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無能の鷹は……

「無能の鷹」という漫画が面白い。

ネットで作者のインタビュー記事を見つけたので、面白そうだなと思って買ってみたのだけれど、けっこう面白くて、一気に読んでしまった(といっても、出てるのはまだ1巻だけのようだが……)。
 
「能ある鷹は爪を隠す」という言葉がある。本当に能力のある人間は、自分の能力をことさらに誇示することなく、泰然としている、という意味だ。

この漫画の主人公は、スラッとしたスタイルでパリッとスーツを着こなし、発声がやたらとよく、「デキる人オーラ」を半端なく出しているが実は無能な「鷹野」と、分析能力があり頭もよく優秀なのだが、いまひとつキャラが弱く顧客から不安がられる「鶸(ひわ)野」の二人組の漫画だ。

「高い能力を隠しているように見せかけて、実は本当は無能」という強烈なキャラクターがいる構成の漫画になっている。

漫画としてのスタイルは定番の型があって、鷹野と鶸野で営業に行くのだが、顧客は鷹野があまりにも「デキる人オーラ」を出しているため、本当は同期入社なのだが鷹野を上司だと思い込む。

で、鷹野が無知・無能ゆえの突拍子もない発言をすると、顧客はすべてを勝手にいい方向に解釈してくれる。それでも話が微妙に噛み合わなくなってくると、鶸野が必死にフォローする、みたいな構図。

結局、なんだかんだ最終的には商談はうまくまとまり、顧客は鷹野に大物オーラを感じ取って終わる……というオチ。
 
鷹野の「無能ぶり」はフィクションらしく常軌を逸しており、エクセルが使えないのはもちろん、簡単な漢字すら読めないので(「燃費」を「もえひ」と読んだりする)、社内ではニートと化しており、ホッチキス留めなどの業務しか任されていない。

そんな鷹野がなぜこの会社に入ったかというと、「丸の内のオフィス街をパリッとした服でカツカツ歩いて受付を社員証でピッとしたかっただけ」とのこと。

さらに、なぜこの会社にい続けるのかというと、「私がこの会社を必要としているから。会社に必要とされてるかは考えないようにしてる」と。

あくまでギャグ漫画なのだが、けっこうやっている仕事の内容もリアルで、打ち合わせなんかも現実的にありそうな感じなので、読んでるとちょっと脳がバグった感じになるのが面白い。

あと、鷹野のこうしたキャラは特殊ではあるけれど、現実にこれをちょっと薄めた感じの人はいそうだな、と思ったり(あるいは、自分自身が鷹野なんじゃないかと思ったりもする)。
 
しかし、「仕事ができそう」というだけの人も、それはそれでひとつの能力であり、ハッタリをかますのも大事なんだな、ということを再認識する。

もちろん、その逆も有効に使えれば「あり」なのだけれど。
 
「デキない」お仕事漫画も、たまには面白いです。

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