そもそも「薬草」とは何か?
広辞苑(第七版)によれば「薬用に供する植物の総称」を指します。薬草研究者・植物学研究者で、岡山市半田山植物園の園長の柴田映昭氏は以下のように説明しています。
「生薬」とは植物由来の薬のことで、植物の葉、茎、根などや鉱物、動物の中で薬効があるとされる一部分を切る、乾燥する、蒸す、といった形で加工したものです。漢方薬の原料や民間薬として、疾病及び傷害の治療に用います。人類は歴史に残っていないほどのはるか昔から、体調が悪い時には順調になるような薬を求め、薬草を用いてきたと考えられています。世界中で現在も多くの人々の疾患の治療、病気の予防、健康の維持や向上を実現している一方、柴田氏は以下のようにも記しています。
製剤との違い
伝統的な医療や民間療法では薬草そのものや、生薬を組み合わせた形で薬として用います。しかし、いわゆる現代医学では通常、有効成分を取り出し、不純物を取り除き精製した「製剤」の状態で使用します。製剤の方が効果が高くなることが多く、衛生的であり、品質が安定するため合理的な判断といえます。
また、医師が治療目的で製剤を使う際や薬剤師が効果効能を表示して販売する医薬品には厳格な審査があります。どのような疾患に効果があるか?科学的な根拠はあるか?しっかり身体に吸収されるか?成分表示に偽りはないか?等、厳重な審査を経た製品でなければ、医薬品として人に投与したり流通させることができません。先進国はどこも似たような仕組みがありますが、日本ではPMDAによる審査を経て厚生労働大臣が医薬品の承認を行います。(参考1)
薬草の魅力と大麻
では、薬草の魅力とは何でしょうか?その歴史や自然由来という点は多く語られますが、「身近さ」もその一つです。大都会にある公園などでも、多くの薬草が見つかります。例えば、利尿作用や消炎作用が期待でき、天ぷらとして新芽を食べることもできる「ノアザミ」。ダイエットや動脈硬化予防が期待でき、お茶としても有名な「ドクダミ」。胃の粘膜保護が期待でき、ステロイド様物質も含む「ヤマノイモ」、美味しいトロロご飯にもなります。
実は大麻も、身近な薬草の一つです。「身近な薬草の一つだった」という過去形がより正確かもしれません。花や葉はリラックス効果があり、種は便通作用があり、七味唐辛子にも入っています。70年ほど前には日本にも多くの大麻の繊維を栽培するための農家がありましたが(参考2)、それを民間薬として用いていた記録が残っています。
「なんとなく調子が悪い」「痛みを緩和したい」といった際にも利用され、適応症が広いため、世界的に「大麻という薬草」の見直しは急速に進んでいます。ご存知のように現在の日本では厳格に規制されていますが、メディアや行政などを巻き込んだ国民的な議論となる日は遠くないと感じます。
2022 09/17