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アニメ『ストレンジドーン』(STRANGE DAWN)雑記

ネタバレあり

本当に不思議な作品であった。

小説を書いているような根暗でうだうだした一応女子高生とtheギャルが一緒に(召喚されて?)異世界に転生したところから物語は始まる。

まず、この二人の組み合わせは非常に奇妙だ。

はじめに言っておくと、彼女たちが元の世界でどのような生活をしていたのかは全編を通じてほとんどわからない。であるから、この二人がなぜ一緒に転生したのかと言うこともわからない。2000年のアニメらしくギャルが援助交際をやっているような演出も少々あるが、結局全くわからない。

では何が描かれるのかと言えば、それはこの全くあいいれない二人がこの不条理な状況と性格が真反対の相手に対してブツクサ文句を垂れながらとりあえず一緒に異世界で過ごす様子である。根暗の方は状況判断がうまくできず、ギャルに毎度詰められ泣きそうになっている。ギャルはと言えば、状況を受け入れず、相手のことを思いやらず本音を撒き散らすため、場の空気をいつも最悪にするのである。では離れて生活すれば良いではないか、というと寂しいしなんだかんだ一緒にいたいと言う。とにかくどっちつかず何かしたいと言うこともなく、視聴者さえもイライラさせる状況ばかり見せるのである。こういうのはたいてい、百合としての需要があるだろう。しかし、私も最初はそのように見てみようと試みたのだが、そう思い込むにはあまりにも仲が険悪だし、元の世界の関係性の情報も少なすぎてあまり入れ込むことができなかった。これは私の百合受容度が低レベルのせいであるかもしれない。

異世界アニメといえば、チートでモテモテで、というのが定番の昨今だが、ここまで書けばこのアニメはそんなものでは全くないというのがわかるだろう。
だが、チートといえばチートであるといえなくもない。異世界の人物たちは日本語を話し、我々と同じような生活をしているのだが、小人なのである。つまり彼女たちが本気になって暴れまわればすぐにこの世界なんて服従させることは簡単なのだ。だが、このアニメでは話が幼女戦記などのように野心的になることはない。なぜなら再三書いているように、この物語において彼女たちはただこの世界に順応できず、ギャーギャー文句を垂れて喧嘩ばかりしているだけなのだから。

ちょっと付け足すと小人の世界では戦争が起きている。小人の思想がそれぞれ分かれていて、現実世界のように時たまぶつかり武力闘争に発展する。だが、女子高生らにとってはどうでもいいことだ。何より彼女らはすぐにでも元の世界に帰りたいので、これに巻き込まれることは真平なのである。が、「大きい」ことを理由に戦争に利用されざるを得ない。「巨人が味方である」と標榜したり、「巨人を派遣するぞ」と脅したり。このアニメ唯一の起伏である。だが、この利用についても毎度なかなか徹底しない。なぜなら、大きい存在である彼女たちがちょっと大声を張り上げてギャーギャー喚けば小人たちはビビってしまって利用どころではなくなるからだ。彼女たちには敵も味方もありゃしないのである。

この物語は女子高生らが叫び喚めいてるうちにいつの間には数話進んでいる。毎回そうなのである。

圧巻なのは最終回だ。戦争をあくまで遂行しようとする小人たちに呆れ果て全てが嫌になった彼女たちは、彼女たちが召喚されたであろう神聖な祭壇的なところで、喚き散らし大声を張り上げる。そして、あろうことかその神聖な祭壇的なものをギャーギャー言って破壊し出すのである。しかも、話数が足りなくなったのか、叫びながら元の世界に戻っていくのである。帰りたいと願い叫べば元の世界に戻れる異世界アニメなんてこれからもこの先も生まれることはあるまい。

なんだこのアニメは、と思いながらもなんだかんだ毎回観てしまう。そんな魅力がある物語であった。

「戦争に対する女の真の叫び」「女子高生の反戦的主張」
こういうふうに捉えることもできるのかもしれないが、そんなことはこのアニメに関しては野暮としか言えないように思う。
異世界に言って文句を言いまくる女子高生のエモい本音。現実世界では全く触れ合うことのないであろう二人のイライラする関係性。これぞアニメ『ストレンジ・ドーン』の魅力であるように思う。

このアニメはサブスクで配信されているとはいえ、全く有名でない。それゆえに感想なども少なくどう言うふうに捉えれば良いのかもわからず困惑している状況だ。私がよく参照するフィルマークスの視聴数も二桁台とかなり少ない。とはいえ、WOWOWの一押しアニメであったと言うこともなんとなく確認されているので、当時を知る人の感想なども聞きたいものだ。

あまりに露悪的に書き過ぎてしまったし、万人には勧められないとは思うが、面白いのでもっと多くの人に観てほしいと思う。

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