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世界の裏側を「掻く」〜異世界風土記企画「祝」の宣伝

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2020年に開催されたイセカイフドキ(@fudokift)さんの競作企画「祝(いわい)」の宣伝と、参加作品への寿ぎを記すためのマガジン。手触り感のあるユニークなWebファンタジー…
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記事一覧

20.12.11【異風祝感想 #3】全ての命は二度生まれる。魂が二度死ぬことを定められたように。 〜園田 樹乃『卵を抱く』を読む

 卵は見かけによらず、神話的な作用を持っている。インドや中国、エジプトやフィンランドの神話では世界の始まりに宇宙卵があり、それが割れることで天地が分かれたとする記述がある。  これは意外にも世界的に共通したモチーフらしく、これを鳥へと変身譚や卵生譚にまで派生すると、ギリシャ神話の愛の化身エロースやレダが生んだ双子の兄弟と双子の姉妹、韓国(新羅)の朴氏赫世居、本邦のヤマトタケル(死後白鳥へと変身する)なども含まれる。  また、寓話として有名なのはイソップ寓話の「金の卵を生む鶏

20.12.09【異風祝感想 #2】境界に立つものは、きっとどちらの側にも付けない。 〜いときね そろ『翡翠の子』を読む

 少し矛盾する話かもしれないが、ファンタジーの魅力とは異世界の住民その人には存在しない。これはかの『指輪物語』の作者でもある言語学者・神話学者のJ.R.R.トールキンがハッキリと明言していることでもある。 「実は、フェアリー、または近代英語でエルフともいう生きものについての話は割合少ないし、概してつまらない。おもしろい妖精物語というのはたいてい人間が危険いっぱいの妖精王国で夢のような旅をする冒険の話だが、妖精は出てこない」と。  当然だろう。なぜなら、もし妖精がほんとうにい

20.12.04 【異風祝感想 #1】片手を握れば拳になる。両手を合わせれば祈りになる。 〜那識あきら『渡座《わたまし》の祈り』を読む

 以前告知したイセカイフドキさん(@fudokift)のファンタジー競作企画「祝」について、せっかく参加したし面白そうな作品があるだろうと思って読んだらどれもこれもが面白い。みなさん描写が丁寧だし世界観の掘り込みがうまくてドキドキしますね。  僭越ながら、自分も負けじと参加しておるわけですが、せっかく参加した企画なことですし、僕も面白い作品を面白いと言いたい!  ということで、以降しばらく各作品の魅力をいろんな知識を参照しながら感想を書くという暴挙に出ます。  ファンタジ

20.11.16【近況報告】ファンタジー好き必見! 異世界風土記さんの競作企画「祝」に参加します。【競作企画のご紹介】

 こんばんは。最近投稿日の夜にエントリを出すことで習慣が定着した八雲ですが、本日はやや早めに投稿します。  今回は創作者としての近況、および他所で現在盛り上がりを見せようとしているファンタジー系競作企画のご紹介をさせていただきます。  みなさん、ファンタジーはお好きですか?  僕はもう幼少期からテレビゲームとしてのRPGやその原典となった多くのSF・ファンタジーを読み漁ったおかげで、今でも楽しく読んでます。  特に上橋菜穂子さんの『精霊の守り人』のシリーズや茅田砂胡さんの