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歯医者は嫌いだし、いっぱいある

4年ほど、東京都足立区五反野という場所に住んでいた。北千住という街があるのだが、そこから荒川を越えたところにある、マイナーな下町である。よく「五反田」と間違えられるが、あそこほど都会ではない。

あまりにも知名度が低いので、「どこに住んでるの?」と問いかけられた際には、「北千住」と答えたりしていた。まあ、徒歩で行けなくもなかったので、それほどひどい嘘ではない、と思っている。
 
五反野に住んで、驚いたことがある。とにかく歯科医院が多いのだ。「駅前に1・2軒」とかいうレベルではなく、とにかく至るところにある。

僕は駅から徒歩で5分ちょっとのところに住んでいたのだが、そのわずかな距離に5軒ほどの歯科医院があった。ある特定の地点からみると、前後左右に4軒ぐらいが同時に見れるという現象まであった。これには奥さんも最初来たときはびっくりしていた。
 
しかし、五反野は確かに歯科医院が多いのだが、実はそもそも世の中には歯科院が多いのだ、という事実もある。普通の人はあまり意識しないのだが、たいていの駅前には最低1軒の歯科医院があるものだ。僕はそれを確認するために、全く関係ない土地に行ったときに歯科医院を探すのが趣味みたいになっている。

一般的にも、歯科医院の数はコンビニよりも多いと言われる。少なくとも、五反野においては、実測値でコンビニよりも多かった。

ところで僕は最近、歯科医院に通院している。僕はとにかく歯医者が嫌いなので、明らかに虫歯があり、かなり痛くなっても我慢してしまうタイプなのだが、ついに根を上げて診察してもらったところ、放置しすぎ、ということになってしまった。

奥歯や前歯ではなく、その中間ぐらいのところに位置する歯だったので、セラミックでの治療をお勧めされ、想定していたよりもはるかに高額な治療を提案された。

個人的には青天の霹靂というか、なかなかショックで、数週間考えたりもしたのだけれど、結局受けることにした。まだ完治してはいないが、テキパキと治療は進行している。

すでに高額な治療費は支払い済みなのだが、確かに日に日に良くなっていく歯の状態と、支払ってしまった高額の治療費を天秤にかけ、後悔と安堵の折り混ざったような、複雑な気持ちである。悲喜こもごも、というやつだろうか。まあ、自業自得なので、これは仕方がない。
 
歯というのは実にままならない器官だ。一生にわたって使う大事なものなのに、1回しか生え変わらない。できれば年1回ぐらいの頻度で生え変わって欲しい。

毎日欠かさず歯磨きをしているが、どうしても磨き残しというのはあるし、そもそも口内というのは歯にとって非常に過酷な環境であるため、定期的に歯科医に行って掃除してもらうといいらしい。歯を大事にする人は、2~3ヶ月に一度、歯石を取るために通院するらしい。確かに、あの高額な治療費を未然に防げるとなれば、悪くない投資だろう。
 
しかし、気になるのは、世の中にあまりにも歯科医院が多い、という事実である。僕も、できれば数ヶ月おきに通院し、未然に防ぐということをやりたいのだが、これだけ歯科医が乱立している実情をみると、どうも不必要な治療まで提案され、商売のネタにされてしまうのでは、と思えてならない。

それに加え、不必要に歯を削られてしまうのでは、というのが気になるのだ。ちょっと気にしすぎかもしれないが、基本的に歯科医で何をされているのかはよくわからないので、豊富な知識をもつ相手に議論をしても勝ち目はない。


 
どんな病院でもそうだが、「健康」を人質にされると、なんとも言えない気持ちになる。もちろん、悪徳な業者なんてのはごく一部だとは思うのだが、これだけの数の歯医者があると、「儲かって仕方がない業界」なのか、それとも「競争が熾烈すぎるので、高額な治療費をとらないとやってられない」のではないか、と思ってしまうのである。
 
ちょっと穿った見方すぎるのだろうか。でも、当たらずとも遠からず、というような気もする。

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