あの頃の定番。

毎日自宅にいると、今まであまり手をつけていなかった部分が気になってくる。

なんとなく読んでいなかった本を整理しながら読み直したり、はたまたもうだいぶ使っていないなと感じた物を処分し始めたり。

目に入っていなかったのか、目に入れないようにしていたのか。
その理由は定かではないが、今になってまとめたくなる衝動に襲われるのだから不思議だ。

もしかしたら、時間があると人は過去を見つめ直す傾向があるのではないかしら…と、考え方まで少し哲学的になったりもする。

あまりにハマりすぎると、
「宇宙はどうなっているのだろう…人はなんで生まれたのか…。」
と、途方もない想像の旅に出かけてしまうので気をつけるようにしている。

整理していると、実家から数枚持ってきた懐かしい写真たちがいた。

大変若い。（当たり前）
そして、心なしかキラキラした目をしている。
あの頃の自分と対面するのは、なかなか衝撃的である。

この写真もデータ化して、思い切って紙媒体とはさよならしようか…と、考えながら1枚1枚を見ていると、高校卒業〜大学入学あたりの写真で手が止まった。

よく見ると、手にはPORTER（以下ポーター／吉田カバン）のタンカー BRIEFCASE。
2000年代前半の学生の間で一時期かなり流行り、今でも人気の老舗メーカーだ。
入学祝いで買ってもらったものだった。

吉田カバン

昨年で創業85周年！老舗中の老舗。

同世代の人なら、きっと「ウンウン。」と頷いてくれると思うのだが、あの頃は本当にポーターを持っているのがトレンドみたいな感じだった。

今みたいにそこまでインターネットが充実していた訳ではないので、雑誌を読んで憧れの芸能人が着こなしている姿を見て、取り入れてみる。
それが私たちの流行源だった。

ちょうど高2の終わり位だったと思う。
同じクラスのサッカー部の友達が、いち早くポーターのリュックを登下校時に使用しており、
「えぇぇぇ！制服にもめっちゃ合うね！」
と、鼻息を荒くさせながら見せてもらったのを覚えている。

公立高校だったけれど、あまり校則も厳しくはなく、制服の着こなし方はみんなそれぞれ個性を出していたように思う。

カチッとした学生鞄にローファーというスタイルよりも、スニーカーにリュックなどを組み合わせ、みんなで参考にしあっていたのも懐かしい。

私は高3の夏までガッツリ部活をしていた関係で、卒業までのほんの数ヶ月の間に全力で高校生の着こなしを楽しむと決めていた。
その中の一つに、「ポーターの鞄を使う」もしっかり入っていたのだ。

ただ、なにせ老舗のしっかりした鞄メーカーの商品。
大人になった今ならお金に物を言わせることができるが（物にもよるが…）、学生には大変高価な鞄だった。
アルバイトはできなかったので、高校生の間はちょっと難しいな…と、諦めていたのである。

憧れを持ったまま、もうすぐ卒業か〜と思っていると、大学の入学式用にお祝いで鞄を買ってくれると母が言ってくれた。
迷わず、「ポーターの鞄！」と即答したのを覚えている。

念願のポーターを手にしてからというものの、ずっと持ち歩くシュミレーションもしていた。それ位、嬉しかった。

高校生の間にはできなかった分、大学入学〜卒業まで、相棒としてポーターの鞄は大活躍だった。
社会人になっても使用していたが、途中で弟に引き継がれ、これまた彼の大学生活も支えてくれたのである。

あの鞄は、今も実家の私がいた部屋にいると思う。
懐かしくなって吉田カバンのHPを覗いてみると、あの鞄はしっかりラインナップに入っていて、もちろん今も定番商品だ。

手にした多くの人たちを支えている歴史があるから、その商品は定番になるのかなと思っている。

当時は、「流行っていたから」という単純な理由で手にしたけれど、今ならその背景が見えてくる。
きっとポーターは、手にした瞬間からずっと私の中で不動のポジションなのだ。

さて、今度はどのポーター鞄にしようかな…。
あの頃と同じワクワクした気持ちで、商品ページを見るのだった。

【皆さんの定番メーカー　教えてください！ 】
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