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効率と面白さ、どっちをとるか?

昔、ニコニコ動画などでゲーム実況動画をよく見ていたのだが、そういう動画を見ていると、やたらと「効率」を煽るコメントをつける人が一定数いた。

ゲーム実況をやっている人たちは、必ずしもそのゲームの上級者というわけではなく、初見でゲームをプレイする様を流すことも多いので、当然ながら経験者からみれば非常に非効率なプレイをする人も多い。

ゲームというのは「楽しむ」のが一義なので、効率よくプレイすることは必ずしも求められない。なので、効率ばかりを追求する視聴者は、「効率チュウ」などと呼ばれ、敬遠される。
 
ゲームではなく、人生においても、将来性やキャリアパスで「効率」を求める人は一定数いる。最近はそうでもないだろうが、「人生をより効率よく生きるためには、高い学歴をとることが大事」みたいなことを言う親もいることだろう。

しかし、人生もまたゲームと同じく、「楽しむ」のがやはり一義だと思うので、「効率はよいが、つまらない人生」と「効率は悪いが、面白い人生」のどちらがいいかと問われれば、後者を選ぶ人は多いのではないだろうか。

事実として、どれほど裕福な人生を送ったとしても、最後は何も持たずに死んでいくのだから、楽しむに越したことはない、とも言える。
 
とはいえ、「効率の悪い生き方」をしていると、かなりの確率で厳しい人生を送ることになるので、「楽しい人生」とは程遠いものになってしまうかもしれない。効率のみを追い求めても幸せにはなれないが、あまりにも効率をおろそかにしてしまうと、やたらと厳しく、つらい人生になる可能性がある。要はバランスで、何について「楽しみに重きを置く」か、「効率に重きを置く」かを見極めるのが大事、ということだろう。
 
夢を追っている人を例に出すとわかりやすいかもしれない。夢を追っている、という状態はとても効率が悪い状態なので、どこかで帳尻を合わせなくてはならない。たとえば、夢を追う代わりにものすごく稼ぎのいい仕事をバイトでやる、などだ。


 
「有隣堂しか知らない世界」というYouTubeチャンネルに、「このミステリーがすごい大賞」を受賞した新人作家の方が出ていたのだが、その方が語る戦略がなかなか興味深かった。

なんでも、いきなり作家になれるとは思っていなかったので、まず司法試験を受けて弁護士の資格をとったのだという。普通の人はそんなノリで弁護士資格は取れないが、まあ取れてしまう人だったのだろう。

絶妙なのが「弁護士」という「士業」であるところだな、と思う。普通の会社員だったら、たとえば作家業が順調なので1・2年会社員を辞めます、といったことはできない(やろうと思えばできないことはないが、キャリアに傷がつく)。

でも士業だったら、何年か中断しても資格をもっている以上は復帰できる、というわけだ。なので、弁護士資格をとろうと思ったのはいい選択なのだと思う。
 
また、賞をとったのは弁護士を主人公にした小説なのだが、もともとはファンタジー小説を書いていたとのことで、本当に書きたいのはそちらなのかもしれない。しかし、とりあえずデビューするためには自分が詳しい分野でやるのが有利と判断したのか、弁護士が主人公、と。これもまた、いい戦略だなと思う。

無事に人気作家の座に上り詰めたら、自分の本当に描きたかったものを「人気作家の最新作」として出版することができるだろう。そういえば、無類のゲーム好きで知られるミステリの大御所・宮部みゆきも、ファンタジー小説を出していたような。


 
効率を重視してはいるものの、それが自分のやりたいことへとつながる選択なので、人間性に薄っぺらさを感じない。「効率」と「やりたいこと」を天秤にかけて、いい戦略を練れる人なのだと思う。こういう人には学ぶところが多い。
 
自分のやりたいことは「効率」なのか「やりたいこと」なのか、をしっかり見極めるのがいいのでは、と思う。

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