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どういう絵が盗作になるのか?

とある有名なイラストレーターが、トレース疑惑で炎上したらしい。あまりにも良く燃えていたので、よく知らない人ではあったが、情報がいろいろ飛び込んできた。

まあ、この手の炎上は非常によくあることなので、今更なトピックではあるのだけれど、このケースの場合、絵柄が全部違うのでもはやオリジナルの要素が少ないことと、商用展開をかなり進めているところがちょっと特徴的かな、と思った。

しかし、普通はこういったものがどんどん出て炎上する前にネットの人たちが見つけ出してきてプチ炎上していくところから入っていくものなので、ここまで大きな存在になるまでスルーされてきた、ということは、確率論的に見てすごいことなのかもしれない。だからこその話題性、というのはあるだろう。
 
知り合いにイラストレーターの人が多いので、この手の問題はよく話題になる。

イラストで生計を立てている友人が、けっこう詳しく、自分の体験談を話してくれたことがあった。曰く、具体的に自分が創作したものをパクられたことはないけれど、自分がよく使っている絵の技法が模倣され、いまではその界隈ではかなり一般的になってしまい、自分のオリジナリティが霞んでしまっていることがどうも納得できないらしい。

仲のいい友人のイラストレーターでさえ、その技法を用いて絵をSNSにあげていたのでショックを受けた、云々。まあ、本人はオマージュのつもりでやったのかもしれないが、一般的にみたらあまり気にならないようなことでも、それで食べている人からしたら死活問題だし、そもそも自分の作品に愛着もあるので、納得もしづらいのだろう。


 
どういうものが法律的にセーフで、どういうものがアウトなのか? については、素人には判断が難しいものの、参考にある動画があった。

イラストレーターと弁護士が対談形式で、これはセーフかアウトか、ということを話している。もちろん、実際に裁判をしないとわからない部分が多いため「可能性が高い・低い」、という視点でしか話していないのだけれど、とても参考になり、面白かった。

ポイントは、個々の著作物における「意匠」の部分を盗用したかどうか、というところに集約されるようだ。ありふれたものであれば問題はないし、そもそも著作物でないものであればこれも問題は起きない。

もちろん線引きは曖昧ではあるものの、わかりやすい説明ではある。「スタイルの模倣」であれば、個々の作品の意匠というわけではないため、容認される可能性が高いようだ。
 
最近の漫画家の制作現場の動画などをみると、写真をトレースして作品に使う人がかなり増えているようだ。特に背景をそのように制作する人が多いらしい。もちろん、自分でデジカメを使って撮影したものを使っているのだが、「トレースする」という行為自体は、たとえば漫画家にとっては非常にありふれたものであることがわかる。
 
冒頭に提示したイラストレーターの場合は、明らかに他人の著作物を加工することによって、自分の作品として発表しているようなので、アウトなんだろうな、と思った。

まず、絵柄が作品によって全然違うのが、特にアウトな点だろう。しかし、一説によればそもそもこの作者は絵を描かず、既存作品の加工によって制作しているというから、もしそれが事実だとしたら、最近のソフトの加工技術ってすごいな……と思ってしまった。


 
しかし、インターネット時代においては、こんな目立つことをしていたら遅かれ早かれ必ず暴かれるので、それを見越してこういった暴挙に及んだ真意はなんだったのか、というのはちょっと気になる。「神イラストレーター」として奉られれば奉られるほど、後戻りできなくなって苦しむと思うのだが。

地雷が眠っている地面の近くで、悠々自適に暮らすようなものだろうか。

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