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人事・上司に伝えたい、トランスジェンダーの僕が「胸オペ」をしてわかった3つのこと

社会人7年目のトランスジェンダー男性が、「胸オペ」の経験を通じて、切実に職場に伝えたい3つのことをnoteにしました。

①「結構楽な手術なの?」→NOOOOOOO!

そもそも「胸オペ」とは、胸を平らにするための手術。主にトランスジェンダー男性がする手術で、乳腺摘出・乳房切除等を指します。タイ等海外で手術をする人もいれば、国内の総合病院やクリニックで手術をする人もいます。

身体の負荷が大きく、また周囲に開示しづらい手術だからこそ、手術前後できちんと体調管理できるよう、ぜひ制度/職場理解の双方の視点から人事・上司のサポートをいただけましたら嬉しいです。

②1週間後に仕事復帰は、かなりしんどい。(人によるけれど)

「デスクワークなら1週間後には仕事復帰できる」と言われがちな胸オペ。しかし、私自身術後の経過が良くなかったこともあり、1週間後は胸に溜まった血を抜くための器具をまだ刺していて、起き上がる等日常所作もまだ痛い状態。電車でつり革は持てないし、満員電車で人が胸にぶつかってきたら..と考えるだけでも激痛が走ります。
人により術後の回復は異なりますが、手術を受けるまで状況がわからないからこそ、長めの休暇取得もしくは休暇の延長を柔軟に相談できる体制にしていただけるとありがたいです。また、術後であっても痛みが伴い、1ヶ月は胸を固定するバンドを巻いて生活をするため、仕事復帰後も体調不良にも対応していただけましたら幸いです。

③「胸オペします」は言いづらい。また周囲に勝手に言わないでほしい。

公私ともにトランスジェンダー男性であることを100%の人たちにカミングアウトしている私にとっても、「胸オペのため休みます」と伝えていたのはごく僅かの人のみ。個人的な理由ですが、私にとっては「胸オペします」≒「実は今は胸あるんですというカミングアウト」であるように感じていたからです。10代からずっと胸の膨らみを潰すシャツを着ているのは、胸の膨らみがある自分の身体に違和感があるからであり、もちろん周囲にも知られたくないから。だからこそ、一緒に仕事をしている人たちに、「胸オペします」≒「実は今は胸あるんですというカミングアウト」を伝えることは心理的ハードルが高く、あまり言いたくありませんでした。あくまで個人的な理由ですが、それくらい「胸オペします」という情報はプライバシーの高い情報です。

特に、職場で人事や上司にのみトランスジェンダーであることを伝えている場合、休暇の理由が胸オペであると他の人に伝わってしまうことは、その人がトランスジェンダーであることを暴露してしまっていることに等しく、アウティングにつながります。

また、周囲にトランスジェンダーであることを伝えている場合であっても、その人の身体の状態を周囲に勝手に伝えることは避けてください。「〇〇さん胸オペで休むのでみんなサポートしてあげてね」などと、周囲に伝えないでください。

人事・上司ができる3のこと

ここまで読んでいただきありがとうございます。「なにかできることあるかな?」と思っていただいたあなたに3つのことを紹介します。

①もっと知る

トランスジェンダーやLGBTの職場での対応についてまとめた良書はたくさんあります。読んでいただいたり、周囲に勧めていただけましたら幸いです。

1)トランスジェンダーと職場環境ハンドブック(日本能率協会マネジメントセンター)

2)法律家が教える LGBTフレンドリーな職場づくりガイド(法研)

3)ケーススタディ 職場のLGBT(ぎょうせい)

4)職場のLGBT読本(実務教育出版)

また、手前味噌ではありますが、私が代表を務める認定NPO法人ReBitでは、企業向けの無料冊子を配布しています。こちらからお申し込みください。

②性別適合手術等に休暇制度を活用できるようにする

キリン株式会社さん、スターバックスさんをはじめ、胸オペや性別適合手術といった医学的措置の際、休暇取得ができることを明言する企業が増えてきました。トランスジェンダーだけの特別な休暇をつくる必要はなく、すでに御社内にある有給休暇制度をトランスジェンダーの医学的措置の際にも使用できるようにし、明記するだけで十分相談がしやすくなります。

③相談があった場合に、職場でできることを整理・明記する

野村グループさんの「トランスジェンダー対応ガイドライン」、日本精工さんの「NSKトランスジェンダーも働きやすい職場づくりに向けたガイドライン」をはじめ、トランスジェンダーの社員から、戸籍と異なる性別で勤務したい、性別適合手術を受けたい等の相談があった際の、会社の対応方針と利用できる制度をまとめたガイドラインを策定する企業が増えてきました。トランスジェンダーの職員から相談があった場合、名刺の名前は通称名に変えられるのか、トイレや更衣室等ハード面は希望に沿って使用できるのか、戸籍上の性別を変更した際の社内手続きはどうしたらいいのかなど、事前に検討をいただくとスムーズに対応できることがたくさんあります。

その際、ご検討いただきたい事項や好事例はトランスジェンダーと職場環境ハンドブックにまとまっていますので、ぜひご参考にされてください!..と大事なことなので2回言わせていただきました!!!笑

でも何より、「胸オペするので休みたい」と相談できる人事・上司がいてくださること、そして、トランスジェンダーの胸オペというニッチな記事を読んでいただいたアライのあなたがいることこそ、トランスジェンダーにとって安心して働ける職場なのではと思います。

ぜひ誰もが自分らしく働ける職場が増えますように。ご一読いただきありがとうございました!


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