャルを持った打者も揃っているため、将来的にチームの「核(コア)」を担える選手が多いのが特徴です。

そんな野手の中で各球団のスカウトが最も熱心に注目しているのが近畿大学・佐藤輝明です。なんと言っても日本人離れしたパワーと打席での存在感が持ち味で、所属する関西学生リーグでも既に11本塁打を放っています。

佐藤輝明(近畿大学)

インパクトの瞬間のバットの音は他の選手とは異質の音で、多少心を外されても軽々と外野を越える打球が飛びます。メカニクス等では説明がつかない末恐ろしさがある選手です。高くて美しい放物線を描くタイプ、角度をつけるのが上手いタイプというわけではなく、強くて速いライナーがそのままフェンスを超えてスタンドに着弾するというタイプの打者です。

破格のパワーという魅力的な武器を持っている裏で、確実性に乏しいのが現状の課題と言えるでしょう。2年次に選ばれた日本代表では日米野球とハーレム国際野球大会の5試合13打数で1安打、先日愛媛県で行われた大学日本代表選考合宿でも紅白戦で凡退を繰り返すシーンが多く見受けられました。故障の影響で3年秋のリーグ戦で打率を.188まで落としてしまいましたが、2年春秋と3年春は打率3割をマークしているため、最終学年ではもう一度復活して確実性と対応力の面でもアピールしていただきたいです。
守備位置は主にサードです。大学2年から守り始めたものの、現在では無難に守ることができています。しかし187cm92kgの身体の割には俊足で肩もまずまず良いため、将来的には外野に置くのがベターな気もします。

中央球界にも上位候補はいます。中でも筆頭格として挙げられるのは中央大学・牧秀悟です。1年次から名門・中央大学のレギュラーに定着し、3年春に首位打者(.400)、秋には最優秀選手賞を獲得した実力者です。

牧秀悟(中央大学)

下半身の土台が安定してスイングがブレず、強いリストを活かして左中間、右中間に打球を弾き返します。打者タイプとしては二塁打を量産する中距離打者と呼ぶのが一番近いかと思います。チャンスでの打撃にも定評があり、3年春・秋ともに14打点でリーグ最多打点を記録しています。
2年次まではショートを守っていましたが、下級生ショートを起用するため3年からはセカンドに回っています。しかしこのセカンド守備もハンドリングが柔らかく球際にも強いため、非常にレベルが高いです。強肩で深めにポジショニングできる点も強みです。なお、ショートも決して失格というわけではなく無難にこなせます。

強いて課題を挙げるとすれば、二遊間としてはアジリティ(俊敏性)が並レベルであるという点でしょうか。ただし、これだけ安定して打てる二遊間の選手もなかなかいないので、競合を避けて1位で指名するという球団が出てくる可能性は十分にあります。

2019年のドラフトでも豊作だった捕手ですが、来年も上武大学・古川裕大を筆頭に選手が揃っています。古川は関甲新リーグで既に通算11本塁打、二塁送球も1.8秒台を記録します。俊敏性も高いのが特徴で、上武大学ではオープン戦等でショートを守ることもある異色の選手です。打撃を中心に三拍子揃った捕手として上位指名が見込めます。また、ショートにも好選手が揃っており、強く正確なスローイングと球際に強い守備が持ち味の東北福祉大学・元山飛優や巧みなハンドリングとステップワークに長ける國學院大学・小川龍成、アクロバティックで俊敏性の高い九州産業大学・児玉亮涼など、高い守備技術を凝った選手が揃っています。彼らが一堂に会する大学日本代表のシートノックは、それだけでお金を払えるレベルです。
佐藤のようなロマン系長距離砲も候補は多く、東海大学札幌キャンパス・赤尾光祐桐蔭横浜大学・渡部健人らが挙げられます。赤尾は神宮大会での大阪商業大学戦で、いずれもプロ入りした大西広樹(東京ヤクルト)、橋本侑樹(中日)からタイムリーヒットを放っています。粗さもありますがスケール感で言えば佐藤と双璧でしょう。渡部は2年春・秋にリーグで打率.400超をマークしたものの、3年シーズンでは成績を落としてしまいました。しかし柔軟なリストで打球を運ぶ能力は天性のものを感じ、最終学年で再び花開いてもらいたいと思える選手です。175cm110kgの重量体型ながら次の塁を狙う走塁意識が高く、守備も柔らかなハンドリングでこなす姿はまさに「おかわり君二世」と呼べます。
また、「サニブラウンに勝った男」としてすっかりお馴染みになってきた中央大学・五十幡亮汰は冗談抜きに歴代最速レベルの走力と走塁技術を持っており、足から相手を崩すことのできる貴重な選手です。

最大値の活躍を継続できるか

ここまで、来年の大学生ドラフト候補について書いてきました。全てのドラフト候補に言えるのですが、下級生のときからドラフト候補に挙げられる選手は、例えば「あのとき投げたボールが良かった」「あのときのホームランが凄かった」と、いわば最大値の活躍を評価されてリストアップされます。しかしながら、最終学年では当然以前よりも注目を集めますし、担当スカウト以外にもGMや編成部長、スカウト部長といったドラフト指名の権限を持つ上司クラスも視察に訪れることが増えます。その場でもいつもと同じ自分のプレーをしてアピールをすることができるか、悪いなら悪いなりに自分をアピールできるかが鍵になるかと思います。
投手、野手ともに将来チームの顔、球界の顔を担える可能性のある選手が揃っているだけに、より一層のアピールに期待したいです。

前回同様、大学生の注目選手リストを掲載します。人数の都合上、載せたくても載せられなかった選手もいるので、そういった選手は是非皆様が現地で発掘してくださると幸いです。

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