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悪いやつらはなぜルールを守らないのか?
丸山ゴンザレスというジャーナリストが書いた「世界の危険思想」という本を読んだ。
この人はYouTubeチャンネルを開設していて、社会的にアウトローな人などを中心に対談動画をよくアップロードしている。面白いので、時々動画を見させて頂いている。
本書は「危険思想」という名目ではあるが、いわゆるイデオロギー的な「思想」の内容ではなく、単純に社会的に「悪」とされる人たちが何を考えているか、その思考に迫るという内容の本である。
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「悪の世界に馴染みはあるか?」と聞かれて、「馴染みがある」と即答できる人は、その人自身が悪の世界の住人だろう。普通の市民であれば、悪の世界には接点がないので、どういう世界で、どういう思考回路なのかはわからないのではないだろうか。
ドラマや映画の「悪の世界」はわかりやすいが、さすがにそういったフィクションと現実が違うのはわかる。しかし、どう違うかはわからない。
本書を読むと、シンプルに「悪」とひとくくりにしても、悪の世界には悪の世界なりの論理があるんだな、ということがわかる。著者はジャーナリストとして世界中を取材しており、あらゆる「ヤバい地域」を訪れた経験があるため、知識は豊富である。なんと、「殺し屋」が実在する国で、実際に殺し屋に取材をする、というパートもある。
どちらかというと貧困層というか、食うに事欠いて殺し屋を開業するパターンが多いようだ。まあ、考えてみれば元手はいらないし、参入障壁も特にないので、度胸さえあればできる仕事、ということだろうか。
そもそも殺人を依頼する人がいるということ自体が驚きではあるが、世界は広い。ちなみに、殺しの相場は一人当たり1000万円ほどらしい。
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悪の世界は一般的に取り締まりの対象になるため、ルールを嫌い、ルールから逸脱したい人たちが住んでいると思われがちだ。それは実際にそうなのだが、だからといって彼らがルールを一切守らない集団というわけではない。これはヤクザなどの日本の悪の組織を考えてみても、同じことが言えるだろう。
ヤクザは日常生活においては日本の法律をおおむね守っているし、組織内では非常に厳しい掟がある。違法行為をする際には、味方の「裏切りをするリスク」が非常に高いため、厳しい掟を設定することでリスクを防いでいるのだ。
また他の悪の組織との対立などもあり、縄張り意識が強い。外国のギャングで、自分たちの縄張りの外にはどんなことがあろうとも出ていかないというような極端なものもいるらしい。こうなってくると、むしろ一般人よりもルールが厳しく、生きづらいような気すらしてくる。
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ルールのない世界は存在しない。人が集団でいるとき、必ずその内部にはルールが必要であり、自然発生的に生まれてくるということだろう。つまり、人は必ず何かしらのルールを守っていることになる。性善説や性悪説などの考え方があるが、誰からのルールも一切守らないというタイプの人間は、(頭が狂っていない限り)いないのではないだろうか。
どの社会にも倫理があり、ルールがある。それが一般的な社会と異なっている場合には、「悪」とされるだけだ。「どのルールを守るか」という違いがあるだけだろう。
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悪の世界を気軽に覗ける身近な漫画としては、例えば「闇金ウシジマくん」という漫画がある。僕は最初、この漫画はシンプルにウシジマというアウトローが暴れまわるだけの作品かと思っていた。
しかし、むしろそうではなく、彼は闇金という仕事のプロとして活動している。取り立てとして暴力を振るうこともあるが、それは相手がルールを破ったから制裁として行っているのであり、闇金世界のルールの中でやっている。
いきなり何もしていない一般人に手を出すことはしない。闇金に金を借りに来る人間は、闇金に足を踏み入れ、そのルールに同意している。その上で金を借りているわけだから、そのルールを破れば制裁があるのは当然のことだ。その辺のことがよくわかってくると、この漫画はただ単に悪の世界を描いたものではないということがわかる。
性善説も性悪説もない、というのはひとつの発見だったかもしれない。自分が守るルールが異なる、というだけだろう。
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