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世の中が激変しているのだから、仕事もなくなるだろうし、会社ぐらい潰れるだろう

いまの自分の仕事は、将来でもちゃんと仕事として残っているのだろうか。もはやあまり話題にもならなくなったような気がするのだが、「AIが自分の仕事を奪うのでは」みたいな話は、ここ数年では非常によく見かける話題である。雑誌などで「10年以内になくなる仕事」みたいな職業リストもよく見かける。

その中でトラックドライバーは結構ランクインしているように思うけれど、一応その仕事をやったことがある身としては、簡単にはなくならないような気がしている。

例えば高速道路を走るのは自動運転で対応できるかもしれないが、物理的に「貨物を配送する」行為は、事前に予測がしづらいいろいろなことを考えなければならないので、けっこう難しいのだ。

例えばものをトラックに積み込むときにも一定のルールがあるし、荷下ろしするとき、納品するときにもいろいろなルールがある。物陰から子どもが飛び出してきたり、予想もしないところからフォークリフトが出てきたり。どんなに優秀なAIであれ、現実世界は複雑で予測不可能なので、完全に自動化するのは難しいだろう。

もちろんAmazonみたいに莫大なお金をかけて投資をしたらすべてを完璧にこなせる機械は導入できるかもしれないが、機械は導入時に莫大なコストがかかるわりに汎用性が乏しい。つまり、特定の業務にしか使うことができないのだ。

何かの仕事に特化して設備を導入しても、その仕事がずっとある保証はないので、もしかしたら数年後には不要になってしまうかもしれない。そうなると莫大な投資は無駄となってしまうわけで、二の足を踏む、というわけだ。簡単な話、人間のほうが低コストで汎用性が高いので、人間がやったほうが合理的、という経営判断はありうるのだ。

もし機械が80%の仕事を「できた」としても、残りの20%は人がやり続ける。故障などのリスクや、前述の汎用性、投資金額などを考えると、簡単に80%をすべて機械に置き換えるという経営判断はしにくい。

むしろ、外的要因やノイズの少ないデスクワークのほうがAIに取って変わられそうな雰囲気である。さまざまな生成AIが台頭してきているおかげで、むしろパソコンを使ったデザイナーなどの仕事の方が逆に厳しそうな感じではある。

しかし、それも前述の意見と同じように、人間でなければならない領域というのは必ず存在するのだろう。

そもそも「仕事がなくなる」というのはネガティブな話なのだろうか。機械がすべての仕事をやってくれて、世の中が便利になるので、働かなくて良くなると能天気に考えている人はあまり見かけないように思う。

産業革命以後、人々の生活は便利になり続けている。産業革命以前に戻りたいと思っている人は果たしてどれぐらいいるだろうか。便利な機械ができたことによって仕事を奪われた人々が機械を破壊したラッダイト運動などもあったが、今思えばかなり滑稽な感じがする。

確かに仕事を奪われるかもしれないが、全体を見れば豊かになることは確かなので、プラスの側面の方が多いのではないだろうか。

そもそも何も仕事をしないというのも考えにくい。今やっている仕事が機械に置き換わったとしても、何かしら仕事はあるような気がする。しかし、AIの発達によってきめ細やかにいろんな仕事が機械に置き換わっていくようになると、単純作業などは少なくなるだろう。そういう仕事しかできない人は一体どうするんだろうな、という感じはある。

生活保護を出すので、家でじっとしていてください、となるのだろうか。「働く」という行為は、能力の高い人に向けた嗜好品になるのだろうか。もっとも、生活保護で生きている人を対象にしたビジネスなんかも出てくるだろうから、人類はどうなっても仕事を「発明」し続けるのだろう。

生産のための労働が必要なくなった世界では、人類全員がYouTuberのような仕事をしているのかもしれない。すでにその状態に片足を突っ込んでいる状態だと思う。

「仕事を奪う」状況にもいろいろなシチュエーションがある。まず会社員だったら最初に気になるのは、自分の会社が潰れるかどうか、という部分だろう。

僕は今IT企業に勤めているが、将来的に会社が展開しているサービスごとなくなる可能性は十分にある。IT企業とはそもそもそういうことが十分ありうる世界なので、仮にサービスごとなくなったとしても何か仕事はあると思うのだが、なくなる可能性があるということを前提で考えている。

日本最強の企業のひとつであるトヨタ自動車は潰れるだろうか。もちろんあれだけの規模の会社なので、簡単には潰れそうにない。しかし今ガソリン車からEV車へのシフトが確実に進んでいて、それが加速していけば、これまでトヨタが持っていたノウハウや技術は通用しなくなるわけで、不利な状況にはなるだろう。

豊富な資金力とノウハウが大企業の長所だと思うが、同時に支出も桁違いなわけで、これまでの蓄積が不要な時代がやってきたら、むしろ小回りの利くベンチャーの方が生き延びやすいかもしれない。その過渡期にある今のトヨタの経営は死ぬほど難しい舵取りを強いられているだろう。

まあ、個人的には仕事が奪われようが会社が潰れようが、別に構わない、と思っている。というより、世の中が激変しているのだから、仕事もなくなるだろうし、会社ぐらい潰れるだろうという心づもりでいることが大事なのではないか、と思っている。

会社が潰れたら別の会社に転職すればいいだけだ。いまの仕事がなくなってしまったら、また別の仕事をやればいいだけ。柔軟に思考し、時代の流れに適応していくしかない。シンプルにそう考えるようにしている。

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