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子どもと一緒に大きくなる。リーダー育成と子育ての共通点

メンバーとして活躍していた人が、次のステップとしてリーダーになっていく過程において、乗り越えるべき2つの課題として「業務範囲の拡大」「価値観の転換」というのを以前紹介しました。

「業務範囲の拡大」は、「Get things done」の「things」が量的に増えることにあたる。出張費申請に対する承認などの社内手続き的なものから、部下の評価業務など多岐に渡る。いわゆる「管理職」という役職に対して、業務分掌上付与される「作業」が増えることを指している。

(中略)

一方、「価値観の転換」は、自分に求められているものが、「Get things done」(「自分で」物事を成し遂げること)から、「Getting things done through others」(「他者を通じて」物事を成し遂げること)へと、変化しているという現実に「気づく」こと、そしてその新しい現実に適応するために、自身の価値観を「変えて」いくことを指している。

「やることが『増えて』大変」と言っているうちは、自分に求められているものが質的に変わったことを自覚できておらず、第一の成長課題にとどまっている段階なのだ。「やることが『変わって』大変」と言えると、第二の(そして本丸の)成長課題に進んでいる証拠と言える。

「メンバーを育てる」ことで「リーダーが育つ」職場を目指して | 『対話型OJT 主体的に動ける部下を育てる知識とスキル』』より

「価値観の転換」について、私自身が達成できるかと聞かれれば、怪しいところは多分にあります。でも一方で、「価値観の転換」の入り口である《変化しているという現実に「気づく」》というところについては、子育てという経験を通して、身を持って体感しています。

正直、子育ては楽しいことばかりではなくてイライラすることも多い。
でも、物事を思い通りに進めて、より良い成果を出すこととは違う価値があることを知るはず。
解決策は自分が変わることです。
育児は長期戦なので、その挫折は早ければ早いほうがいい。
もし、あなたが仕事ができる男性ならなおさら、その落差は大きいかもしれない。
でも、取り乱し慌てる余裕のないあなたは父親になろうと進化している姿だと思うのです。

これからパパになるあなたへ 育児は働き方を見直すチャンス!』より

いかがでしょう。《違う価値があることを知る》という戸惑い。それを乗り越えるなかで《自分が変わる》。リーダーへの成長における《価値観の転換》の必要性と、同じ構図が子育てには隠されています。

自分と世界を主客として分離して、〈コントロールする自分〉と〈コントロールされる世界〉の対立構造のなかで日々過ごす。「大人になる」とか「仕事ができるようになる」ことの一部は、こういった主客分離と地続きになっています。

でも、それだとぶつかる壁がある。壁が、いつか向こうからやって来る。

自分と世界が溶け合って、というか、自分が世界に飲み込まれて、なにが自分なのかわからなくなって。そういう無力感や喪失感のなかで立ち上がってくるのは、〈変わっていく自分〉と〈変わっていく自分を受け入れていく(しかない)自分〉。

少し時間がたって、無力感や喪失感が薄まり、飲み込まれるのではなくて、たどたどしいながらも乗りこなせるようになったとき、そこにいるのは〈変われる自分〉です。

主客の対立構造ではなくて、「すべてが主」という包摂でもって世界と向き合えるようになると、目に映る景色は変わります。ある企業では、一定以上の役職に就くためには異文化体験/異業種体験を必須としており、そのなかには「育児」や「介護」が含まれているそうです。

〈変える自分〉と〈変えられる世界〉という主客分離から、〈変われる自分〉への価値観の転換。

価値観の転換という成長課題においては、《取り乱し慌てる余裕のない》様子は、《進化している姿》なわけです。

そんな目線があると、リーダーになろうともがいている本人はもちろんのこと、リーダー育成という施策を打とうとしている人材育成担当者にとっても、目に映る景色が変わってくるのではと感じています。

2020年9月にFacebookへ投稿した文章を加筆修正のうえ転載したものです。

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