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「安くしたらたくさん売れる」は本当か?

最近、在宅勤務を中心にしているのだが、昼食のルーティンが固まってきた。自宅付近は住宅地なので、買うところも食べるところもあまりない。しかし、近くでおいしい食堂がテイクアウトをやっているので、週に2、
3回の頻度で買ってきている。
 
しかし、たまに違うものが食べたくなったり、雨の日で外に出たくなかったりする日もあるので、そういう日はフードデリバリーサービスを使ったりもする。よく使うのはUberイーツと出前館なのだが、最近はほぼ出前館に偏っている。
 
出前館はいまはキャンペーン中らしく、送料無料にしている店舗が結構あって、気軽に頼める価格になっている。稀に送料無料に加えてさらに半額キャンペーンをやっているところもあるのだけれど、そうなると普通にお店に行くよりも安くなってしまうこともあって、注文することへの心理的なハードルはさらに低くなる。

しかし、特別な日ならともかく、普段の食事にかける費用というのは、普通の人はかなりシビアに見るものなので、送料が通常価格の420円ぐらいすると頼む気がなくなってしまう。420円という値段は、ちょっとしたランチ代ぐらいになってしまうので、もはや何にお金を払っているのかわからなくなってしまうのだ。

僕が出前館を使うのは、あくまでも「送料無料であるから」という側面が大きいので、このキャンペーンがなくなってしまったら、おそらく使うことは激減するのでは、と思っている。


 
最近、経済学の本を読んでいて、「安売りするとたくさん売れる」「高くするとあまり売れなくなる」仕組みについて、ちょっと誤解していた部分があったな、と思った。

個人の視点で経済を考える場合、つい「一人単位」でものを考えてしまいがちだけれど、実際は、個人個人の行動が変わるのではなく、条件が変われば「その条件に当てはまる人が増減する」と考えたほうがいい。

つまり、「安くなればものがたくさん売れる」というのは、「これを買おうかな」と個人が思う頻度が高くなるということではなくて、単に「安いと、『その値段で買ってもいい』人が増えるので、結果的に売れる」というだけに過ぎないのだ。

世の中には、ある商品が500円だと買う人、300円なら買う人、逆に1000円でも買う人、という具合に価値基準によって分かれていて、通常は500円で売っている商品ならば、500円以上でも買う人以上の人たちが買っているだけで、300円なら買う人は見向きもしない。

しかし、300円に値下げすると、「300円でも買う人」が買い始めるものの、500円に戻したらまた買わなくなるだけなのでは、ということだ。僕も出前感の送料が無料だから利用しているユーザーにすぎず、出前館側が「そろそろこのサービスも浸透してきたから、無料キャンペーンを撤回しても大丈夫だな」と思ってキャンペーンをやめた場合、その瞬間に使わなくなる予定である。

まあ、もちろん出前館なしでは生きていけない、という人も一定数いるとは思うので、そういう人相手であれば送料を有料にしても大丈夫なのかもしれないが。


 
こういった宅配サービスというのは、都心部で、働いている人の人口のわりに食べる場所が少ない場所にこそ本当に需要があるような気がする。そういう場所はランチのどこに行っても激混みだったりするので、宅配サービスを使ってオフィスで食べられるように、ということだ。
 
まあ、そういう人はたとえ送料が500円でも600円でも払おう、という人なのかもしれないので、やっぱりこの法則には当てはまるような気がするが。

安売りで顧客開拓するのはマーケティングとして有効かもしれないけれど、万能ではないな、ということを思うのである。

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