もしも、ポケモンがなかったら……
よく言われることではあるが、仮にスティーブ・ジョブズがiPhoneを作らなかったとしても、数年のうちに他の誰かがiPhoneを作っただろう、という話がある。現に、ソフトバンクの孫正義がジョブズのもとを訪れた際に、「こういう物を作ってくれ」とiPhoneのコンセプトに似たものを提案したことがあるそうだ。
もっとも、これはどの製品や学問に対しても言えて、アインシュタインがいなくても相対性理論は生まれただろうとか、いろいろな話がある。
そこでひとつ疑問なのが、「もしもあの時点でポケモンを開発していなかったら、ポケモンに匹敵するようなものは本当に出てきたのだろうか?」ということだ。
社会人になってからすっかりゲームには疎くなってしまったが、学生時代、特に小中高生の頃はよくゲームをやっていた。
特に、87年生まれの僕の世代は、「ポケモン直撃」世代だ。僕は小学生のうち半分の時期をアメリカで過ごしたのだが、日本に帰れば誰もがポケモンをやっていた。僕もゲームボーイポケットとポケモン緑を買ってもらい、たまに日本人の子どもと会うタイミングで対戦や交換を楽しんでいた。
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そんな社会現象にもなったポケモンについて書かれた本を読んだ。最近の本ではなく、2000年に出版された本だ。
この本はポケモンの内容について書かれた本ではなく、「いかにしてポケモンは生まれたのか?」という制作背景を中心にまとめた本だ。非常に詳細に誕生秘話が書かれているので、当時を小学生として生きていた者としてはとても面白く読めた。
ポケモンが登場した時代、ゲームボーイというハードは終了寸前だった、というのは有名な話だ。NINTENDO64という次世代ハードがあり、PlayStationなどもで始めた頃だったから、いくら持ち運びができるからといっても、モノクロ画面のドット絵がピコピコ音がなるだけのゲームボーイには、もうほとんど誰も見向きはしていなかった。
ポケモンに対してもそれは例外ではなく、発売前の期待値はとても低かったようだ。当時は出荷数100万超えのソフトがゴロゴロいる中で、ポケモンの初出荷数は赤緑のバージョンを合わせても23万本ちょっと。ゲーム業界からはほぼ「無視」されていたような状態だったらしい。
でも蓋を開けてみれば、子どもたちに爆当たりし、初代赤緑の販売本数は現在では800万本を超えているらしい。シリーズ累計売上だと、現時点で3億8000万本以上と、ひとつの産業みたいな、よくわからない数字になっている。
この本を読んではじめて知ったのだけれど、当時、弁当箱みたいなサイズのゲームボーイの他、「ゲームボーイポケット」というものがあったが、あれの「ポケット」はポケモンに由来するらしい。
確かに、通常のゲームボーイと比較すると小さいものの、ポケットに入れるにはやや厳しいサイズだったので、不思議に思っていた。でも、ポケモンというメガヒット商品があったおかげで、ゲームボーイにスポットがあたり、その後のゲームボーイアドバンス、そしてスイッチへと繋がっていった……と。
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「もしも」の世界で正確な予測はできないけれど、あのとき、あのタイミングでポケモンが出来てなければ、ゲームボーイはそのまま終了していき、アドバンスが開発されることもなく、任天堂もいまのような立ち位置の会社ではなかったかもしれない。
当時、いろんなゲームメーカーがあったけれど、いまでは企業合併したり、買収されたりで、会社として残っていないところも多い。
「交換する」「対戦する」というアイデアは、素朴なものではあるけれど、創始者の田尻聡がこだわり抜いたからこそ、ここまでに育ったのだろう。もし彼がいなかったとしたら、どういうゲームが代わりに出てきていただろうか?
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