見出し画像

究極の営業は「断りやすい営業」

結構前からKindle unlimitedに加入している。月額いくらかを払うと、指定されたKindleの電子書籍が無料で読み放題になる、というやつである。

実際のところ、話題になっているような本もあるにはあるのだけれど、本屋ほどにはラインナップは強くない。しかし、電車の中や、ちょっとした列で待っているときなど、スキマ時間で本を読むことができるので、割と重宝している。

スキマ時間に読んでいくので、通して読まないと意味の通らない小説などではなく、気軽に読めるビジネス書などを選択することが多い。毎日読むわけでもないので、断片的に読んでも成立するものが望ましい。

ということで、最近読んだのが「シン・営業力」という本である。

この手のビジネス本は読む前からだいたいの内容は予想がつくのだけれど、実際に読んでみると発見がある(こともある)。なので、あまり期待せず、暇つぶしに読んでいた。

営業というのは、文系の社会人なら、割と一般的な職種である。僕は専業の営業ではなく、企画と営業の中間ぐらいの立ち位置なのだが、多少はやっている。新規事業をやる際は、事業開発と同時に営業もやる必要があるので、それなりには経験がある方だと言えるかもしれない。

しかし、自分がやる場合はともかく、世間一般の「営業職」のイメージとして、手練なタイプというか、ゴリゴリの営業の人はちょっと苦手である。代表は不動産業や証券会社などだろうか。なぜかツーブロックの髪型の人が多いため、内心では「ツーブロックゴリラ」とか「ドンキーコング」などと呼んでいる。しかし、実際にその見た目の人が多いので不思議だなぁと思っている。

そもそも営業ってなぜ必要なのだろうか。特に今の時代、インターネットを開けば自分の欲しいものは何でも検索することができるので、必要なものはインターネットで揃うのではないだろうか。BtoBのビジネスだってそうだ。

つまり営業というのは、インターネットで検索されもしないサービスを押し売りするような存在だといえるのではないだろうか、とわりと最近まで思っていた。

以前、営業に関する情報発信をしているYouTubeの動画で面白いことを言っていた。その人は野村証券で証券会社の営業をしていたゴリゴリの営業マンなのだが、本当にすごい営業というのはどういうものか、というのを語っていた。

本当にすごい営業とは、「断りやすい営業」だと言うのである。ゴリゴリに売り込んでくるのではなく、断りやすい営業だ、と。なんやそれ、と思った。その人も、自分がそうだというわけではなく、野村証券時代にそういうことを言っているトップセールスマンがいたらしい。最初はなんやそれ、きれいごと言うなと反発を持っていたらしいが、その真意がわかると、なるほどなということがあったようだ。

「断れる営業」とはなにかというと、相手にとって利益のあるサービスや商品はちゃんと売り込むけれど、そうでないものはちゃんと取り下げることができる営業ということである。つまり、「信頼できる営業」ということ。

これは世間一般の営業のイメージとちょっと違う。相手が納得していなくても無理矢理承諾して買わせてしまう、それがトップセールスマンという印象をもつ人が多いのではないだろうか。しかし、実際はそうではないらしい。

この本を読んでみると、面白いことが書いてあった。それは本当にすごい営業というのは、こちらから営業をかけるのではなく、「相手が良い話を持ってくる」営業のことだというのである。

いや、どういうことやねんと思うのだけれど、これはつまり普段から相手にとって利益のある提案をして、相手からめちゃくちゃ信頼されていると、ビックプロジェクトが立ち上がったときに、真っ先に自分のところに客側から話を持ってくる、ということらしい。なので、トップセールスはこの状態を作り上げるのだ、ということが書いてあった。

確かに、相手が嫌がってるのに、無理矢理押し込んでいくような営業は短期的には数字を上げることができるかもしれないが、自分が足を使って訪問した相手からしか案件がもらえない。

しかし、いろんな人から信頼されており、相手から仕事がやってくるようになれば、待っていてもどんどん案件が入ってくるので、そりゃトップセールスになるだろう。そういう仕組みなのである。

ちょっとイメージができないという人は、美容師のことを考えてみるといいかもしれない。僕は特定の美容師と仲良くなり、その人に切ってもらうようになったら、滅多なことでは美容師を変えない。同じような人は結構多いのではないだろうか。

よくあるのが、美容師が美容院を辞めてしまっても、その人を追いかけて結構遠方の美容院に通うというやつである。普通に考えたら美容師のテクニックなんてそれほど変わらず、料金もだいたい同じである。しかし、特定の人に切ってもらいたいとは、どういう心理なのだろうか。

よく知ってる美容師というのは自分の好みをよくわかっているし、その人の腕を信頼してるので頼みやすい、安心・信頼できる、ということなのである。究極的に営業が目指すのはこの状態で、相手のことをよく知り、信頼感を得るということに尽きる。この人に頼んでおけば間違いないと相手に思ってもらうのだ。

そうやって考えていくと、営業と言うのは意外と思ったより奥深いものだなぁと思ったのである。別に接待をして相手をよいしょして嫌がるものを売り付けるだけが営業ではない。

突き詰めていくとけっこうクリエイティブだし、面白いなと思ったのである。考えてみれば、どんな仕事でも、「実績」を積まないと任せてもらえないが、それは外部に対しても同じなんだな、と。

サポート費用は、小説 エッセイの資料代に充てます。