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場所を変える

いまは仕事はテレワークが主体になっており、週に一度も出社しないことも多い。出社は月に2、3日ぐらいだろうか。商談など、どうしても必要のあるときにだけ、会社に行っている。
 
テレワークも慣れるとオフィスにいるときと変わらず仕事ができるな、と思う。テレワークとはいっても一日中黙って仕事をしているわけではなくて、会議がたくさん入っている。日によっては、一日に6つも7つもオンライン会議が入っていたりするので、他人と話している量としては会社にいるときとさほど変わらないかもしれない。
 
在宅勤務で問題なのは、油断すると家から全く出なくなる、ということだろう。もちろん、家にとどまることで感染拡大をおさえるための方策なのだから家にいることが絶対的に正しいのだけれど、ずっと家にいると気分が晴れず、生産性があがらないことがある。

というより、気分が切り替えにくいのが問題だ。夕方、仕事が終わってから近所を30分ほどランニングするようにしているが、これぐらいでも結構違う。もちろん、健康管理という意味合いでやっているのだけれど。


 
最近、夕方ぐらいになったら、近所にあるコワークスペースとカフェの中間のような場所に行って、そこで仕事をすることにしている。

テレワークは自宅でやるべきとされているので厳密に言うとダメなのだけれど、こっちのほうが生産性があがるので、行くのが習慣になった。不思議なもので、場所を移すと脳は「新しい環境にきた」と認識するのか、仕事はじめと同じような精神状態になり、仕事がはかどる。

そこでしばらく仕事をして、また自宅で続きをやると、自宅でも捗ることがある。なんて単純なのだろうか。みんながそうなるのかは知らないが、なかなか不思議な仕組みだな、と思う。
 
人間の記憶は、「場所」がベースとなっている、という話を聞いたことがある。もともと人類は狩猟や採集を中心とした生活を送っており、記憶情報として「場所の情報」というのは死活的に重要だったのだろう。

それが原因かはわからないが、記憶は場所とともにあるような気がしている。時間的にはさほど離れていなくても、場所を移すことで、脳がリセットされるように感じるのだ。だから、ずっと同じ場所にいるよりも気持ちが切り替わり、効率があがるような気がするのである。

場所を移さず記憶が連続していると、情報がかなり圧縮されて記憶に残るため、数日ぶんの記憶がすっぽり抜け落ちていたりする。

たとえば、連休でずっと家にいると時間感覚はだんだんなくなってくるが、旅行に行ったりすると場所で時間を覚えているので、タイムラインをハッキリ再現できるのと同じだ。密度の濃い人生を送るには、とにかく「移動」をするのがポイントなのかな、ということを感じる。
 
なかなか移動を制限されることの多い生活だけれど、同じ場所に居続けるのは、記憶が圧縮されてしまってなんだかもったいなく感じる。

人に会うために繁華街に出る、というのはまた違うかもしれないけれど、こんな時節でも人知れず場所を変えて色々やるのはいいかもしれない。

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