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単純接触効果は誤謬なのか?

心理学の世界で、「仲良くなりたい人に対して、会う頻度を上げると親密になれる」というようなことがよく言われる。たとえばビジネス書などでも、営業マンは特に用事がなくても顧客のもとに足繁く通うことで信頼を得られる、というようなことがよく言われるし、恋愛においても、会う頻度を頻繁にすればするほど好感度があがる、と言われる。

しかし、これは本当にそうなのか? という疑問が昔からある。なんだか、自分の体感では納得しにくいところがあるのだ。

確かに、会う頻度が頻繁だと仲が良くなる、というケースはある。中学や高校の頃の同級生は、毎日何をするにも一緒にいるので、仲良くなる人もいる。社会人になって疎遠になってしまうと、急に親密さがなくなってしまう、というのはあるだろう。しかし、これについても、すべてのケースにおいて適用ができるとは思えない。毎日顔を合わせているクラスメイトでも、仲のいい人とそうでない人はいるからだ。

むしろ、最初はよかったのに、時間が経つにつれてだんだん親密さがなくなっていく、というケースもある。単純に「接触回数が多ければ親密になる」のが真だとしたら、離婚するカップルは存在しない、ということになる。付き合っているときは毎日メールを送り合っていたのに、それが限界にきて別れてしまう、ということもある。極端な例はストーカーだろう。

一般的に、長期的な人間関係によって、その人のことが正確にわかってくるものだと思うのだが、違うのだろうか? つまり、会う回数を増やすことによって、より正確に判断できるようになるというか、相性の悪さみたいなものも顕著になっていく、という感じだろうか。

しかしそれなら、単純接触の多さが親密さにつながる、というのが心理学の定説になるわけがない。

いわゆるログインボーナス的なものがある、と考えればいいのだろうか。会う回数が増えれば、それによって好感度がプラスされるが、それを帳消しにするぐらいマイナス要素があるとダメ、ということなのだろうか。

自分の経験では、最初に会ってから短期間のうちに何回か接触しておくと、その後もかなり時間が経っても関係性を維持しやすい、というのはある。さすがに一回会っただけだと印象が薄いので、印象付けをするためだ。

しかしいずれの場合も、波長というか、「この人とはなんだか合いそうだな」というものがないと長続きしない、ということはあるように思う。しかし、ある程度の期間を観察して、本質が見えてくる、ということも当然ある。

人間関係について、そう簡単に割り切れるものはないのかもしれない。だからいろんな人間関係があるし、面白いのかも。

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