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「制約」を突破するためには……

どんな物事にも必ず制約がある。制約なしになんでもやっていい、ということはそうそうない。仕事もそうだ。昨日まで不動産営業だった人が、明日から半導体のエンジニアになることはできない。

いや、なろうと思えばなれないこともないと思うのだが、ハードルは高いし、それなりの動機がないと本人がもたないだろう。少なくとも年単位の時間はかかるのではないかと思う。

会社にも制約がある。なんらかの会社に勤めているのなら、その会社によってやっている事業があり、そこから大きく外れたことはできない。

僕が就職してはじめて勤めた会社は物流企業だった。特に何も考えず、会社が面白そうだったから入社したのだが、入社してから「物流の会社って、物流の事業しかやらないんだ」という当たり前の事実に気が付いた。

いろいろとアイデアをブレストしたりして新規事業を考えたりもするのだが、どうしても物流に関連したものが中心になる。また、一般社員では権限が限られているので、アイデアを出すにしてもたいした決裁権はない。

斬新なことを実行したければ、そういったことを提案してもいい立場に行かなければならない。これは制約である。

転職して、今度はベンチャー企業に行った。ベンチャーは柔軟性が命なので、最初に就職した会社よりは好きに動けるのが面白かった。

しかしお金はあまりないし、人もいないので、あまり大それたことはできない。やろうと思っていたことを大手商社などが先に手がけたりすると、大企業はダイナミックなことができていいな、と思ったものである。



またまた転職して、いまは大企業と呼ばれる会社にいるが、当然ながら大企業にも制約がある。当たり前だけど。どんな会社にもカラーがあり、なかなかそこから外れたことはできないものだ。

トヨタ自動車は日本最強の企業だが、急にSNSサービスをはじめても「なんでやねん」となるし、たぶんヒットはしないだろう。

面白いもので、GAFAのようなレベルの会社でもそれぞれカラーがあり、得意分野から外れたビジネスはなかなか出てこない。たとえばGoogleは世界最強の会社のひとつだが、ビジネスモデルの大半が「広告」で、広告以外のビジネスは成功していない(そもそも規模が大きいので、「成功」の基準が高いということはあるが)。

ビジネスというのは、ありとあらゆる制約のなかで、いかに高いパフォーマンスをあげるかを競うゲームなのかもしれない。

もっと抽象的な概念として考えてみる。

会社はだいたいどんな会社でも
①「企画・営業」
②「製造・エンジニアリング」(またはオペレーティング)
③「総務・経理」
の3つの役割で成り立っていると思う。特定の商品を「営業する」ことそのものがビジネスである営業会社などもあるとは思うが、その場合は「営業するサービス」そのものが②にあたる。小売店などは②の部分が店舗経営になる。

当たり前の話だが、営業がどれだけ優秀でいくら頑張っても、提供できるサービスや商品がショボければ売れない。つまり、営業にとっての制約条件は自社の製品やサービスだったりするわけだ。

逆に、製造・エンジニアリングも、顧客の声を無視して独りよがりなものを作っても的外れとなり、大きな損害を生むことになる。これもある意味では制約だったりする。

キーエンスという会社がある。日本でもっとも社員の給与が高い会社として知られている。この会社は工場向けのセンサーなどの比較的地味な製品を取り扱っているのだが、とにかく営業力がすごい会社として知られている。

営業が足で現場に行きまくり、提案とヒアリングを大量にこなす。そしてそれを製品に反映していく。技術力ももちろんあるのだろうけれど、それ以上に営業がもってくる情報量がすごいので、ちゃんと顧客の要望に沿った製品が出てくる。その量とスピードがすごいので、制約はもちろんあるのだろうけれど、制約を突破しやすい環境にあるのかもしれない。

何事も制約があるので、その制約のなかで頑張るしかない。しかし自分のやるべきことを最大限にやると、その効果で周囲の制約も緩和していくと思う。キーエンスのように、営業がひたすらドライブして制約を最小限にしているように。

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