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【データサイエンス】医療AIって進化してる?【医療✖️AI】

こんにちは, ヤク学長です. 今回は最新のAIが医療にどこら辺まで介入できているのかリサーチです. 「画像認識」, 「地理情報」,「産まれる前の新生児情報」,「薬物の分布予測」など機械学習によって進歩した未来の一部をご紹介. 

スマートフォンを用いた大麻中毒者の検出

米スティーブンス工科大学, ラトガーズ大学などの共同研究チームがスマートフォンを利用し, 大麻中毒者を特定する「機械学習モデル」を構築した記事のご紹介. 
⭐︎Drug and Alcohol Depedence誌に収載された記事⭐︎

【方法】
ペンシルベニア州ピッツバーグの少なくとも週に2回以上の大麻使用がある若年成人(18-25歳)を対象として, 最大30日間に渡るデータ収集を行った. チームは大麻酔いの程度を3段階に分類したようである. 酔っ払っていない, 低度, 中等度に識別するグラデーションブースティングマシン(LGBM)で複数の機械学習モデルを検証した。

※LightGBMとは決定木アルゴリズムに基づいた勾配ブースティング(Gradient Boosting)の機械学習フレームワークである. 訓練データの特徴量を階級に分けてヒストグラム化するので, 計算コストを抑えることが可能です. 

【結果】
大麻中毒者をスマートフォンのセンサーを用いて検出することが可能とした. 
精度としては「時間」を特徴量に組み込むことで, 90%の識別精度を達成したそうだ. 

薬物過剰摂取による死亡の正確なマッピング

米国では注射製剤の薬物使用者は, HIVやB型・C型肝炎ウイルスへの感染、薬物過剰摂取による死亡(ODD)など, 多大な健康リスクを抱えている. この注射薬物使用者の識別は, 薬物使用に伴う死亡を低減するために欠かせない. 
米疾病予防管理センター(CDC)などの研究チームは, この注射薬物使用者とODDを正確に捕捉する機械学習モデルを開発した. 

論文よると, Dynamic Overdose Vulnerability Estimator(DOVE)と呼ばれるこの新しいモデルを構築したらしい. Googleのウェブ検索ボリュームを活用し, 米国内における薬物過剰摂取による死亡の評価とマッピングを達成したという.

【方法】
2004年から2017年の間に報告されたODD率と薬物関連の用語検索に強い関連性があることを確認した研究チームは, 機械学習モデル(Extremely Random Forest)を用いた. 2017年に報告された70,237のODDが報告されていたが, DOVEモデルを用いると66,463の予測結果が出た. 実に94.48%の推定に成功しているそうだ.

【結果】
DOVEモデルによるODDのマッピングは, 注射薬物使用者間における潜在的な死亡傾向をタイムリーに特定できる. 脆弱なコミュニティに対する効果的な介入ができるのではとしている.

出生前の情報を用いてAIで新生児の薬物離脱症候群を予測

米テネシー州ナッシュビルのヴァンダービルト大学の研究チームの記事.
出生前の情報から新生児薬物離脱症候群(NAS)の発症を予測する機械学習モデルを開発した. 
実は, 胎児は妊婦の影響を受けやすい. 妊婦による薬物・嗜好品の摂取はその一部が胎盤を通過するため, 出生後の新生児に薬物離脱に伴う禁断症状を誘発することがある. 米国ではオピオイド乱用が広範にみられるため社会問題となってきた. 

【方法】
The Journal of Pediatricsに掲載されたチームの研究論文.
合計21万にも及ぶ, 妊婦とその出生児記録からアルゴリズムの構築を行った. データセットのうち, 実際にNASを発症した新生児も3,000を超えるという貴重なデータである. 妊婦属性のほか, 出産前30日間における薬物や嗜好品などの曝露量からNAS発症を予測する機械学習モデルを導出した. 2種のモデルで実験を行ったという. 

【結果】
2種のモデルで実験を行ったがいずれもAUCで0.89と十分に高い識別精度を示している. 特に低リスク新生児の検出効果を強調している. 

米国小児科学会(AAP)の推奨では, オピオイド曝露が考えられる新生児はNAS発症を監視するため, 通常より3-4日程度入院期間が延長されている. 今までは入院に伴うコストの増加や, 初期の母子間のコミュニケーションの短縮などが問題視されてきた. この新しい評価モデルは, 周産期医療の質の向上や医療費の適正化に期待ができる. 

薬物の輸送システム研究(DDS)へのAI利用

薬物輸送システム(DDS)は、投与した薬物の体内での展開を最適化し, 必要な部位に必要な時間だけ作用させることを目指す学問である. 
薬物作用の最大化と副作用の軽減にも大きな役割を果たすものであるが, 実験で得られる情報は常に不十分なことが多かった. それは, 正確に評価するためのパラメータを漏れなく抽出することが困難だったからだ.

イタリア・パドヴァ大学などの研究チームは, 人工ニューラルネットワーク(ANN)と数値シミュレーション, 機械学習モデリングを組み合わせたハイブリッドアプローチを行った. 

【方法】
Computers in Biology and Medicineの8月号に収載されたチームの研究論文. 
「がん」を標的とした抗腫瘍効果の物理的モデル因子を導出するための新しい手法を提案している. 腫瘍の成長と薬物輸送に数理モデルを設定し, 実験結果を統合し構築モデルへフィードバックを繰り返すことで, 信頼が高い予測ツール構築を目指している. 

【結果】
まだ模索中だが, 信頼性の高いモデルができる日もそう遠くないのだろう. 

抗がん剤治療は本来の標的である悪性腫瘍だけではなく, 正常細胞までを障害する危険性が高い. これを回避することは非常に難しいが, 高度選択的に悪性腫瘍細胞「単独の排除」を実現するゴールを目指している. 


このように「画像認識」の進化は, 皆さんが普段使用しているスマートフォンのカメラに組み込まれ応用がされつつある. 尿検査などの手間のかかる検査の前に簡便にカメラで検査をする未来がくるかもしれない. 「地理情報」の蓄積とマイニングによって人口動態の操作も実現は近い.

「産まれる前の新生児情報」が分析可能ということは、生まれてくる後の子供がどんな病気を発症するのかも予測可能になる. 「薬物の分布予測」が可能になった未来では, 現在の完治が難しい病気に対してもアプローチが可能になるだろう.

これらの機械学習モデルは指数関数的に成長していくため, あっという間に人類の叡智を超えていくだろう.



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