デザイナーと10年以上仕事をしてきて、喜ばれたディレクターの3つの心得
こんにちは。ディレクターの桑原です。
Web業界では、一言で「ディレクター」と言っても、企画を盛り上げるプロデューサーよりの方、関係者を取りまとめるディレクターよりの方がいると思います。本記事での「ディレクター」は後者の計画を立て、関係者をまとめ、案件をスムーズに着地させる立場の方のことを指しています。
デザイナーに依頼をすることが多いであろう、ディレクターや営業という職業は、人により非常に個性が出る職種だと思います。そして、その個性は尊重されるべきだということを前提に、今回の記事を執筆しました。
「上手くデザイナーさんと意思疎通が図れない」「コミュニケーションが難しい」と感じた非デザイナーの方々、いらっしゃいませんか?私は全く絵心がありませんし、デザインについて専門的に学んだこともありません。
しかし、長年共に仕事をしている上で「桑原さんがディレクター担当だと、仕事がスムーズです!」「デザイナーとのコミュニケーションがうまい!」というお褒めの言葉をいただく機会が多いので、皆さまのお役に立てることがあるかもしれない、と思い、今回記事にすることにしました。
前置きが長くなりましたが、デザイナーと長年仕事をしてきて、喜ばれたディレクターの3つの心得、ご紹介いたします。
1つ目:「信頼する」デザイナーはデザインのプロ
デザイナーに制作を依頼している時に、どこまで意見を言うべきでしょうか?自分の意見を言いすぎて、やりづらくなったり、意図しないクリエイティブになったことはありませんか?
依頼をした以上、責任感を持ち、依頼主が満足するアウトプットに着地させることは一番死守すべきことです。その責任感から、依頼主のイメージや既存クリエイティブから、制作中のクリエイティブについても、あれやこれと口を出したくなることもあるでしょう。特に、細かい色や形、フォントなど。
しかし、デザインに知識がないのであれば、心を鬼にして「信頼して任せる」ことが大事です。デザイナーはデザインのプロであり、知識と経験を基に、依頼されたクリエイティブを制作しています。そこに、デザイン知識のない素人が、色や形をどうこう言うのは控えた方が、混乱を招かず、かつ最良のクリエイティブが出来上がることが多いです。
では、丸投げ状態にせずに、どうクリエイティブに介在すれば良いのか。それは「目的とスケジュールに沿ったクリエイティブになっているか、しっかりと管理をすること」です。これこそ、案件をスムーズに進捗させるディレクターの本質と言っても過言ではありません。
・依頼主の要求、要望に沿っているか
・達成したい目的を達せられるクリエイティブになっているか
・ルールを守っているか(レギュレーション規定など)
・遅延していないか
・オリジナル性が生きているか
5点目の「オリジナル性が生きているか」は、業界やシーンによって求められる場面(そして求められない場面)があると思います。デザイナーの持ち味とクリエイティビティを発揮できる点であること、そしてモチベーション高く楽しくお仕事をしていただくための重要なポイントであると考えており、いつも大事にしています。一緒に仕事をしていると、デザイナーそれぞれの持ち味、得意なデザインが分かってくると思います。依頼された内容から外れない範囲で、ぜひデザイナーの力を信用し、提案を活かしてはいかがでしょうか?
自分を信じてくれた相手には、信頼を抱きますし、気持ち良く次も仕事をしよう、と思いますよね。人間の心理は、アウトプットにも影響してきます。自社のプレゼンスを上げ、かつ依頼主に満足していただけるクリエイティブになる近道です。
2つ目:「明確にする」掘り下げて、分解する
先日、若林が書いた リモートワークのテキスト表現 デザイン脳で効率化 はお読みいただけましたでしょうか?リモートワークの現場だけではなく、デザイナーと仕事をするときには心がけておきたい点です。
依頼主からのオーダーは時に定性的です。
「目立つ感じでお願いします」というような抽象的なオーダーの場合、判断に迷う時もあるかと思います。そういう時は、恐れずに具体的な内容をヒアリングして深掘っていきましょう。
・制作物の目的は何か(広告業界であれば、出稿の目的)
・ターゲットは誰か
・何を一番目立たせたいのか
・(改善依頼であれば)どこをより良くしたいのか
・(改善依頼であれば)どこに違和感を感じているのか
上記はヒアリング項目の一部ですが、具体的に聞いていくことで、本当のオーダー目的がハッキリしてきます。ヒアリングした内容を基に、デザイナーへの依頼内容にさらに細かく分解していきます。
オーダー例)「目立つ感じでお願いします」
ヒアリング結果:目的はキャンペーン訴求。一番目立たせたいのは新商品。キャンペーンのキャッチコピーも入れたい。商品イメージに沿ったデザインで、確実にバナーを押してもらってサイトに誘導したい。
デザイナーへの依頼方法は、若林の記事にもあったように、要点を箇条書きで依頼すると分かりやすいでしょう。
依頼方法:新規案件のバナー提案をしたいので、提案モック制作をお願いします。
・締め切り:○月×日
・クライアント:A社
・訴求内容:新商品のαの販売開始キャンペーン訴求
・達成したいこと:より多くのユーザーにクリックしてもらって、サイトに誘導したい
・バナー要素:企業ロゴ、新商品画像、キャンペーンキャッチコピー
・要望:商品イメージに沿った色やテイストでお願いします
クリエイティブにどのような情報が必要か考え、依頼内容を自分でできる限り分解することで、デザイナーの立場に近づくことができます。オーダーをそのまま伝えるだけでなく、「デザイナーの立場に立って考えて伝える」ことで、質問されやすくなったり、ディスカッションしやすくなります。少し追加の時間を割いてでも、関係者の立場に立てるようになると、お互い業務がやり易くなります。
3つ目:「気付く」待たせない。先回りする
非デザイナーはデザイナーに依頼をする立場であることが多いと思います。クライアントや代理店の間に立ち、窓口になる立場です。
依頼主から断れない「急な追加依頼」「急な修正依頼」が発生すること、よくありますよね。デザイナーからも「貰った素材が開けない」「要件が不足していて作業が進められない」という相談も多いかと思います。そこで数時間や半日置いてしまったら、制作現場はどうなるでしょうか?作業が止まったり、依頼主からの急な依頼が反映しきれず、信頼を損ねる場合もあります。
それらを避けるためには「気付き」「先回りする」ことです。
「気付く」ためにすることは、非常に簡単です。
・自分宛のメール通知はONにする
・Slackの通知はONにする
・関係するやり取りは、こまめに状況を見に行く(例:Slackチャンネルを確認する、メールフォルダを確認する)
気付いたことに対して、行動することで、問題になる前に「先回り」して解決します。必要な関係者にパスを投げる、資料を調べる、確認する、など、些細な行動が、先の案件の進捗や関係者の気持ちに影響してきます。「そんなことしてたら、気が散って集中できないよ」という声、分かります。常時ONにするのではなく、一定時間毎に確認する、というのでも良いでしょう。大事なのは「放置しないこと」です。
ディレクターの仕事は、関係者が気持ちよく働き、案件をスムーズに進捗させていくことにつきます。ご自身なりの配慮の仕方を見つけて、しなやかで迅速に動ける術を見つけると仕事がやり易くなると思います。
まとめ
「喜ばれるディレクターの3つの心得」この3点は、対デザイナーでなくても、一緒に仕事をするどの相手にも通ずることかと思います。基本的なことですが、自分が業務に追われていると、見失いがちになるかもしれません。気持ち良く仕事をし、最高の結果を出すためにも、今からでも少し意識をしてみてはいかがでしょうか?