見出し画像

「検索」できれば、整頓する必要がない

仕事が変わったので、仕事で使うメールソフトも変わった。今まで、ずっとGmailを使っていたのだが、新しくMicrosoftのOutlookを使い始めたところ、これが使いにくくてしょうがない。

Gmailを使っていたといっても、フリーメールを使っていたという意味ではなくて、契約しているメールサーバーを経由してメールをやりとりするのだが、その受け渡しとしてGmailを使っていたのだ。転職後の新しいメールソフトが使いづらいからといって、元のものに戻すわけにはいかない。なかなか慣れないな、と思いながらも、毎日使っている。
 
メールは仕事の基本といってもいいだろう。どれだけチャットが普及したといっても、仕事の根幹はやはりメールだ。電話ももちろん使うけれど、追加説明をするなど補助的な役割がほとんどで、やっぱりメインはメールになる。
 
いろんな人とメールでやりとりをするので、それをどう分類するかが大事だ。Gmailを使っていたときは、「ラベル機能」というものがあり、かなり使い込んでいた。フィルタを設定すると、特定の人から飛んできたメールにラベルを付与し、仕分けることができたのだ。

一日に何百通もメールが飛び交う職場だったので、そういった工夫をすることは死活問題だった。自分宛に飛んでくるメールはもちろん、上司のメールや、「社外の」メールなど、複数のラベルを付与するように設定していたので、わりと仕事は効率的にこなせていたように思う。


 
Outlookに変わって一番困ったのは、この「ラベル機能」が十分ではない、ということだ。Outlookでは、「フォルダ」にメールを分類する設計らしい。たとえば、「自分宛」のメールはそういう名称のフォルダを作ってそこに分類されるように設定し、その中でさらに分類したければ、子となるフォルダを作る。そういう運用することが推奨されているらしい。
 
しかし、これがなかなか使いにくい。メールが明確にフォルダ分けができればいいのだが、プロジェクトを横断的にやりとりされるメールは、どちらのフォルダにも突っ込みたくない。ある種のメールは、厳密にフォルダに分類するのが難しいのだ。

Gmailを使っていたときは、わりとそのへんはフレキシブルに考えていて、いろんな属性をもつラベルを並行して付与していた。ラベルが増えすぎると、ときどき消したり、合体したりして、整理していた。すべてのメールにラベルをつけるという発想ではなく、「自分がよく参照する必要があるメール」にラベルをつけていた、という感じの運用だったのだ。
 
これは、MicrosoftとGmailの開発会社であるGoogle社の発想の違いなのかな、と思った。Microsoftは、ご存知の通りWindowsのOSを作った会社だが、パソコンのデータというのは基本的にフォルダで管理する。膨大にあるファイルは、みんななんらかのフォルダの中に格納されており、なんらかの基準をもって「分類」されている。
 
一方でGoogleは、検索エンジンを主体とした会社だ。Gmailというのは、「ラベル」を付与するが、分類はしない。イメージでいうと、特定のラベルを、メールの海から「検索」するイメージだ。メールはGmailのサーバーの中に時系列に置かれていて、特定のラベルという「フラグ」を頼りに、一時的にかき集める、という感じだろうか。

つまり、「分類・保管」ではなく、「検索」が主体にくる思想なのだ。

物事というのは、必ずしもなんらかの種類に分類できるものではない。そのへんを歩いている男性にしても、一見すると「サラリーマン」に見えるが、家では「父親」なのだろうし、実家に帰れば「息子」になるのかもしれない。趣味がバンドだったら、「バンドマン」というラベルもあるだろう。「分類」なんてしなくても、「検索」さえできれば、整頓なんてする必要がないじゃないか、というのがGoogleの考え方は、現実世界に即しているように感じる。
 
僕もすっかりGoogle流の考え方になってしまっていたのだろう。「検索できれば整頓の必要はない」、というのは、わりと真理を突いているのかもしれない。

サポート費用は、小説 エッセイの資料代に充てます。