薬師寺文夫のブランデーケーキ物語
今から80年以上前、昭和16年のこと、大分県臼杵市の小さな漁師町に薬師寺文夫という少年が生まれました。彼は次男として生まれ、幼い頃に大分市の親戚の家に丁稚奉公に出されました。その親戚の家は「かちどき」という菓子屋で、文夫は毎日朝から晩まで菓子作りと雑用に明け暮れる日々を送っていました。
ある日、文夫の勤勉さを見込んだ師匠が、「福岡で菓子の大会があるから勝負しに行くぞ」と声をかけました。兄弟子たちがいる中で、文夫は唯一の助手として第1回全九州山口県菓子展示大品評会に参加するこ