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合唱宗教戦争と都市伝説

「信じるか信じないかはあなた次第です」
都市伝説などでよく出てくる言葉である。

これは、何も本当かどうか疑わしいものだけでなく、全ての物事に通じると思う。
政治的なところはよく分からないのであまり具体的には出さないが、何は人体に悪影響だとか、何は国を滅ぼすだとか、そういう話題は日頃ニュースで溢れかえっている。
そんな大きな話でなくても、もっとふんわりと「これは良い/悪い」という話は大抵、絶対的な正解は存在しない。

これは合唱団においても同じ。
どんな音楽をしたいのか?どんな指揮者がいいのか?何を目指すのか?
これらは全て、個人の価値観の話であって、絶対的に良い/悪いというものは存在しないと思う。
自分がいいと思う音楽をするのが幸せだろうし、自分が良いと思う指揮者・指導者の元に付くのが(あるいは誰の元にも付かないのが)幸せだろうし、目指したいものを一緒に目指せる人と活動するのが幸せだと思う。

ただ、「自分が思う良さ」を信じて疑わないと、それは戦争の火種になっていると感じることが多い。
例えば、コンクール。以前も記事(https://note.com/yakou1000_k/n/n06dad0d068c4 )を書いたが、自分がいいと思ったものの評価が低かったり、自分が悪いと思ったものの評価が高いと、そこに不満を覚える人が多い。
ただの暴論のような誹謗中傷に怒る分には仕方ないことだと思うが、中には健全な批判に対しても不満を表明する人が多い。
1番分かりやすいのは、コンクールに参加した団体が、自分たちに低い評価をつけた審査員を叩くような行為だろう。よっぽど酷い審査員でなければ、審査員は(自分の主観的な価値基準に則っているとはいえ)客観的に評価をするはずである。講評を見ても、「何が良くて何が良くないのか」というようなことを書いている人が多い。(または、当たり障りのない褒め言葉を書いていることが多い。どちらにせよ根拠なく感情的に叩くようなことはしていないだろう。)
建設的な批判を受け取らないのは、成長から最も遠い行為だ。ましてや建設的な批判をしてきた相手を攻撃するのは、とても視野が狭いのではないだろうか。

なぜこうなるのか。
1つ大きいと思っているのは、「自分たちがやろうとしていることの価値を信じる」という思想を、「自分たちがしてきた成果物の価値を信じる」という思想に履き違えていることがあると思っている。

どういうことかを説明する。
前者の「自分たちがやろうとしていることの価値を信じる」というものは、「実際に実現できたか出来てないかに関わらず、『目指すもの』を信じる」ということだ。実現できたかどうかは関係なく、どうありたいかという未来を信じている。未来を目指す途中では、目指しているものには到底及ばないような成果物も産んでしまうだろう。しかし、その先にある未来を信じる。産んでしまった副産物も未来のための礎だとして、ひたすら未来を目指す。

反対に、後者の「自分たちがしてきた成果物の価値を信じる」というものは、「自分たちはこれをやろうとしたから、途中の成果物もそれを体現している」と思い込むことだ。客観的な評価は関係なく、主観的に「実現できている」ことにする、いわば過去を信じる思考回路だ。だから、「これこれこういう理由で未熟」という、仮に実現したいことに向かってもらうための批判であったとしても、「自分たちの傑作を馬鹿にしやがって」という感情になる。
これは何も演奏だけではなく、組織運営のあり方を考える文脈でも「今までこうしてきたんだから」というようにして現れる考え方でもある気がする。

この2つの思考回路は、「自分たちの歩む道を信じる」というような文脈では非常に似ているが、似て非なるものである。
前者は柔軟に成長して行けるし、戦争も起きないのに対し、後者の思考に陥ると成長はそこで止まり、戦争の火種を辺りに撒き散らす。

実際には、途中で生み出した成果物は、良いところもあれば悪いところもあるだろう。良いところは良い、悪いところは悪い、と真っ直ぐ向き合って、「これからどうするか」という未来を考えるのが、健全な成長という文脈では大事になるだろう。
戦争にならないためにも、「自分たちは目指す未来に到達できているのか?」ということを常に問い直す謙虚さと、「あなたはあなた、私は私」という多様性の尊重を身に染みつかせる必要があると思う。

相手が何を信じるかは相手の自由である。相手が信じているものを貶すことはつまり宗教戦争の始まりである。それは不幸な結果にしかならないので、「あなたはそれを信じるのね、わたしはこれを信じるよ」という平和を実現するために、お互いが努力するべきなのではないか、と思います。


この記事もまた、ただの1つの価値観。
信じるか信じないかはあなた次第です。

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