屋久島の山岳信仰と岳詣り
山岳信仰は、有史以前から行われてきた自然崇拝の一種で、山岳民族が雄大な自然に対して抱く畏敬の念、感謝などから発展した宗教形態と言われています。屋久島では古くから山岳信仰と言います。島民の山に対する思いや考え方は特別です。
そのひとつが「山ん神祭り(やまんかんまつり)」と呼ばれ、 年に3回、旧暦正月・五月・九月のそれぞれ十六日に執り行わています。
屋久島の各集落(一部行われていない集落もあります)では「岳詣り(たけまいり)」と言って、年に1回~3回、集落毎の祠に詣でます。
平野では、年に一回(9月)に五穀(ごこく)豊穣(ほうじょう)、家内安全を祈願して御岳に詣でます。第二次世界大戦中は、奥山に参詣(さんけい)していたが、現在は前岳(平野権現様)のみ参詣しています。
所願(ところがん=集落の代表者で、岳参りの責任者)が、朝早く、海から砂と海水を採取、集落で採れた農産物などの奉納品、米、塩、酒(三岳焼酎)と共に神に捧げます。
所願のお祈りに続いて、同行した区民、ひとりひとりが祠に手を合わせ、集落の安全や無病息災、豊漁豊作などを祈願して、お神酒をいただきます。
お参りの後、祠から少し登り進んだところに平野集落を一望できる場所があり、眺めを楽しむことができます。
昔は平野集落の海岸でも漁をしていたそうです。子供の楽しみは学校から帰ってから海に出て、魚や伊勢海老、「磯もん」と呼ばれるアワビなどのを獲って楽しんでいたと言います。
岳詣りは1年に1度、海の砂を山の神にお返しする意味もあります。山も里も海も水でつながっています。生態系が崩れたら、全てに影響します。これを年に一度、考えるいい機会ではないでしょうか。
残念ながら今年も昨年同様、今年も新型コロナ感染症の影響で役員のみで執り行う予定です。