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鋭利なものほど脆くなる

奥さんと、映画「ロード・オブ・ザ・リング」を見た。

この作品は、最初に封切られたときに映画館で見て以来なので、20年ぶりぐらいになる。昔すぎたので、内容はあんまり覚えていなかった。確か、第一作が出た時はまだ中学生で、母と一緒に映画館に行った記憶がある。今見ても映像技術など、見劣りしないところがさすがだと思ったが、色々と気になる点もあった。
 
ロード・オブ・ザ・リングの本筋はここでは触れないが、とにかく戦闘シーンが多い。それも、魔法のバトルなどではなく、大軍同士がぶつかるような展開がとても多い。

それでひとつ気になったのが、「剣がとにかく切れなさそう」という問題である。

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https://meerschaum.blog.ss-blog.jp/2016-02-09

なんというか、西洋の剣なので、基本的にカーブがなく直線なのだが、とにかく切れ味が悪そうである。もちろん、実際に役者が持っているものは映画の撮影用なので実際にも切れるはずがないのだが、それにしても悪そうだ、と。例えば、日本刀などと比較するとその差は歴然であるように思えた。

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http://www.daisen1300.org/column/column_list/r108/


 
気になったので少し調べてみると、西洋の剣は実際に切れ味はあまり良くないらしい。しかし、それは「あえてそうしている」ところがある、ということだった。

というのも、白兵戦においては相手は甲冑を着ていることが前提のため、鋭利な刃物よりは、むしろゴツく作って鈍器のように扱った方が戦闘に適しているのだとか。言われてみれば、確かにそうかもしれない。

日本においても、日本刀は戦争用には適さず、合戦においてはもっぱら槍が多く使われていたようだ。
 
しかし、やはり見た目においては日本刀は美しい。何より、日本刀は切れ味においては世界でも屈指のものを誇る。

たまたま、NHKを見ていたら、日本刀の研磨に欠かせない天然砥石についてクローズアップしている番組をやっていたのだが、この「研磨する」という工程に、日本刀の切れ味の真髄があるのだろう。

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https://www.nikkei.com/article/DGXMZO47831420W9A720C1AA1P00/

番組を見ていると、砥石で日本刀を研いでいると、その摩擦熱で水が蒸発していくのが見えるほどだった。それだけ研ぐと、刃物として鋭利になる反面、武具としての脆さも内包するわけで、確かに甲冑相手に日本刀は使えないかもしれない。これで金属のものを斬ったら刃こぼれしまくるだろう。


 
日本刀はどちらかというと、工芸品としての価値が大きいのかもしれない。あるいは、合戦場ではなく、居合などに見られるように、非戦闘時に常に携帯し、不測の事態に備える護身用武具と見るべきか。
 
まあそうやって武具について考えるのもなかなか面白かった。「切れなさそうな武器」のほうが合理的な場面もある、ということで。

逆に、「研げば研ぐほど鋭利になり、殺傷能力が上がる一方で、同時に脆くもなる」というのは面白いな、と。

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