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お金は使うためにある

別に狙っていたわけではないのだが、たまたま、父の日に両親を旅行に連れていった。

僕の実家は三重県にあるのだが、同県の伊勢志摩というエリアにホテルを取り、一泊二日ではあるが、温泉付きの旅行をプレゼントした。東京からの帰省費用などを含めると10万円強かかったが、なかなか良い機会だったと思っている。

ちょうど、自分の仕事が部署異動の直前で、わりと暇な時期だったというのも要素としてあったのだが、タイミングとしてもバッチリだった。

「10万円の価値」について考えてみる。中学・高校ぐらいの頃は、月のこづかいが2000円で、正月のお年玉も合わせて数万円程度だったので、10万円なんて金額は天文学的な数字で、持ったことのないお金だった。

大学に入ってバイトをはじめたら多少は稼げるようになったが、それでも月に6万円程度、たくさんシフトを入れてやっと10万円に到達するような感じだった。
 
10万円あれば、結構いろんなことができる。ニンテンドースイッチだったら3台ぐらい買えるのだろうか。いま奥さんと住んでいる家の家賃が10万円ぐらいなので、一ヶ月ぶんの家賃だ、という想像もできる。


 
僕は基本的にあまり物欲がないので、貯金を意識せずともお金は自然と少しずつ貯まっていく。しかし、それでは計画性があまりにもないということで、ここ数年はエクセルで家計簿をつけている。

といってもやり方はかなりシンプルで、毎日、キャッシュ残高と支出明細をエクセルに入力しているだけだ。いちいち使うたびに金額を控えるというやり方だとつけ忘れが発生するので、その方法は採用していない。

シンプルに、毎日、「いくら自分が持っているのか」を計算すれば、自然と一日でどれぐらいのお金を使ったかがわかる。現金は使用用途の履歴が残らないので、あまり現金を使わない生活をしている。クレカよりもPayPayなどのほうが即座に使用履歴が反映されるため(ラグがない)、計算のしやすさを要因として使用頻度が増えた(クレカだと、明細に反映されるまでに数日かかるケースもある)。
 
今回の旅行は、三重県松坂市というところにある本居宣長の記念館に行ったり、伊勢神宮を参拝したりした。旅行なので当然だが、かなりの距離を歩いたため、わりと体力を消耗した。

うちの両親は70歳を越えているため、たとえば10年後に今回のような旅行ができるかと言われると、かなり厳しいのではないかと思う(というか、無理だろう)。そう考えると、今回の旅行はこのタイミングじゃないとできなかったのでは、という気がしてくる。

極端な話、1年後、2年後でも、両親は徐々に衰えていくので、全く同じ内容はこなせないかもしれない。ということは、今回のこの10万円の支出というのは、とても10万円という枠に収まらないほどの価値がある、とも言える。10年後、20年後には、いくら金を積んでも手に入らない経験だからである。

「お金は、最終的には使うためにある」というのは最近よく思うことだ。もちろん、生きていくためには金が必要なので、最低限の貯蓄はしなければならないが、お金は「貯めるために貯める」のではなく、最終的には「使うために」貯めているのである。経験を買うにはお金が必要だが、お金があったからといって経験が買えるとは限らない。

むしろそうやって、気持ちよく価値のあるものにお金が使えるように、普段から節制し、余裕を持っておくことが必要だな、と思った。 

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ファイナルファンタジーというゲームに、エリクサーという、体力を全快させるアイテムがある。これはお店などで買うことができず、敵がドロップしたり宝箱に入ったりしているのを見つけてくるしか入手方法がないのだが、希少なアイテムなので「ここぞ」というときにパッと使うのか、それとも使わずにクリアしてしまうのか、というので結構分かれる。
 
ものの価値はタイミングや状況によって大きく変わる。ただ単に「お金を持っているから」と欲しくもないものに大金を払ったり、「お金がないから」と必要なものを買わなかったり、ということがないようにしたい。

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