見出し画像

道具にはこだわらないタイプですが……

一年ちょっと前から趣味でやっている将棋だが、ついにちゃんとした「将棋駒」を購入した。将棋の街として有名な天童市の、「越山」という駒師が制作した「長録書」という書体の彫り駒である。

まあ、これだけだとなんのことかわからないとは思うのだが、安物ではなく、職人が制作したちゃんとした駒をゲットした、ということだけ伝われば幸いである。

将棋というのは非常に裾野が広いボードゲームで、道具についても特に制限がない。極端な話、何を使ってもいい。たとえダンボール製であっても成立する。たとえばコンビニに行けば、おもちゃの棚にマグネット将棋があったりする。

小学生ぐらいでは、駒の動かし方が書いてあるタイプのものもあるし、プラスチックで出来たものを使っているケースもある。将棋は道具によって競技性が成り立たなくなることもないので、当然それらを使ってもなんら問題はない。

僕は将棋をはじめたのが35歳からなので、当然ながら最初からそれなりに財力があった。なので、最初は将棋連盟が推奨する将棋セットを購入した。

一応、これは木の駒で、書体も「巻菱湖まきのりょうこ」という見やすい書体で、非常に気に入っていた。というか、つい先日まで使っていたのがこれである。

最近では、将棋を指すといっても、主戦場はネットだ。将棋ウォーズというアプリを使えば、まったく知らない人とネット対戦ができるので、基本的にはそれで将棋を指している。

しかし、奥さんともときどき指すし、父や叔父などともときどき指す。また、プロの指した将棋を再現する「棋譜並べ」をするときもあるので、将棋盤と駒はあるにこしたことはない。

将棋の駒は、マグネットやプラスチックなどがあると言ったが、木の駒の中にもいろいろな種類がある。上述の将棋セットは、当然ながら大量生産品なので、いちおう木でできてはいるものの、字は印刷である。

しかし、世の中には実際に駒を手作業で制作する「駒師」と呼ばれる人がいて、将棋駒は遊具であるとと同時に、工芸品のような性質ももった存在なのだ。

駒は、特殊な品種の木を使い、職人がひとつひとつ手作業で木を削り、字を掘り、漆を入れていく。安いものでも5万円、高いものだと50万円ぐらいするものもある。いままでずっと欲しかったのだが、さすがにそんなに高い金額は手が出ないので、もっと将棋が強くなってからにしよう、と半ばあきらめていた。

しかし、某ネットフリマアプリを見ていると、わりと手に届く価格のもので、立派な駒がたくさん出ていることに気が付いた。結局、吸い込まれるように、これを買ってしまった次第である。新古品ではあるが、最低でも5分の1以下の価格で手に入れられたと思う。感謝至極である。

僕はあまり「手ざわり」がどうとか、「匂い」がどうとか、そういったことには一切こだわらないタイプの人間なのだが、やはりそれなりに高級なものを手にして、使ってみると、気分が高揚するものだなと思った。

将棋駒は、言ってみれば単なる道具にすぎないのだが、実際にいい駒を手にとって動かしてみると、記憶に定着しやすい。粗末なものを使っていると、粗末な将棋しか指せないのでは、ということを思ったのである。

今回のこの駒は、「面取り」があまりされていないもので、角がすこし尖っているのだが、使い込むうちに馴染んでくるだろう。角が取れる頃には有段者となれるよう、研鑽を積みたい。

サポート費用は、小説 エッセイの資料代に充てます。